第13話 魔女の休日
「みさぁー」
ニャン
「わたし今から出かけるから、明日の昼過ぎには帰るわ」
ニャー
「ご飯ならお皿に用意してあるから。心配しないで」
ニャ…
わたしそんなこと心配してないんだけどね夏菜。
あなた、今日はえらく地味な格好で外に行くんだね。
いつもはもっと派手な衣装で身を包んでるのに。
しかも、あなたが出かけるときはもっと遅い時間じゃない。まだ、お昼の3時前よ
⁇…あ、そういえば。
わたしが拾われてすぐの頃も一回だけこんな事あったわ。
友達に会いに行くって言った割に服装が地味だったから。不思議に思ってたけど。
まあわたしはその格好の方が、自然体で似合ってると思うけどね夏菜には…
「それじゃあ行ってくるから。
みさ、お留守番頼むね」
二ャー
頼まれても…困るんだけどね。
それにしても、すごく嬉しそうにして…どこに出かけるんだか。
ーーーーーーーー
「おーい、着いたわよ。ドア開けて。…じゃないと叫ぶわよ」
夏菜が携帯電話を切ると、すぐにドアが解除される音が聞こえた。
「あら、早いじゃない。のぶひこ」
ハァ、ハァ…、だって夏菜さん本当に叫ぶから。
それにチャイム鳴らしてくれれば
「だってあなた、居留守使うでしょ」
………
「夕ご飯の材料買っておいたけどハンバーグでいいかしら。駅近くのスーパーで挽肉が安かったから」
はい…
「なんか不満そう」
ハンバーグに不満はないですけど、
また電車できたんですか?車の方が早くないですか?
「なんか言った?」
…いいえ
「いつも、あなたの家に来るときは電車でしょ。どうせ泊まるんだし。車が停められる場所がないのよ」
あ、はい
「それに、いい運動にもなるしね」
夕方5時過ぎ、夏菜は電車とバスと歩きで2時間ほどかけて世田谷区にある自宅から
八王子市にある7階建てのビルの一室にいた。
…本当は信彦が言ったとおり車の方が断然に早いし、八王子駅やその周辺に車を停められる駐車場が無いわけないじゃない。ただ単に、わたしが気分転換をしたいだけなんだけど。
「わたしが頼んだのはどのくらい終わった?」
8割ほどは編集も終えてチェックも済みです。
報道関係・各社に送付するDVDは全て梱包して郵便ポストに投函するだけです。
夏菜さん
「夏菜さん?」
すいません、夏菜さま
「…冗談よ。冗談。さんでいいわよ」
はい
「そうだ、あんた。この近くにあるコンビニのバイトなんで辞めたの?」
…はい。どうしてそれを?
「さっき寄ってきたの。そしたらオーナーがわたしに話しかけてきて教えてくれたの」
…そのオーナーに辞めさせられました。
「お前が働くようになってから売り上げが減った」って言われて、
「ふーんそう。誠実で男前に見えたけど…やっぱ人は見た目で判断しちゃいけないのね」
もっとも、あのオーナーわたしに下心まるだしで近づいてきてたからあまり信用してなかったけど。
「今後、どうするの。あなたを雇ってくれるとこなんてそんなにないわよ。わたしも、もうお小遣い渡してあげられないわよ」
復讐の為、利用できると思って彼を忠実な狼にしたんだけど、
その後ちょっとした事件があって、途中で飢え死にされちゃ困るからと月10万円を
わたしは彼に渡していた。
この部屋もわたしが探してあげた。
あなたの希望する2DKで月5万以下、トイレ、バス別、と23区内は物騒だから嫌だっていう訳の分からない理由。
おかげで探すのに苦労したんだから。
だいたい一人暮らしなんだから1Kでいいのよ、それにあんた秋葉原にしょっちゅう足運んでるわよね?
