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刈り入れの済んだ作物は、冬の食料として倉庫に
悩みの種、といえば例年、戦力がそろわないのだが、今年は特に不足しているという。
被害を受ける地方はもちろん、近隣の各領主にも派兵の義務が課されていた。これが外征だったら、領主は功に応じて土地を得られるし、兵士は略奪の恩恵に
だから、なにかにつけて領主たちは援軍を出し
事情は、
「そうおっしゃいましても、私には兵がおりませんが」
彼が流浪の身であることは、ボワダンも察していよう。
「いやいや、
まじめくさった顔つきだが、どこまで本気なのかはわからない。いずれにせよ、重ねて断ることはいまの立場からしてもできなかった。
ボワダンはバロシャムを待たせ、彼を前線に送るために必要な書類を整えた。ふと、紙の上にすべるペンの音が止まり、ボワダンが顔を上げた。
「卿の名前ですが……どちらがよろしいかな?バロシャムか、ジフィトーか」
何食わぬ顔をしながら、やはり知っていたらしい。バロシャムはたずねた。
「あちらに、私の顔を知っていそうな者はいますか」
ボワダンは
「さて、名前だけならともかく、卿とくつわを並べた者はおりますまい」
「では偽名のほうでお願いします」
バロシャムはつづりを伝えた。
ボワダンは「まあ、字が読める者も何人かはいるでしょう」とおどけた表情を作ると、完成した書類を器用に巻き、
バロシャムは部下たち五人を連れて出発した。
予定戦場の方角は北東、馬で丸二日の距離に位置する小高い平地。ボワダンの話によれば、本隊はすでに到着しており、築陣も済ませている頃合いだそうだ。
町を出てしばらく行くと、街道は枝分かれした。片方は町を訪れるときに通った道だった。一行はもう片方へ進んだ。
街道の両側には畑地が続いていた。耕作地はすでに刈り入れを終え、休耕地では種
身軽な六騎は、目的地までまっすぐ伸びる街道を、夜も徹する強行軍で駈けた。道中、獣や山賊に襲われることもなかった。二度の休憩を
夏が戻ってきたような強い陽射しに照りつけられ、なだらかな丘は濃い影を落とし、波のように連なっていた。ところどころに木立も見られた。
牧草地として利用されているようだった。土地が痩せていて、育つ作物も限られるのだろう。つまり、略奪者の目標は背後の穀倉地帯であり、
バロシャムは丘に登り、
一帯の傾斜はゆるやかで、高低差はあまりなかった。半帝里ほど先で、森が平原の終わりを宣言していた。緑人鬼たちはその森を通って侵入するものと思われた。
東に目を向けると、すでに小
そのさらに南に、友軍が居を構えているとおぼしき、小さな集落があった。
「なにかわかって?」
斑点交じりの白毛にまたがり、肩にタカを止まらせた長耳族の女が声をかけた。舟形帽をかぶり、弓を背負っている。左腕は肩まで革製の
「面白いものはないが、むこうに本隊が駐屯しているようだ。行こう」
と答え、バロシャムは進路を変えた。長耳族の女と矮人族の従者も後を追う。
三人に遅れまいと栗毛の脇腹を蹴ったのが、男のような服装をした、茶色い髪の女。
※一帝里:約4キロメートル
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