第5話 風薫る季節
眩しい光が眠っていたわたしに差し込む。
「みさ、おはよう」
魔女の眠るベットの上で寝ていたわたしにあなたは挨拶をした。
わたしと同じく今起きたばかりのあなたはまだ眠たそうにしていた。
狼を刺戟させる下着が乱れそこからあなたの透きとおるような肌が朝日に照らされていた。
…息子はこの魔女に心を持っていかれた…
あの後わたしはあなたと息子に服を着させ、
あなたが落ち着くまで待ってから息子を残し2人で外へ出た。
わたしは老夫婦の家に向かっていた。
息子を呼びに戻ってから30分は過ぎていたので心配してるだろうし。
「あら、夏菜ちゃん。元気しとったかい」
…お久しぶりです
「ちょっと見ない間にべっぴんさんになって。いくつだっけ?」
…ありがとうございます。…今年で16歳です
「学生さんになったんだってね」
…はい
「どうしたの?くらい顔して…男の子と喧嘩でもしたの?うちにあがってく?」
………
わたしはここで婦人の話を遮った。ご年配の割に元気でよく喋る婦人にわたしは欠席を伝えた。
婦人は残念そうにしていた。
実はわたしが息子を呼びに行ったあとすぐに夫から時間には帰れないから今日は行けないと電話があったらしい。
話し相手がほしかったのか婦人はわたしたちを家に誘っていたが丁寧に断った。
帰り道、わたしはあなたを連れて寄り道をした。
息子の嫁がもうじき帰ってくるかもしれないなかで、あなたとゆっくりと話すことはできなかった。
風薫る五月、山の木々から流れてくる風はまだ冷たく
陽炎のように儚い螢の灯火が、あなたをいっそう淫猥な姿へと変貌させていた。
おばあちゃん、わたしは悟さんのことが好きです
「……諦めなさい」
どうして?
「夏菜。悟はあなたの母親と結婚してるのよ」
だからどうしたんですか?
「いい、よく聞いて。あなたは愛情というものをはきちがえている」
…わたしは間違えてなんていません
悟さんはずっとわたしのことを見守ってくれました
わたしが悩みを抱えてるときは相談にのってくれました
わたしが一人で寂しいときはずっとそばにいてくれました
わたしが甘えたいときは頭を撫で撫でしてくれました
わたしが怒っているときも…
「………
だからそれが間違えているの。それはあなたが子供で心配だったからで、親が子供にかける愛情表現なのよ!親なら普通のことなの。いい加減目を覚ましなさい夏菜!」
でも、わたしが迫ったときは悟さん一旦は断りました
それでもわたしが泣きだすとあの人はぎゅっと抱きしめてくれました
「…そりぁ悟も男だからね。夏菜みたいな子に泣かれたら…」
わたしはあの人の優しさに惚れたんです
「……夏菜、あなたと悟はね20以上も歳が離れているの。
……あなたはまだ若い。これからいろいろな人に出会うわ。
……もしかしたら、悟よりもっと優しい人が現れるかもよ」
わたしはあの人以上に優しい人はいないと思っています
「分からないでしょ、そんなこと。
……さあ、もう家に帰りましょう」
家に帰るまで、あなたはわたしに口を開くことはなかった。
いつからそういう関係なんだい。
わたしはあなたにそれは問わなかった。
今日が初めてでないのはわかっていた。
…1年くらい前にあなたと悟が同じ香りを纏っていたのを知ってから
わたしは気づいていたのかもしれない。
さっきまで冷たかった風も
いつのまにか湿気を帯びた風に変わり
秋驟雨の様相を告げていた。
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