第17話
「分身で探せたりはしないのか?」
「しているところだ。分身を日本中に回して、向かっている。さっきの夜影の分身の場所もそうだ。」
「勘はどうした?」
「冗談だ。どう考えても無謀だろ。」
「旦那は嫁の行方を予想できるんだろう。」
「その嫁が旦那を超越してるんだ。寧ろ手加減されている状況でやっとだぞ?行方を予想するのは感情的な問題だけだ。」
「感情的、か。」
「今回は痴話喧嘩でもないからな。予想した場所は夜影も予想されそうな場所を予想して避けるだろう。」
「予想に予想するのか。面倒だな。なら予想に予想したのを予想するとどうなる?」
「そもそも予想できるような場所には居なくなるんじゃないか?夜影の方が上手だからな。というか、その埒のあかなそうな遊びはなんだ。」
「なかなか難易度が高そうだ。」
「難易度最高だな。着いたぞ。この地下倉庫だな。」
「本体がいそうにない場所だな。」
「そういう場所に寝てる時もある。」
「寝てるのか。」
「不休、断食の疲労がある。あの時寝ていたのは空腹感と疲労を誤魔化す為の睡眠…。」
「人間の働く限界は三日だが、忍も同じか?」
「訓練はしているが、基本は同じはずだ。三日連続任務に出た次の日は非番になるのがありがちだが夜影だけは違ったな。」
「ぶっ倒れるぞ。」
「何度かぶっ倒れた。仕事中毒者でもあるからな。休むのが苦手らしい。」
「ん?長を休ませず追い詰めれば自然と止まるんじゃないか?」
「『追い詰められた猫は、虎よりも凶暴だ。』、とでも言わせたいのか?」
「猫なのか?」
「猫又だ。」
「で、どうだ。居るか?」
「お前が呼べば否が応でも姿を表す羽目になるだろうな。」
「夜影!」
「…ほらな。」
「寝ようとした瞬間にご訪問とは、お酷いお方様だこと…。」
「本物の長か?」
「二発目で当たりを引けたのは運がいい。夜影、察してはいるだろうが、」
「こちとらを止める、だとかいうやつね。却下。」
「即答だな。夜影が実現しようとしてることを、諦めてくれ。ワシら忍が、戦に出る時代は終わった。」
「確かに、ただの人様さえ戦場に出るような時代じゃない。」
「ただの?どういう意味だ。」
「クローン人間が兵士となり、食料もクローンで量産化されたものばかり。兵器も量産化し、人様が操縦する必要は無くなり完全に自動的戦争が始まってる。AIが兵器のみならずクローン兵士を管理する。そんな中に管理の効かない予測不可能な生命体が一匹迷い込んでいたとしたら?」
「何を言っている?」
「クローンでは無い、忍が一匹。量産化された命や機械を破壊し、戦争を混乱に陥れる。何処にも属さないその生命体はどう動くかシュミレーションが不可能、行動を予測できない為に人工知能が優秀であっても忍を排除することは叶わず、それに腹を立てた人間様はそれに勝るモノを生み出そうとし戦争は大規模化を進め地球規模ではなく宇宙規模にまで拡大する予定。繰り返される戦争の合間に見える平和を一般人は長く続くことを望む。そして何かしらの努力をする。それは今までとまったく同じように、大した影響力を一般の世界だけで及ぼしながら戦争には及ばない、止まらない。減速するどころかそれを鬱陶しく思う。人間様は争いをやめられない。うわ回ろうと進化をし続け互いに巨大化していく。そして、結末は人類滅亡。」
「話が、突飛過ぎないか。」
「確かに結末は省いたから違和感が凄いけどね。」
「その推測が、現実になるかどうかはわからん。」
「なる。未来、人類滅亡の危機が迫ると戦争は比較的大人しくなった。その危機から逃れる為に人間様は昔話を宛にする。」
「『ノアの方舟』だ。」
「伝説野郎…ッ!」
「人間様は逃す人間様を選ぶことにした。金では生き延びることはできない。生存確率の多い者、何かしらの能力値が高い者などが選ばれた。その方舟はいくつか作られた。人間様は生存に成功する。そして人間様は技術を駆使して更に強い個体を生み出そうとした。それが獣人。クローンを使って実験を繰り返した結果、獣人が誕生した。けれど、獣人も人間様も争うことを忘れていなかった。」
「まるで、本当に起こったことのように語るんだな。」
「こちとらは未来、過去、現在を行き来する術を持っている、って言ったら可笑しかないでしょ?」
「本気で言っているのか?」
「クローンの寿命は基本的、短い。けれど少し手を加えるだけで人間様よりも長生きが可能になる。未来の話に過ぎないけれど、こちとらはそれを全て知っている。だから、尚更この計画をやめる気は無い。」
「それとどう関係がある?」
「あんたらが今目の前にしている忍は、未来から来た忍であって、あんたらの知る忍じゃない。」
「…未来の夜影……。」
「こちとらからしたら、過去の才造に会えて面白いんだけどね。過去の話に首突っ込んで悪いけど、過去のこちとらの計画を止めないで。」
「何故だ。」
「都合が悪いから、かな。未来の事情だよ。さて、そろそろお昼寝しようかね。」
「教えろ。過去のお前は、今何処にいる?」
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