第26話
「あまり、したくない話をしようか。」
「なんだ?急に。」
「今、こうして問題に当たってることについて、全てが2019年に書かれた内容と一致すること、知ってる?」
「一致?」
「2019年に、ある小説投稿サイトに投稿された小説に、今こうして話していることや、やっていることが記録のように書かれている、ってこと。」
「…未来のお前が書いた、わけじゃないのか?長の過去が物語化した小説が投稿されていたように。それらはお前が投稿したものだろう?」
「こちとらは、ただの登場人物に過ぎない。作者じゃないの。こちとらが書いた、という設定で書かれた小説『忍処』の本当の作者が、2019年に今こうして話してることも全て、書いて投稿してる。」
「作者じゃない?同一人物じゃなかったのか!?」
「こちとらは作者の分身のようなもの。作者は予言者のように、過去に残してる。いや、寧ろこちとらがそれを台本にして、やってるかのように。未来のこちとらが、その事を教えてくれた。」
「ということは、その年に戻って作者に会うことは?」
「できない。こちとらにはできないように設定されてる。不都合なことはできないように。」
「2019年…令和、か。」
「平成2002年は、夜影と初めて人間のように生活を始めた年だったな。9月12日だった。それから異国との戦争の香りが見えて、潜伏することになった。2020年は、散っていた忍隊の集結が完了し、十勇士も潜伏の準備をしていた期間。」
「長、その投稿された内容は知ってるのか?」
「わかんない。才造、2020年に虎太が潜伏を始めたけど、月は?」
「……確か…、8月辺り…だったはず。」
「それに何かが関係してるのか?」
「今年まで、未だに隠れ里が発見されてない。虎太の方も、我が忍隊の方も。規模的には当然こちとらの方が大きい。そして、こちとらは虎太が潜伏していた所にさっき行ってきた。」
「行ったのか!?」
「処理済みだったからすぐに帰ってきた。虎太らしいわ。で、虎太も未だにこっちの隠れ里を見つけていない。そこで思い付いたのは、隠れ里に移動すること。」
「俺たちが、か?」
「重要なものとか半分だけ移動させておく方がいい。そろそろこの拠点も危うい。次に襲撃にあえば、どうなるかもわかんない。」
「…確かにそうだな…。」
「海底にあるし、真上に新たに拠点を作ってもいいと思う。海上拠点の真下、海底に本拠点があるっていう風にしようと思う。ってか、したい。」
「そんな時間、あるのか?」
「手段としては過去に作っておく。そして隠しておく。過去のこちとらには不可能であっても、現在のこちとらには可能だかんね。」
「その言い方…過去の夜影には知られることなく完成するんだな?」
「完成するかどうかは兎も角として、間違いなく気付かれずにできる。こちとらの記憶には、未来から現れたこちとらが何かしらを作っているなんて、ないもん。」
「隠せるものか?」
「こちとらは、妖だからねぇ?」
「妖術か。」
「長い年月も、一瞬さ。」
「頼んだぞ。」
「こちとらだけが、その一瞬を生きてられるなんて、皮肉なもんだよね。」
「……。」
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