第3話
部屋に案内されると男女向かい合って座った。
「お前ら結局女の子もう1人連れて来なかったのな‥」
たけよしが4回目の愚痴を言った。
「まあまあ。メンバー的にまったくもってただのいつもの飲み会だが、ちとせとあけみのお祝いを兼ねてるらしいし、良しとしよう。」
「しっかし、あけみさん、あの夕顔だったんすね!かっけぇ!大丈夫っすよ、オレ、口堅いから誰にもこのことはいわねぇっす☆」
本当か?かよこがちらっと見る。
「りゅうまはこう見えてほんとそうだからな。」
たけよしがうなずく。
「オレ達の親友だから、間違いない!」
ちとせがりゅうまと仲良く肩を組む。そこにたけよしも加わる。みのり先輩が後ろからヤロー共にガシッと抱きつく。はるかがクールに言い放った。
「はいはい。全員彼女いなくて、いっつもベッタベタだもんね。」
「だからどうして女の子連れて来ないんだよう‥」
たけよしが5回目の愚痴をつぶやいた。
飲み物がきた。
「たけよし、なんか言え。」
「はーい‥えー、みなさん、本日は佐倉ファミリープラス新たな家族の集まりに来てくださり、ありがとうございます!!ちとせ、あけみ、おめでとうー!!かんぱーい!!」
「それだけかい!!」
皆挨拶に不満を言いつつ乾杯した。
「早速だけど、りゅうま君ははるか達のことあんま知らんやろ?女子、自己紹介して。りゅうま君もみんなに自己紹介。所属サークル名と趣味ぐらいお願い。」
「男子も自己紹介しなさいよ。」
「なんでや。」
「私、あんた達のこと知らないもん。」
「腐れ縁がよくゆーわ!」
「セイセイセイ、兄弟達よ、始めるぞ。まずはるかから。」
みのり先輩が幼馴染めのと漫才を制止する。
「九条春花、こないだハタチになりました。法学研究会所属です。ちとせと同サー。趣味は写真と料理、よろしく。ちなみにたけよしとは小、中、高、大と一緒。実はあんた私のストーカーなの?」
「そういうことにしといてやるよ。哀れな彼氏いない歴‥」
イッテー!!たけよしが悲鳴をあげる。大方、はるかから足でもつねられたのだろう。
「お次はおかよ。」
「武田カヨコ、サークルは入ってません。趣味は‥」
「それ!!C言語やろ!!」
いきなりりゅうま君が大声を出す。指差したかよこの胸元には、
「printf("♡")」
の文字が。
「そう、そう、そう!良く分かったねえ。分かる人がいたとは‥!」
「でもって、プログラミングが趣味!?」
「ちょっとね。まだ勉強中。」
C言語とは、プログラミング言語の一種である。
みのり先輩は微笑みながら続きを促す。
「おかよ、まだ言い足りないことは?」
「もういいかな。りゅうま君がなんで知ってるかは興味あるけど。」
「フリートークの時に存分に話しなさい。そして、おかよが我々の世界に最近興味を持ってることがわかってお兄ちゃんは嬉しいよ。」
「我々??」
「我とりゅうま君だよ。後で語ろうぞ☆」
みのり先輩はニコニコしながらあけみに次を促した。
「灰原朱美、15歳☆‥嘘嘘。ゲームと思わせて美術部。ゲームサークルは強すぎて目立つから‥。影日向に生きてます。趣味はゲームとでも言っとこうかしら。」
「表の顔は普通の大学生、裏の顔は全世界が熱狂するゲーム界のカリスマ姫、漫画やね〜!!」
「カリスマ性と美女をここまで隠せるなんてほんと才能だと思う。」
男子の部に入った。
「不動武能(たけよし)、剣道部でーす。よろしこ。‥紹介する意味。」
「おい、お前、黙れよ?」
「‥はい。」
「はいはい。早見千歳!!法学研究会所属!!以上!!」
「超絶イケメン、モデル体型、英語ペラペラ、法学部主席、ゲームチャンピオン、ここにも漫画な人が‥」
「ちなみにはるかは次席。」
しばし盛り上がった。
「俺の番が来たか‥。佐倉ファミリー、長男、佐倉ミノリ。世界を飛び回る天才ハッカー。大学院自然工学科、情報工学専攻。よくキラキラネームって呼ばれてまっす。」
「先輩の、キラキラネームなんすか?」
「個人の感性による。カタカナにしたんは、外国人にも分かりやすいようにだって。」
シメは‥男子がみんな熱視線をおくる。ここにきて誰も面白いことが言えなかったので、かなりの期待値でりゅうま君を見る。
「えっ、おれっすか!?オレ、田中龍舞、折り紙研究会所属。」
みんな、どっと笑った。
「折り紙研究会!?なにそれ!?」
「えっ、そのまんま。俺結構キヨーなんすよ。」
「さっきの流れでプログラミングじゃないのな。」
結局フリートークはほとんどがりゅうまの折り紙研究の話になった。料理はめちゃくちゃ美味しかったが、とにかくりゅうまの折り紙への情熱がすごいし、写メで見せてくれた作品群が色んな意味ですごすぎて、ツッコミどころ満載で、(折り紙でシャンパンタワーを見事に完成させ、いざコールしながら本物のシャンパンを注ぐとお約束の展開が‥等。)あらゆるすべてが霞んでしまった。よくわからないが、みのり先輩の弟子らしいが、すごい逸材を連れてきてくれたものだとみなが感心した。
みんなほどよく酔っ払ってきたところで、お開き。みんな真面目、今日も何もない‥とぼんやりと思っていたところで、予想だにしない展開が訪れる。
「おかよさん、連絡先教えて??」
帰りの列の最終尾を歩いてたかよこに、こっそりとりゅうまが耳打ちした。
なんですと!?一瞬、びっくりしたが、あっさりと、
「はい。」
と連絡先を交換した。
「じゃあ、女子、気をつけろよー!!はるか運転で死ぬなよー!」
「余計なお世話じゃ!たけよしがアホすぎてみんな帰れるかな!?」
憎まれ口を叩き合う2人はハンドルキーパー。もちろんシラフ。
あははっと笑いながらちとせがあけみに、
「あけみ、良かったよ、みんなで飲めて。あとしばらくは一緒に飲めないかもしれないから。」
「それってどういう意味‥」
「帰るよー!」
はるかに促されて車に乗り込む。ザワザワザワっとあけみは胸が疼く。かよこは、
「登録ありがとうー!」
とメッセージを送る。
じゃあねと手を振った帰り道、かよこは一睡もせず、ずっと携帯を触っていた。
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