第2話
目が覚めた。
ちょうどはるかが駐車するところだった。
林道を抜けていつのまにか田園地帯になっている。
「このシチュエーションで寝るとは。やはりかよこ。」
「人一倍はしゃいでたのに、大人しくなったと思ったらいびきかいて寝てるんだもん。マイペースすぎ。」
爆笑するはるかと妖精さん。
そう、妖精さん。
「しっかし、なんでイベント装備で来たの、あけみ!気合いはいりすぎじゃない〜?」
「わかってるじゃん。やつがくるから戦闘服できたの。」
妖精さんはあくまで冷静だ。妖精さんこと、灰原朱実は、身長145センチ、小顔で華奢、でも巨乳ないかにも男性受けしそうな美女。今日はメガネ無し、メイクあり、黒髪巻き髮。極めつけに着物を着ている。
「そっか、恋する乙女は違うね〜」
「あいつがいればどこでも私達の戦場(バトルフィールド)だから。」
かっ‥こい〜かよこが目がハートになったところで、目の前に大きな木の門が現れた。
「と〜ちゃ〜く。泊まりでも良かったかな?男性人みんなヘタレだし。」
「あかん、あかん、あかん。ただでさえ、山奥の宿の離れで貸し切り合コンといういかがわしいシチュエーションなのに、泊まりはいかがなものか?私達はしょ‥」
はるかがあけみの口を押さえた。
「言うなよ〜?うっかりちとせ君に言うなよ?もう言ってる可能性はあるけど。」
かよこがびくっとした。
「あけみさん、あけみさん?お友達の秘密とか言ってないでしょうね?だーいすきなちとせ君に、創作のネタなんかでうっかり言ってないでしょうね??」
「ノープロブレムよ。」
あけみがニヤッと笑った。
「おそらく、ちとせも‥」
「呼んだ?」
声のする方を見ると、背の高い俳優さんがいた。
「夕顔、ひさしゅう。」
「GENJI‥」
俳優さんではなく、20歳の大学生天才ゲーマー、GENJI改め早見千歳。日本が誇る世界的人気ゲーム、咲月夜〜平安戦絵巻〜の今年の世界ナンバーワンプレイヤーを獲得した、まごうことなき本人である。
ゲームの大会の様子はテレビで放送され、メディアで大々的に取り上げられた。そして、
「大会ぶり?あんた普段何してんの?」
「ゲーム。あとは、和歌で女をたぶらかしてるかな。」
僅差でナンバーツーの座につき、チャンピオンの座を譲ってしまった、悲劇のヒロイン夕顔、とはあけみ本人のことである。
そう、じつは2人はそういう関係。
この2人が参加するから、今回の合コンは山奥の、人がいない貸し切りの宿にしたのだ。普通の街の居酒屋でやれば大変な騒ぎになるだろう。
「あー。みなさん、お久しぶりです。」
「お久しぶり!ほんと何やってたの?大学にも来ずに。あけみなんか普通に大会の次の日も学校来たけど、いまだに誰にも気づかれないんだから‥」
「日頃はさらしを巻いてるからな。」
「黙っとれって。」
そんなこんなやってるうちにたけよしとみのり先輩と知らない男の子がやってきた。
「おまたせー!おっ、あけみ、気合い入ってんな!
下ネタはNGよ。こちらみんなご存知みのり先輩。と、ニューフェイス、りゅうま君。」
「おっす。合コンっていうよりただのいつもの集まりな気がするが‥」
「りゅうま君、自己紹介して。」
たけよしにうながされ進み出たのは、少し格好がロックよりな田中龍舞君、20歳の同級生。なんと同じ法学部。イケメン。
「ちはーす!田中龍舞です!龍に舞うって書いてりゅうまです!ホストではありません!見かけチャラいけど純情派、ですっ!!」
いや、充分にチャラい。あまり見かけない顔だと思ったら、ほとんど授業に出てないらしい。やっぱり、チャラい。チャラいけど何か良い人感が半端なく出ている。話しやすそうだ。
「さあ、ラスボスの館へ!!」
「確実、ヤリサーだと思われるな。」
「黙っとれって。」
いざ、レッツプレイ!玄関を開けた。
これが、意外な運命の始まりだった。
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