第9話

 主…か。

「何か、覚悟を持った目をしていた。まるで…銃口を向けるのを血迷う…そんな事が起こる前兆だ。」

 どういう意味だ?

「主のいない長は、ただ主だった者が遺した命令にすがって今まで生きてきた。」

 確かにな。

 もういない、滅んだ武家に心が依存してしまっているんだ。

 長の忍がそれに従えば、当然忍隊皆が従ってしまう。

「その命令に従っていたのは、主への忠義。もういない者への忠義だ。」

 あぁ。

 だが、それとその前兆は何か関係があるのか?

「死んだ者への忠義が、揺らいでいるのかもしれない。」

 揺らぐ……?

「そんな気がするだけだ。まだ、わからない。ただ、長の目は本気だ。誰かを主として定めていないと、銃を持つ手が震えるんだろう。」

 俺にはわからない話だな。

 それに、長が従ったとして何故忍隊…長の部下も従うのかもわからない。

 まさか、長のように強い忠義があるだとか、そういうもんなのか?

「いや、部下の方はそういう風に感じられないが…。」

 忍のことは忍だ。

 本人に聞いてみろ。

 主になったなら、いっそ拒絶してやるな。

 なっておけ。

「俺は…。」

 新しい任務だ。

 忍のことを調べろ。

 余すことなく、な。

「………。」

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