だったら足立区で良かったじゃないの。物件も安いのあるのに…。
って文句を言っていたわたしだったけど、
後からあんたの理由聞いて全部わたしの為だってわかったときは嬉しかったわ。
仮に今バイトしていたとしても結局、
警察に捕まるだろうからクビになると思いますよ僕
「あ、そうね…忘れてたわ。ごめんなさい」
あんた、時々わたしに指摘するわよね。
忠犬のくせに…まったく。
明日の夜、彼はわたしの最後の頼み(命令)を実行する。
彼がわたしみたいに人を殺めることはしないけど法の違反を犯すことには変わりない。
しかもそれによって、
わたしの罪や次の犯行を知っていたにも関わらず見逃していたことを暴露してしまうことにもなる。
たぶん、わたしを見逃していた事案の方が重い刑をになるかも。
それだけはなんとかして回避しなければならない、彼の為に。
「それと…これ少ないけど捕まったあと、出所後の生活のたしにしなさい。わたしにはもう必要ないから」
こんな300万ものお金僕には…。
「だってあなた結局、わたしが渡したお小遣いほとんど使わずにわたしに返してたでしょ。毎月」
彼は日雇いバイトや固定のバイトが見つからずどうしても生活が苦しいときにだけわたしが渡したお小遣いを使っていた。
「それは、あなたが返金したのをわたしが家で保管しておいたの。本当はもっとあげられるんだけどね。
…「あまり下手な行動はするな」と、
こうるさいボス狼に言われて。
だからそのお金は、わたしが明日帰ったら必ず銀行に預金しなさい。
明日は昼2時前には帰るから、それからでも間に合うはずよ。捕まってから現金なくなってましたじゃ知らないからね」
すいません。ありがとうございます。
…夏菜さん、それで…あの、
「なに?わたしこれからご飯作るから忙しいんだけど」
いえ別に
「わたしが料理してる間、あなたこの部屋片付けなさいよ。カップ麺の容器やコンビニ弁当のゴミ。変な人形やゲームのソフトに…その可愛らしい女の子が描いてあるアニメのポスターも全部。わかった」
……はい
午後7時過ぎ、少し早めの夕食を食べ終えたわたしは3本目の缶ビールを飲んでいた。
「あなたも少しは飲んだら。
ほら、お子様用にレモン酎ハイ買っておいたからね」
お子様じゃなくて苦いのが駄目なんです。にがいのが!夏菜さん
「だからお子様なの、この苦味が美味しいのよビールはね」
彼は黙って酎ハイの蓋を開け飲みだすが、
もともとお酒が苦手なので半分も飲まないうちに酔いだしてしまった
夏菜さん!
「はぁーい」
本当に明日、死ぬつもりなんですか!
「そうよー。正確には明日の夜中、明後日になるけどねー」
死なないで下さい。そして僕と一緒に逃げましょう
「…嫌よ。あなた、わたしがどれだけ人を殺したか知ってるわよね」
ー嬉しいこと言ってくれるじゃないの
………
「理由はどうであれ、
わたしの犯罪が露呈したら例え日本であっても確実に死刑よ。
わたしの言ってる意味わかるよね?
一緒に逃げたらあなたにもその罪が覆い被さるわ」
それでも、夏菜さんが1人だけで苦しんで死ぬのはおかしい!
「人はね、罪を犯したら。犯した分だけ償わければならないの。
そう、わたしのおばあちゃんが言ってた。
…あなたは優しいから、わたしに感情を抱いてしまっただけ」
そんなことはないです!
だって、だって…
ーあら、やけに今日は好戦的ね…わたしがいなくなるのがよっぽど嫌なの
夏菜さんはこんな僕でも嫌わずにずっと…
横に座って晩酌していた彼の手が、そっと夏菜の背中に回る
拒まない夏菜はそのまま彼を受け入れた。
ーレモンの味がする。初恋はレモンの味なーんてね…
ーそれにしても、積極的ね。わたしシャワー浴びたかったんだけど。まだ夜の8時前だし…
ー舌がいやらしく絡みついてくる。キスも結構上手になって…
この7年間で最高じゃないの
ーいつもはわたしがほとんど命令するばっかりだったから
最後ぐらいは任せてあげようかな
…かなり不安だけど
ほんと…、この子はここまで育てあげるのに大変だった。
お義父さんの遺体の横で強引に大人にしてあげ、行為が終わったあとはすぐに遺体を故郷に運んで埋葬した。
その日の朝、まだ外が薄明の時間帯に帰ったわたしはこの子を完全にわたしに浸かってもらう為、24時間拘束してわたしのカラダを覚えさせた…つもりだった。
ー舌の絡みが弱くなってきた。さあここからどうするのかしら?
ーわたしの服をまくって、手がブラジャーに……でもね。
「ここじゃ嫌、部屋に移動しましょ」
ーあっちにわたしを抱く為だけにしか使ってない部屋があるんだから
ー行為の始めはお布団の中って決めたでしょ。
そのあとは、あなたの好きな場所で遊ばせてあげるから
ー焦らないの。いまさら焦るくらいならもっとわたしを犯しておけばよかったじゃない
ーわたしは全然大丈夫だったのに、もう!
拘束後、2週間ほど信彦と連絡を取り合って、復讐相手の息子に近づいた。
わたしはその男を早く落とす為に、
美人なのにエッチ。従順で賢く浮気も許してしまう。男にとってはかなり都合のいい女を演じた。
おかげで付き合ってわずか半年で結婚。
男を信用させるために半年間、
まったく信彦とは連絡を取っていなかったが
…まさかあんな事になってるとはわたしも予期してなかった。
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