第19話 憎悪
ーお母さん、あなたは悪魔よ
なに言ってるの夏菜?
こんな田舎でキノコ栽培して生活なんて、
もう私には無理!限界なのよ。
それにあのばばあの相手もね
ーだからってなんでそんな恐ろしいことが言えるの!
でも、お母さんはもう決めちゃったから
それに、夏菜だってこれからはずっと遊んで暮らせるのよ
ー絶対おかしいよお母さん。わたしはそんなこと望んでない
もう!つべこべ言わないの!
あんたは私の娘なんだから!
そして頬を平手打ちされた…。
いい分かった夏菜。だから私の言う通りにするのよ
……
あの会話から数時間後、母は死んだ
それからは悟との生活が永遠に続くものだと思ってた。
ベッドで余韻に浸っていたわたしはあの日を思い出していた…
ーお母さん、やっぱりわたしはあなたの子だわ…悪魔のね
男はすぐにわたしを抱きたがる
こいつも一緒だった。
ーお父様、わたし1人で寂しいんです。
今日は泊まっていただけません?
お酒に酔っていたこいつは迷いもなく返事した。
こいつがわたしを息子の嫁ではなく女として見ていたのは結婚したときから分かっていた
だから、冥土の土産にいい思いをさせてやった…。
ベッドからでたわたしはすぐにガウンを羽織る。
エアコンは作動していて真冬でも寒くはないが裸をこいつにこれ以上は見られたくなかった。
わたしはまだベッドで寝ている人物に話しかける。
「…お父様。どうですかご気分は?」
……はぁ、はぁ
…苦しい、手足が痺れる
「…うーんだいぶ毒のまわりが早いですね
まったく歳の割にあれだけ頑張るからそうなるんですよお父様。自業自得です」
夏菜君、助けてくれ
「安心してください…毒の量が少ないので今すぐ死ぬことはないですよ。病院に行ってすぐに解毒したら助かっちゃいますもの」
だったら…この手錠を外してくれ
…頼む
「嫌ですね、それにわざと調整して減らしてあるんです毒を。
…お父様にじっくりと苦しんでもらう為に」
…
「心配しなくてもいいですよ。最後はその苦しみからわたしが解放してあげますから」
さっきから…どういうことなんだ?
やっぱり…夏菜、君が息子と孫を…なぜだ?
「さあ、なんででしょうね?…知りたいですか?お父様」
わたしはベッドにあがると拘束され寝たままに近づきお父様の体にゆっくりと指を這わしてから横に座った。
オレンジ色の部屋の暗さでもお父様が苦しんでいるのがよくわかる。
「あら?さっきまであんなに元気だったのに、しおれちゃってますよ?」
…そんなことはどうでもいい早く教えろ
「教えろですって?…お父様、自分のおかれた立場わかってます?」
…
「お利口ですね。少しでも長く生きていたいなら静かにすることです」
…
「じゃあお話しましょうか。
お父様、今から10年以上前に家族がトリカブトと毒キノコを誤飲し3人が死亡する事故覚えてますか?…」
…ああ、そんな事件があったな
「警察は事故と判断して、残された父親と娘は仲良く一緒に暮らしていました」
…それがどうした?
「…うるさい黙って聞け」
…
わたしが急変して怖気ついたのか、毒のせいで話せないのかわからないが急に静かになった。
「その父親と娘は愛しあっていました。血の繋がらない娘は結婚を考え、父親も大学卒業後に結婚すると約束してくれました。…しかし、それは叶いませんでした」
その後もわたしはしばらく昔話しを続け、
話しの最後にこう締めくくった。
「お義父さんを殺した犯人の復讐をわたしは誓いました」
……その復讐相手が…わたしか?
「そうです」
そんな…くだらん理由で
…息子や孫を?
「…くだらない?なにがです?」
そうだ…男女の関係なんてな…
お義父さんも、君をただ性欲のはけ口に使ってだだけだ美人な君ならなおさらな!
「………はぁ?
… なぁ、お前なんて今言った?」
聞こえんかったか?
…だったらもう一度言ってやろう
男は体と顔さえ良ければ女なら誰だっていいんだよ!
女だってそうだろ?金や権力さえ持っていればどんな男でも喜んで腰を振る。
そこに恋愛なんてものはあるわけないだろ!
だから、くだらないって言ったんだよ!
「そんなことはないわ!」
そんな理由でお前は俺の息子と、自分の子供を…殺した
「ええ」
なぜ?わたしを最初に殺さなかった?
「それは、お前にもわたしと同じ苦しみを味あわせてやりたかったのよ」
この人殺しが!
お前のお義父さんもよかったんじゃないか
こんな娘と早く離れることが出来て
きっと天国で喜んでるだろうよ
そこからは完全に理性が無くなった…
ーこんな腐った考え…聞きたくない
ーもっと、わたしの苦しみをこいつに味あわせたかったのに…
ーでも、もう駄目だ。これ以上はわたしが傷つくだけ
ー大好きだった悟との思い出を踏みにじられるのは許せない…限界だ
わたしはベッドの下に隠してあった包丁を取り出し、おもいっきりお父様の左胸に突き刺さし引き抜いた…
うぎゃー
お父様がただならぬ悲鳴をあげる。
胸からは血が溢れだし、シーツを真っ赤に染めていく。わたしの手や腕にも返り血が飛び散っていた。
ー汚い…
ーでもまだ息はあるわよね
…そうそう簡単に死んでもらったら困るから、あんたには
「おいまだ死ぬなもっと苦しめよ。
…わたしのお義父さんは優しかった。
…本当に。
わたしが困ったときはいつも助けてくれた。それにわたしのことを1番に考えてくれた」
…はぁ、はぁ
「だから、お前や息子のようなやつと一緒にするな。吐き気がする」
……はぁ……はぁ
ーもう反論する余裕はないか…
ちょうどその時、
廊下では猫が激しく鳴き寝室のドアを引っ掻いていた。
ニャー、ニャー
ーなな!なな!
ニャー
ー何があったんだい!
ニャ!
開けなさい!
そこには異変を感じ心配して寝室に駆けつけた黒猫のミサがいた。
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