第11話

「初めてだな。」

「あぁ、才造?十勇士二番手。痛っ!」

「我慢しろ。抉りこまれたな…。」

「不覚。」

「もうこうはならなさそうだな。」

「なんない。暫くは。」

「何故そう思う?」

「あんた様を主にしたから。」

「何か意味はあるのか?」

「あるも何も、夜影は主がいてこそだからな。いるのといないのとではまったく違う。久しぶりにワシも楽しめそうだ。」

「影、報告だ。……主…か?」

「コイツは?」

「十勇士三番手、頼也。十、八、五番手以外は皆任務でいなかったし、会うのは初めてだろうね。」

「任務?」

「ちょいと、奴さんを探りに行かせててさ。頃合い的には皆戻ってくる。」

「影、体を機械化し忍に近い身体能力を持つ新手が出た。」

「サイボーグのことか?」

「知っているのか?」

「一人、心当たりがある。知人だ。だが、お前が見た奴とは限らない。」

「一致してくれるなら早い。確認したいね。」

「才造の方はどうだったんだ?」

「伝説野郎を辿ったが、やはり足跡はなかった。」

「伝説の忍のことは、詳しいんだろう?教えてくれ。」

「虎太は、こちとらの義兄でね。無口だけど、好意的な奴さん。」

「その好意的ってのはなんだ?」

「仕事以外だったら笑い合ってお喋りできるくらいなんだってこと。」

「今、そうじゃないってことは、」

「わかんないさ。下手に近付けないだけで、実のところもう仕事は済んでる可能性だってある。」

「………。それさえわかれば楽なんだが。」

「主に仕える気は無いようだから、何か考えがあってのことだろうけど。」

「話を少し戻させて貰うが、機械化された人間に伝説の忍が絡んでいるということがわかった。」

「なんだと?どういうことだ。」

「死んだ人間を蘇生させ、死ぬことを許さない機械化…本人の望みは無かっただろう、そうさせた科学者と伝説の忍が関わっている。」

「……。」

「わかるかい?あんた様と一緒だよ。虎太は、何かを生み出そうとしてる。あんたの知人じゃなさそうだけどね。」

「機械化された奴の特徴は?」

「赤い光源が顔の中心に一つ。機械忍と言ってもいい。声は機械の音声というよりは、人の声だったが。」

「もしかしてさ…あんた…ご挨拶はやっちゃった系?」

「まさか透明になるとは思わなかったからな。しかも、俺は目立つ。潜入は苦手だ。」

「敵対視されてんじゃないのそれ。」

「攻撃はお互いしていない。少々会話をした。『会いたい奴がいるが、此処から離れることができない。もし、俺の事を知っている奴がいたら、俺は望まない形で生きていると伝えてくれ。』と言伝を預かった。」

「何処にいた?」

「行くつもり?やめときな。」

「確かめるべきだ。もし、アイツなら、」

「まだ報告は終わっていない。機械忍は、今後戦争に利用されるだろうと言っていた。それと、科学者が主を造った科学者と酷似している。子か、本人かわからないが、目的は同じなのかもしれない。」

「戦争に使う人型兵器を集めているということか。長を使おうとしたのも、恐らく同じ組織…。」

「俺を殺させ武雷を蘇らせようとしたのも、俺が思い通りに行かなかったからか。」

「こちとらが、あんた様を連れて逃げてなきゃ、どうなってたかね。ま、それは兎も角、虎太がそれと関わってんだったら虎太が戦争の兵器を欲してるってこった。」

「こうなると、主がいないのは表向きだと見るのが自然だな。」

「頼也、あんたは機械忍と意思疎通可能になってな。機会がありゃそっから脱出させて匿ってやりな。」

「了解。」

「才造、引き続き虎太の背中で足跡探しをしてて。」

「了解。」

「長、こんなとこにいたのか。」

「十勇士か?」

「そう。十勇士四番手、冬獅郎。どうだった?」

「兵器の種類も増えてきてる。ただ、面白くない兵器があった。長の予想通り、だった。」

「予想?」

「死んだ人間を元に造られる兵器。優秀な兵士を機械化させたりする。機械化と言っても、人型のモノとそうでないモノにわけられるけど。予想してたのは、歴戦の兵士達の経験記憶などを取り出した一人だけじゃなく多くの兵士分を凝縮した兵器。」

「まだ試験段階だ。実際に使えるかはこれかららしいが、これが成功だった場合は、笑えない。」

「まぁ、忍の記憶を使われるわけじゃないからまだ良い方だけどね。」

「それが成功すれば、狙われるんじゃないか?」

「死なないから量産できるだろうし、そうなりゃ本当に笑えない。ってことで、妨害よろしく。」

「妨害っつったってなぁ…、ほぼ不可能に近いぞ。あの巨体…記憶を引き抜けばいけそうだが、それに辿り着ける気がしねぇ。」

「記憶を引き抜く…か。魂込めてくれてんなら余裕なのにね。これだから人間様は。」

「おい、魂を引き抜くだとか、そういう技術の方が高難易度だぞ。長しかできないからな?」

「その兵器、破壊すればいいのか?」

「主、破壊して脳ミソとなる記憶管理から引き抜くまでしないとあれは止まらない。完全自立型兵器だからな。……正直言っていいか?」

「なんだ?」

「長なら余裕。」

「あっはは、こちとらが?…成程…、嫌だなぁ…。」

「長、行ってくれないか?」

「……主の命令なら行くしかないね…。」

「主、長が帰還したら褒めてやってくれ。こう見えて最近は精神的疲労で弱ってるからな。」

「そのせいで揺らいだんじゃないのか?」

「多分、そうだと思う。主の存在が大きいんだ。」

「んじゃ、さっさと片付けて来るから、大人しゅうしててよね。あんた様に此処を動かれると困る。」

「困る?」

「そう、困る。機械忍に会いに行こうだとか突っ走られたら追っかけたって間に合わないさ。」

「会うと何かまずいのか?」

「会うだけで済むと思う?虎太の行方も目的もわかんない。あんた様が太刀打ちできる相手じゃない。あんた様を死なせるわけにゃいかないんだ。」

「長…、俺はお前が抱えている武雷なんかじゃない。俺をそう見るのは止めろ。」

「あんた様は武雷の面影さ。」

「長…ッ!」

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