第22話 馴れ初め

時刻は午前零時過ぎ…

わたしの目の前には非日常的な光景が広がっていた

ベットの上で眠る血だらけの死体と、言葉を話す黒猫のミサ。

こんな状態でもわたしは冷静さを取り戻していた。

元おばあちゃんの黒猫ミサに、悟とわたしが幸せに生活していた頃とこうなった経緯を話していたらこんな時間になってしまった。

本当なら義父を殺害したあとすぐに行動するはずだったのに…

…もう間に合わないかな。



…わたし達が死んでからもあなたと悟は一緒に暮らしてたんだね

夏菜はずっと悟を愛し続け息子の面倒を見てくれた


「うん」


ありがとね。…正直ほっとしたよ。

悟もあなたに殺されたんじゃないかと疑っていたの。

でもあなたがとても楽しそうに昔話をするから嘘じゃないってわかったわ。だからこの話は信用してあげる


「…わたしが悟を殺す?冗談でしょおばあちゃん。だって、おばあちゃんは知ってるよね?わたしが中学生の時から抱かれていたのを」


はっきりと言う子だねあなたは、確かにそうね。

…しかも、わたしに見つかったときが二人の初めてだったってことでもなさそうだったものね


「当たり。…でもいつからかは教えてあげないよ。おばあちゃんもきっと悟の事を偏見するだろうから。でね、じつはわたしもその時からもう悟に一生を捧げるつもりでいたんだよ」


ー…あっそうなのかい…いったいいつからなの?

ー…夏菜ごめんね

ー今は息子に不信感や軽蔑しかないわ

…殺意すらわたしの感情にでてるのだけど

ー今更だけどあなたがとっても不憫で可哀想…

ーあなたがこうなったのも悟のせいかも


あれ?わたし何かおかしなこと言ったかしら…

話しを聞いていたミサおばあちゃんの表情が化け猫みたいに恐いんだけど


「あのー、おばあちゃん?どうかしたの?」


…いいや、なんでもないよ。


まるで小さな子供がお母さんを心配する夏菜の姿はさっきまでの娘とは別人格だった。


ーわたしがこの子に殺されたのは仕方なかったのかも、でも…


夏菜、あなたがわたしの息子を愛してくれていたのはよくわかったわ

二人を咎めたわたしに殺意があったのもわかる。

それならどうして自分の母親と弟まで殺したの?


「…だってあの人こそ本当の魔女だもの」


魔女って?


「あの人はわたしの一番大切なものを奪おうとした」


奪う?…あなた達の関係を母親は知っていたの?


「ううん、知らないよ。気づいてなかった…

だけど、わたしはあの人の秘密を知っていたの」


秘密?何か隠しごとがあったの?奪う事と何か関係があるの?


まるで、何かに取り憑かれたように疑問を投げかけるおばあちゃん…

でも、これだけはおばあちゃん絶対知らない方がいいよ。ショックを受けるよ…。

言っちゃうと色々とバレちゃうのよね話しの中で…察しのいいおばあちゃんならすぐにきづいちゃうよきっと。

…ショックでさっき見たいな顔しないでね。おばあちゃん


「えっとね…母親は不倫をしていたの。わたしが偶然にその事を知ってしまったのが小5の夏だったかな。それでね子供だったわたしはその事を悟に教えたの」




…夏休みも終わり新学期の初日

わたしは子供ながら悩んでいた。パパに言うべきか言わないべきなのか

一週間前に見たママがわたしの知らない人と車の中で抱き合ってキスをしていた事を。

わたしがママを目撃したのは偶然だった。

車でも30分もかかるこの町。普段ならこんな遠いところに小学生のわたしは来れない。

ただその日、友達の家で遊んでいたわたしに、友達のお母さんが買い物に連れて行ってくれると言ったので一緒に来ていた。

そこのショッピングセンターの駐車場でわたしは見つけてしまったの。

幸いにも友達の親子には気づかれてはいなかったけど。

その日、ママはわたしが家に帰ってから一時間後に何食わぬ顔で帰ってきた。


そして、わたしは迎えに来たパパにその事を伝えた…


そうか…夏菜が教えてくれてパパは嬉しいよ


パパはわたしの頭を撫で撫でしてくれた。

でもいつものような笑顔はパパにはなかった。

やっぱり言わないほうがよかったのかな。わたしだってもう小5だママの行動がどういうことなのかわかってる。


「パパはいつまでもわたしの優しいパパだよね。どこかにいかないよね?わたしを置いて行かないよね?」

わたしは急に不安になった。


大丈夫だよ。パパは夏菜の側にずっといるから


振り向いたパパの横顔からはうっすらと涙が出ていた。

その時の涙がわたしに心配させて心苦しくなったのか、ママに裏切られたショックの涙なのかはわからなかった。

そのあとわたしはパパの仕事を手伝いたいと深い森の栽培場所に車で連れて行ってもらった。

そこでわたしはもう一度さっきの事を聞いてみた。


「パパ、夏菜を見捨てないでくれる?」


うん


「絶対に絶対?約束できる?」


絶対約束するよ。夏菜


「うんわかった。それじゃあ、わたしが今からママの代わりをしてあげる。ママがパパにしてあげてたことは今度から全部わたしがしてあげる」


…えっ?


パパがそれ以上喋る事はなかった。

なぜなら、あの日ママがしていた事をわたしがパパにしてあげていたから。




夏菜はそっとミサを見た。静かにしているのが逆に怖い…


「それからは、ずるずるとなしくずし的に

…ほらわたしってあの頃から小学生っぽく見えなかったしね…ね、ね。…おばあちゃん。…もう済んだことだし。…その本人、えっとわたしがいいって言ったんだから法律的にもセーフだから」



…ア・ウ・トだよ完全に法律でも!この色ボケ娘が!それにロリコン息子も

生きてたら完全にしばいてたところだよ


「えーん、もうそれ以上怒らないでおばあちゃんお願い」


もういいわ。あなた達がどれだけ変態かわかっただけでも充分


「変態ってじゃないもん。愛情だもん」


わかった、愛情ね。愛情。

…それに話しが逸れちゃってるでしょ完全に

結局どうして母親を殺したの?


「…それは、わたしの母親があなたと悟を殺そうとしていたからです」













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