第8話 へびいちご

「ねぇ、みさ聞いてる。ちゃんとわたしの話。横にいるよね」


ニャー


心配しなくても、いるから。

わたしはあなたに殺されて、ここにいるんだから。


みさは助手席のシートに座らせれていた。

東京から2時間余り魔女が運転する車は高速を走っている。


まったく、この魔女はスピード出し過ぎなんだよ。

事故されて死なれちゃ怨みが晴らせないじゃない。


みさの左でご機嫌よく運転している魔女。


「どう、みさ、この車の乗り心地は最高でしょ」


ニャー


そう言えばあなた、最近明るくなったわね。

わたしが拾われたときはもっと暗かったのに。


「まぁこの車も、もうすぐ処分しちゃうんだけどね」


処分?何を言っているの。

…あなた、いったい何を考えているの?


「もう少しだけお話しにつきあってくれる?みさ」


ニャー


ーーーーーーーー


わたしはとても幸せだった

愛している人とずっと、ずっといられると思うと幸せだった。


「ねぇ悟、結婚は?」


えっ、覚えてた


「うん」


夏菜、まだ高1だろ。卒業するまでは駄目。


「…嘘つき」


それでもわたしは一緒にいるだけで幸せだった。

だから結婚はまだどっちでもよかった。ただ言ってみただけ。


「ねぇ、わたし悟の子供産みたい」


…駄目。まだ高2だろ夏菜


「別にいいじゃん。どうせ結婚するんだし…」


卒業はしなさい。卒業してから


本当は早くお義父さんの子を産みたかった。

でも今はずっといられるから我慢した。


「さとる。あと1年で高校卒業だよ。そうしたら結婚して子作りできるね」


夏菜、お義父さん前から言ってるよね名前で呼ぶのは禁止だって


「家の中だけだからいいじゃない」


学生のうちは駄目。

夏菜、おっちょこちょいだからそのうちぼろがでる。

…それにやっぱりお義父さんさ、

夏菜にはもっと学歴をつけてほしいかなと思って、だから大学に行きなさい。

決まったらその大学の近くで一緒に住むから


「……」


無事大学に入学することができた。

志望大学にギリギリだったけどね。

お義父さんが入れって言った大学に入学出来たよ。危なかったけど…。

わたし、勉強頑張ったんだ。

だってお義父さん、合格しないと結婚しないって言うから。

愛の為、必死だったんだよわたし。

お義父さんのいじわる…

でもね、わたしは知ってるよ。

お義父さんがわたしにいじわるする理由。

お義父さんがわたしを遠ざけようとしてること。

わたしのことが嫌いになったとかじゃなく。


…たぶん、わたしの将来のことを考えて。


わたしがお義父さんよりも優しくていい人を見つけるまで待ってるんだよね

わたしがお義父さんに愛想尽かすのを待ってるんだよね


…誘惑するのはいつもわたしばっかり。


でもわたしは諦めないよ。諦める訳ないじゃない。


……だって、大好きだったおばあちゃんを殺してまで…、あなたを選んだんだよ


だから、こんな事したってわたしがお義父さんのこと嫌いになるわけないじゃない。


もう…

そんないじわるをするお義父さんにわたしもいじわるしちゃお。


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