第14話 剥がれ始める魔女の仮面

楽しくなかった新婚旅行から帰ってきたわたしは、あなたにすぐ連絡した。

最初に電話したとき、

あなたは電話にでなかった。

もう一度掛け直したがやっぱりでなかった。

逃げられたかとも思ったが、すぐに否定した。

あなたがそんな事できる人間ではないし、

もしもの場合としてあなたの実家を調べ脅しのネタはつくって見せておいた。

次の日、

仕事で朝早く出かけた旦那を見届けた後すぐに連絡した。

そして、ようやくあなたがでた。


「ちょっと、あんたさぁ。電話にさっさとでなさいよ」

あの頃のわたしは、まだあなたの事を使える下僕としてしか扱ってなかった。


……………


「ねぇ、聞こえてるんでしょ。なんか言いなさいよ、おい!」


………夏菜…て


「はぁ?なにいってんの。全然聞こえないんだけど、しかも誰が呼び捨てにしていいって言ったの!」


…たすけて、からだあつい。ボーっとする


「はぁ?…あんた、今どこに住んでるのよ!…いいわ、わたしがGPSで位置しらべるから。アパートのドア開けたら、そこで座って携帯の音量最大にして待ってなさい」


GPSの示した場所は世田谷区のアパート

ーなによ、わたしの住んでるすぐ近くにいるじゃない。

まだ使える駒を失うわけにはいかなかった

わたしはすぐにあなたのところへ向かった。


GPSを頼りに向かった先には木造の古いアパートがあった。

わたしは携帯電話を鳴らしてあなたを探し、玄関の向こうから呼び出し音が聞こえるドアにたどり着いた。


「着いたわよ。早くドアの鍵開けなさいよ」


……

あなたからの反応はなかった。


「おい!ねぇ、聞こえてるの!」


大声を出すわたしに隣の住人が隣から顔を出す


「何じろじろ見てんだよ、見せもんじゃねーよ!」

美人のわたしに罵声を浴び、ぽっちゃりとした男が慌ててドアを閉めた。

ー類は類を呼ぶか…


「はやく…開けろ!」


…ガチャ

ドアが開くと同時にあなたがわたしにもたれかかってきた。


「おい!誰がわたしにもたれろって…

あんたもの凄い体が熱いじゃない…」


…はい。…昨日は電話に…ごめんなさい


それからのあなたは意識が朦朧としていて

正直何を言っているのかもわからなかった

なにより、この部屋がもの凄くむし暑い

慌ててわたしはエアコンをつけたが動かない

窓を開けたが熱風が入ってくるだけ

しかも、部屋全体が臭い。あなたの色々な匂いなのか、かびの匂いなのか分からないくらい…

足がもつれるあなたをわたしの車に乗せた…。




ここは?


「あら、ようやく正気に戻った?もう昼過ぎよ」


どこですか?


「八王子市内のラブホよ」


冷房でかなり寒い部屋の中、ベットの上で目覚めたあなたはやっぱりあまり覚えてなさそうだった。


なぜラブホテルに?そしてどうして僕は裸なんですか?


「…色々大変だったのよ、説明するのが面倒なくらい」


あれから、わたしは病院にあなたを連れて行くか救急車を呼ぶか迷った

でも、処置中に待たされるのも嫌だし、あなたが保険に入っているかも不安だった。

ドラックストアで体を冷すシート、氷、スポーツドリンクを買って駐車場で簡単な処置をしてあげた。

氷と冷却シートで熱を下げ、ドリンクで水分と塩分をわたしの口うつしで補給させた。


あなたの容態を確認しながら運転するのは疲れるからどこかに休憩できるところと探していて、

思いついたのが土地勘もある八王子市のラブホだった。


「それから、あなたの服を全部脱がして体を冷やしつつ拭いてあげてたの

…体の匂いも相当キツかったしね。

それに、歯をしっかりと磨きなさい。あなたが口をあまり開かなかったから

わたし、舌をあなたに絡ませながら水分補給させたのよ」


…すいません


「それにしても、あなたの携帯にGPS検索機能つけておいて正解だったわ。じゃなきゃあなた死んでたわよ熱中症で」


…すいません


「でも、これで半年間あなたがどんな生活していたかわかったわ。

…だからこれからは、わたしに1か月に一回以上は必ず連絡すること。わたしも連絡するから。いい?」


…はい


「…あなたのおかげで挨拶が遅くなったけど、あらためてお久しぶり」


そうですね。夏菜さん


「…クシュン」


大丈夫ですか?


「あら心配してくれるんだ?あなたのせいでこの部屋かなり寒いからね。

履いてたズボンも水に濡れたから、今は下着一枚だけだし。

このあとわたしに何をすればいいかわかってるわよねあなた?」


…そうですね。さっきから思ってました


「お利口ね、話が早いわ。

じゃあわたしをあたためて…これは命令よ」


はい


あなたの手がぎこちなくベットに寝ていたわたしを包み込むとあなたの顔がわたしに近づいてきた

ーさてと、久しぶりにこの子の教育するか

ーただ一つだけどうしても言っておかないと


「あんた、アニメの人形やゲームを買うぐらいならエアコンぐらい直しなさいよ

…それに、それで性欲満たすの禁止。

なんでまだわからないの、あなたの目の前にこれだけの美人がいるのに…まったく」


あなたへの小言を漏らしていたわたしの口は

数分後には嬌声へと変化を遂げていた。



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