第11話 人形

わたしがあなたにつたえたかったこと……


どうしてあなたは死んでしまったの

わたしがすべてをつたえる前に


あなたがいない人生は地獄でしかありません

まわりにはあなたのような優しい人はいません


どうして一人で逝ってしまったの

あの時、わたしはあなたにつたえたわよね

あなたが死んだらわたしも死ぬって

なのに、どうしてあんな手紙なんか残したの?

わたしに生きろ、生きろって言われても

あなたがいない人生なんて楽しくないのよ!バカ!

わたしを幸せにするって言ったのに、嘘つき!


でも、わたしはあなたの為に…

いいえ、あなたを殺した人間への復讐の為にこの穢らわしい虚妄の世界にしばらく残るわ

数年間はあなたに会えないけど許してね



…ねぇ、お義父さん

むかし、わたしがまだ6歳の頃

あなたがわたしにこう言ったこと覚えてる?



ななは、お人形さんみたいだね


「えーパパ。わたし、おにんぎょうさんじゃないよ」


なんで?


「だって、なな。ちゃんとおはなしできるもん。パパともおはなしできるし、

にんぎょうさんはおはなし、しないでしょ?だからちがうもん」


うーん

…パパの言い方が悪かったかな

もういっかい言いなおすね


「…うん。いいよ」


ななは、小さくてかわいいからお人形さんみたいだね


「…かわいい。パパわたしのことすきなの?」


もちろん大好きだよ


「ななもパパのことだいすきだよ。わたしがおおきくなったらけっこんしてあげるねパパ」


パパ。うれしいよありがとう。なな



あのあと、わたしはあなたの口にチュウした。

思えば、あれがわたしの初めてのキス

あの時、わたしのキスが本気だったのかどうかと問われるとわからないけど…



…決めたわ、わたし。

これからお人形さんになるねパパ

だって、にんぎょうは人の形をした物だから

人の心は持ってないもの

何も考えなくてもいいもの楽でいいもの。


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