第6話
「十勇士五番手に会った。」
十勇士五番手?
小助ね。
目がとてもよくて、迷彩でカモフラージュしてもきっとすぐに気付くわ。
たとえ遠くにいても、速く移動していても本物かそうでないかを見分けられるらしいわ。
いくら貴方のカモフラージュ率が高くてもね。
「そいつが見分けられないものはあるのか?」
さぁ……、記録にはそんなこと書かれてなかったけど。
「それと、長に会った。」
夜影に!?
で、話は!?
「落ち着け。忍隊が、いや長が狙っているのは、戦争を止めることだ。核兵器を奪ったのは、戦争を止めさせる為だけで、核には用がなかったらしい。」
だから、破壊したってこと?
「そういうことだ。」
それは確かか?
「あぁ。それに、俺を攻撃しない理由もわかった。」
やはり、攻撃されていないのか。
で、何故だ?
「俺がホムンクルスだからだ。」
…ッ!
何故それを?
何処で聞いた?
「何故、隠していた。俺がホムンクルスだと、何故教えてくれなかった?長から、俺を受け取ったんじゃないのか?」
忍から聞いたんだな。
あの、忍に。
「あぁ。話してくれたさ。」
あの時、あれが忍だとは思わなかった。
夜中にドアを叩いて、なんだと思って開けてやると、黒い影が立っていた。
よく見ると人のような、暗くてわからなかったが。
それが小さなお前を差し出して頭を下げるんだ。
思わず受け取ってしまった。
するとそれはその場で消えてしまった。
ただ、それだけだ。
最初はただの子供だと思っていた。
だが、それは違った。
気付いたんだ。
お前がただの子供じゃないことも、忍がとある研究所を破壊したことと、その研究所でホムンクルスを造っていたことも。
研究所が破壊されたとみられる時間と、影が連れてきた時間が一致した。
推測でしかなかったが、そうか…忍が言ったのなら正しいんだろう。
お前は、親に捨てられた子供じゃなく、忍に拾われたホムンクルスだ。
「どのタイミングでその影が忍だと気付いた?」
忍が研究所を壊したと聞いてな。
壊した直後その忍がお前を連れてきたんだ。
「それは違う。」
どいうことだ?
「研究所を破壊した忍と、俺を拾った忍は違う。忍はその時二人いたんだ。」
二人?
「俺を拾った忍が長で、研究所を破壊した忍が伝説の忍だ。」
聞いたんだな?
「そうだ。」
そうか…そうか…そうだったのか。
「長が、俺と手を組みたいと言ってきた。俺の中には長にとって大切なモノが受け継がれている。それを守りたがっている。」
大切なモノ?
「長が過去に仕えていた武雷家の主の欠片だ。長は主に死に際最後の命令をうけたらしい。」
最後の命令?
「長に、生きろと。武雷の証として生きろと言ったんだそうだ。」
忍隊の長はその命令に従っているというのか?
武雷が滅んでもう、何百年も何千年も経っているのに、か?
「そうだ。だから、俺を死なせるわけにはいかないらしい。」
なら、手を組んだ方がいい。
協力出来るなら、そうした方がいい。
忍隊は敵じゃないなら、伝説の忍が敵だと言えるなら。
長の目的は?
「自分に矛を向けさせてそいつを全滅させると言っていた。既に行動に移っていて可笑しくない。」
なんだと?
「俺達じゃない。核兵器を奪われて怒っている奴らだ。手荒だが、そうやって戦争を止めたいんだろう。」
なら、それは放っておいても構わん。
核兵器を利用するつもりなら許されないが、それは関係無いからな。
だが、可能なのか?
「長曰く、人が相手なら本気にならなくても全滅させられるそうだ。」
流石、日ノ本一の戦忍だ。
「手を組む、と長に返事をすればいいんだな?」
あぁ。
そうしてくれ。
夜影のこと、教えておくね。
転生する異能力を持つ忍隊の長で、忍隊の中で一番強いの。
死ぬのだとしても、本気にならないらしいわ。
それにしても、何年経っても主の命令に従って生きているとは…忠義に熱い忍なんだな。
「日ノ本一の肩書きの由来の一つらしい。」
それも長が?
「そうだ。」
まったく、そんな忍だとわかっていて、主も必死だな。
命令で縛り付けることになってしまっている。
「長は、それを苦にも思っていないだろうな。」
そう見えたか?
「あぁ。武雷に…主に依存しているようだ。目に惚れたんだ、特殊な好みだ。」
目に?
武雷にはそんな変わった目が?
「俺の目もそうらしい。しっかり受け継いでいるようだが、どうだ?」
どうだ、と言われてもな。
わからん。
長にしかわからない程度の違いだろう。
見慣れた目だ。
「そうか…なら、長に聞いてみるとするか。」
そうしてくれ。
長と手を組めば、何かと便利になるかもしれん。
「そうだといいな。」
――あーあーあああー――
何の声だ?
何か聞こえるぞ?
「わからん。機械の声だな。」
――殺戮起動――
――らーらーらー――
殺戮?
「歌っているな。上空から聞こえるぞ。」
新たな兵器を導入したのか?
巻き込まれるなよ。
身を隠せ。
――ミサイル発射――
――らーるーらーあー――
「なんなんだ、あれは。デカいな。」
そこで何が起こっているか、確認できそうか?
「待ってくれ。………ッ!!長!!」
長?
おい、さっき長は全滅させると言っていたな?
何故そんな近くで?
――ダメージ、ダメージが――
――あーあー――
――機能無力化――
「長が機械に飛び乗って、破壊している…ようだ…。」
驚いたな。
飛行しているのだろう?
「あぁ。こうも高いのに、いったい、どうやって飛び乗ったのか……。」
――停止、停止――
――ERROR――
――ERROR発生――
爆発音が聞こえたが、大丈夫か?
「あぁ、問題無い。長も、爆発に巻き込まれなかったようだ。」
急いで長に話を聞くんだ!
忍は去るのが恐ろしく速い。
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