異世界は妄想世界⁉︎ 目覚まし時計はよく落ちる


ガシャンッ‼︎‼︎



俺の手は時計に届く事はなく、時計は音を立てて床へと叩きつけられる。


すると時計からも光が溢れ出し、部屋の光と共鳴するように光は強く部屋全体を明るく照らす。


世界が真っ白にになり、俺の目はスパークするかのように弾けだす。



「何も見えない‼︎‼︎」


そしてーー…



ドクンッ!



突然大きく心臓が跳ねる。


「うッ‼︎」


体が急激に熱くなり身体は激しく波打ち始めた。


息がうまく吸えない‼︎


『トモ…』


モコが苦しそうに俺に手を伸ばす。


「モコッ‼︎」


うまく動かない体を動かし、俺もモコに手を伸ばす。


もう少しで手を掴めるー…


ドサリ


俺の手がモコの手を掴む前にモコは倒れ込む。


「モコ…」


そこで俺の意識も途絶えた。




ーーーーーーー……



ガラガラガラッ



大きな音とともに家が揺れる。



「なんだ…?」



俺は目を開く。


モコはすでに目覚めていたようで俺の事を心配そうに見下ろしている。



『トモ?

大丈夫?』


「大丈夫だ。

ありがとう。」



モコに手を借り立ち上がる。


それにしても…



「さっきの音と揺れはなんだ?」



もの凄い音と揺れがした。



『わからない。

でもね、トモが起きる前に何度か同じような事があったよ。』



どうやら定期的に起きているようだ。


それにしてもなんなんだろうか。


まるで馬車が通っているかのような音ー



ガラガラガラッ



俺の考えに答えるように再び音がする。



「ような気がするじゃない!

これは馬車の音だろう!」



馬車など見た事は無いが間違いなく場所の音に違いない。


いったいどうなってるんだ⁉︎


さっきまで俺何してた…?



………。


「と、時計ッ‼︎‼︎」


まさか、まさかッ‼︎


俺は時計に飛びつく。



カチッカチッ


時計は壊れてはいない。


一先ず胸を撫で下ろし、改めて時計を見る。



「……。嘘…だろ?」



時計は俺が落とす前になかった数字を表示していた。


それはーー…。



100years



100年の時が過ぎていた。


そして小さくこうも書かれている。



知的生命体確認



「………。」


やってしまった。


あれほど悩んでいた世界をただの妄想世界に変えてしまったのだ。



「う……うわぁぁぁー‼︎‼︎」



俺は自分がやってしまった事の重大さに耐えきれず、声を上げ泣いた。



『トモ…泣かないで。

モコがいるよ。

大丈夫!この世界はトモが作った世界なんだよ。

いい世界に決まっているよ!

一緒にこの世界を守っていこうよ。』


そう言ってモコは俺の背をさする。


「うッ…うッ…」


『大丈夫、大丈夫。』


泣き続ける俺にモコはずっと付き合ってくれた。



どれくらい泣き続けだのだろう。


部屋の中は暗い。


いつしか俺は泣き疲れ眠ってしまっていたようだ。



『スー…スー…。

トモ、大丈夫ー…』


モコは俺の背に手を置き眠っている。


ずっと俺を慰めてくれていたようだ。



情け無い事に俺はその姿を見てやっと覚悟決められたんだ。


そうーー……



この世界を最後まで守って行くんだと。


そして隣で眠る小さい女の子、モコを助けてやるんだと。



静かな家の中、俺は声を出さずにもう一度泣いた。


これは後悔の涙と、モコへの感謝の涙だ。



俺はモコを抱きしめて、起こさないようベッドに運んだ。


そして額に手を当て



「ありがとう…」


と呟いて俺もベッドへと戻った。




ーーーーーーー……



ガラガラガラッ!



昨日の馬車の音に起こされる。



「いったいなんなんだ。この音は!」



家の中の明るさを見るにまだ早朝だ。


イラつきながらも俺は目が覚めてしまったので身支度を整え始める。


今日は外を見るつもりなのだ。


腹が立つが外の状況がわからないので以外と早朝の方がいいかもしれないな……


不本意ながらも馬車の音に感謝しつつ、朝食を用意する。


最近は材料のみを用意して料理している。



「さてと、朝食も出来たしモコを起こすか。」



今日の朝食は、スタンダードにオムレツと人参のポタージュだ。


モコは人参が嫌いで食べてくれないのだが、ポタージュなら食べてくれる。


神様なので栄養バランスとか考えなくてもいいのかもしれないが見た目が子供なので一応考えている。



「モコー。 起きろ。

少し早いが、今日は外を見に行くぞ。」



俺はモコを揺する。



『眠いー。

まだ寝るー。』



モコは俺を拒否するかのように布団を頭まで被る。


ここまでは想像通りだ。


奥の手は用意してある。



「そうかー。

残念だなぁ。

せっかくモコのためにパンケーキ作ったんだけどな…

いらないかー。ホイップクリームたっぷりなんだけどなぁ…」



どうせ起きない事は分かっていたのでオヤツも作っておいた。



『バナナとチョコも‼︎』


モコは布団から飛び出し、洗面台は走っていった。



「はいはい…。

朝ごはんちゃんと食べたらな。」



ーー……



「さてと、行くか。」


『しゅっぱーつ!』


朝食を食べ軽く身支度を整えて家の扉を開ける。



「……。」



ドアノブを持つ手が少し震える。


この先の世界がとんでもない世界だったらどうしよう…


今更ながらに不安になり始める。


ドクン…ドクン。


不安がどんどん大きくなる。



「…‼︎」


『大丈夫だよ。トモの作った世界だもん!』



モコはドアノブにかける俺の手に自分の手を重ねて俺に笑いかける。



「そうだな…。」



俺は頷き返しドアノブを回しドアを開けた。






ーーーーーーー……


「……。」


『……。』



俺達は目を疑った。


そこには俺の知らない世界が広がっていた。


あえて言うなら中世ヨーロッパの街並みに似ている。


俺が冒険物のゲームに一時期はまっていたからだろうか……。


まだ早朝という事もあり人はそんなにいない。


だが問題はそこではない。


人だけではなく、動物の耳らしきものを生やした人や背中から花を生やした人までいるのだ。


やはりここは俺の妄想が現実となった世界で間違いないだろう。


通行人達が俺達をチラチラ身始めている。


まずい……


俺達の着ている服が珍しいのだろう。


『わぁ!何⁉︎

トモッ‼︎』


俺は通行人の服を覚えて、モコの手を引き家へと戻った。



ーーー……


トモ達が家に入っていくのを陰から見ている人がいた。

その人物の頭にはネズミの耳があり、尻尾が生えている。

おそらくネズミの獣人だろう。


『開かずの扉が開いた?』


『王に知らせなければ…‼︎』


獣人はそう呟くと姿を消した。


そう…魔法のように。

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