異世界の始まり〜 Q.身近にいる女の子が突然可愛くなったらあなたはどうする?


俺の願いを聞いたモコは不思議そうに俺に言う。


『わざわざ私に頼まなくても出来ますよ?

外に出てみて下さい。すでにできているはずです。』


俺は疑いながらも言われた通り外に出る。


「うっ」


久しぶりに出たせいか眩しい。


しかし暑すぎる事は無く、丁度いい。


気温と太陽光の調節はひとまず成功のようだ。


「完璧だな。

となると次は、大地と水だよな。」


大地は乾ききりひび割れているし、水は一滴もない。


これでは生物はどころか植物すら生きられない。


「まずは乾ききった大地を潤わせ、湖でも作るか。」


しかし、それだけだと一時的な解決にしかならないよな…


「後戻りはできないしなー……」


俺は考え直す。


……。俺のいた世界ではどうだったかな。


「‼︎‼︎。 そうか。

天気だ。 天気の移り変わりならーー ‼︎‼︎」


早速取り掛かる。


まずは大地を潤わせ、湖は作りたい。


草木が生い茂るオアシスのような大地。


次に、天気だ。


天気は晴れ、曇り、雨だろ後は雪か?


後から天気の調節は出来るようにするとしてまずは晴れ6.曇り2.雨2の割合で調節しておくか。


調節しておけるようにしておかないと水がなくなるようになったり、洪水が起きたりと災害が出てしまう恐れがある。


自然災害は出来るだけ避けておきたい。


雨の量や曇り方などは俺がいた世界を基準になるようにしておいた。


こちらも後から調節は可能だ。


願いたい分だけ願い俺は外に出る。


「凄い……」


俺は目を疑った。


そこには一面に広がる緑の大地。


荒れ果てた大地は見る影もない。


チラリと俺はモコを見てしまう。


このよくわからない神様は本当は凄い力を持っている。


改めて俺は凄い所に来てしまったんだと今更ながらに感じたのだった。


そうして、生物が住める環境は整っただ。


ただーー…


俺は一つだけ不満があった。


それは、モコが新世界作りにおいて何かを意見することが全くないからだ。


それどころか、俺を否定する事もない。


今でさえモコは


『これがあなたの望む世界ですか。』


などと適当な事を言っている。


この様子では俺が、荒れ果てた世界をそのまま望んだとしてもおそらくは


『いいのではないですか?』


というだろう。


それぐらいモコは新世界作りに興味を持っていない。


本気で俺に丸投げするつもりのようだ。


ああ、……そうだった。


俺は元の世界の自分の事を思い出した。


俺はニートをしていたが、そうなる前とても真面目な奴だった。


そんな俺がニートになったんだ…何があったんだろうな。


今の俺には、当時の俺の記憶はまだ無いが少し気になったのだった。


ーーーーーーー…



さて、話が逸れてしまったので話を戻す。


次はーー…。


そうだ。新世界の生物についてだな。


これが本当にやっかいな問題なんだ。


そもそも、この世界のゴール地点の知的生命体が決められない。


知的生命体を人とするのか、人でないものにするのか。


知的生命体を作るにあたり、俺の世界にあったような生物の進化の過程が必要なのか……


悩む所があまりに多すぎる。


ここは特に身長にならなければならない。




何も決められないまま時が過ぎていく


ーーーーーーー……




優柔不断な俺はこの生物作りに取り掛かって既に3ヶ月程の時が経っている。


時間がかかり過ぎているのはわかっているんだが決められないんだ。


そもそも3ヶ月と言ったがこの世界には時間の流れがない。


当然、朝夕などもなく太陽の位置は常に同じだ。


これについてもいずれ解決しなければならない。


正直に言うと、環境以外に俺は何一つ出来ていないのだ。


この世界に来てもなお、悲しい事にニートのような生活を送っていた。


そう、寝たい時に眠り、腹が減ると食事をするという生活をしている。


違う事と言えば、ゲームをしていない事ぐらいだ。


普段はよくモコと散歩をしに出かけている。


なにせ後付けが出来ないのでどうしても慎重になって何一つ出来ないのだ。


それでも、ひとつだけ作れたものがある。





モコとの絆だ。


絆といってもこの世界には俺とモコしかいなく、モコはまだ子供だ。


友情というよりは親としての情の方が近いかもしれない。


そんな日々の中で俺は少し気になることができたんだ。


それは、モコの食事方法だ。


これだけ一緒にいるのだが、俺は一度もモコの食事を見た事がない。


モコは食事をとっていないわけではない。


ただ、俺はなぜか一度も見た事がないのだ。


俺は食事をするのを一度でいいから見ようと何度も挑戦したが、みる事が出来ていない。



そこで、今回俺は食事風景を見るためにあるものを用意したんだ。


ビデオカメラだ。


もちろんただのビデオカメラではない。


俺限定で観る事が出来るカメラで、半永久的に録画し続ける事ができる。


俺以外にはカメラの存在を見る事が出来ない。


再生機能については俺が望む部分を自動的に再生してくれる。


俺はなるべくモコの能力を使って無駄な物は作らないように生活しているのだが、これだけは別だ。


どうしても我慢が出来なかったんだ。


このカメラを使い俺はモコの食事風景を録画しているのだ!


そして今日、その映像を見る。


モコは一人で散歩に行っているのでチャンスは今しかない。


俺は震える指で再生ボタンを押した…


カラカラカラ…


どこか懐かしい音をだしてカメラは動きだす。


そして……


映像が流れだした。




『いっただっきまーす!

ボン!!

バクバクバク…』



俺は驚きのあまり声を出す事も出来なかった。


そこに映っていたのはモコ…いや、雲ではなかったのだ。


子供っぽく少し声も高めな元気な声で食べる、少女。

子供?


子供というよりは少女が近い。近いがその少女には羽が生えている。真っ白の大きな羽。


少女が手を真横に伸ばすよりも長い羽が背中にある。


おそらく俺が真横に伸ばしたくらいの長さだろう。


それにしてもカメラに映る少女はまだ幼いがが美しかった。


彼女の姿をはじめに見ていたらモコだとか雲だとか言わなかったに違いない。


それほどまでに紛う事なき女神がそこにはいた。


俺はカメラを置いた。

これ以上は見ていられなかった。

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