異世界への旅立ち〜 始まりは大概覚えていない。


男なら誰しもヒーローに一度は憧れた事があると思う。


俺も同じでヒーローになりたかった。


スーパーパワーを持ち悪から人々を守るものから、魔法使いになり貧困した世界を変えるそんなスーパーヒーローに。


しかし現実はスーパーパワーなんてものはなく、俺も普通にサラリーマンとして働く事になる…


そんな事はなく、俺はただの引きこもりのニートをしている。


色々あって絶賛、人生を拗らせ中だ。


俺はまだ、頭の中でスーパーパワーをいつかは手に入れるという夢を諦めてはいない。


だかは俺は今日も、元気にゲームを始める。


俺が今熱中しているのは自分の世界を作るゲームで、自分が神となり新世界を作るという物語だ。


俺はゲームのスイッチを入れ、コントローラを握る。



その瞬間、グニャリと世界が揺らいだ。


「ん?」

ほんの一瞬、視界が揺らいだが特になんとも無い。


俺は気にせずゲームを始める。



その時、風も吹いていない部屋の中でカーテンがふわりと揺れていた。


『やっと見つけた。

これからはあなたが私の主。』


不思議な影がポツリとなにかを言って消える。


再びカーテンが静かに揺れる。


ゲームに没頭していた俺は何も気が付かなかった。








……



見渡す限りの荒野。


生き物はおろか、草木の一つとして生えていない見渡す限り何もない荒野。


そんな荒野に一人俺は立っていた。


「なんなんだ⁉︎ここはッ‼︎」


先程まで俺はここではないどこかにいたはずだ。


だが記憶があやふやでよくわからない。


「それにしても…暑い!」


暑いと言うよりももはや熱い。


照りつける太陽の光に、滝のような汗が俺の体から溢れ出してくる。


太陽の光はあまりにも強く、全ての水を奪い大地はひび割れてしまっている。


このままでは俺も30分も持たないだろう。


「とにかく日陰を探すか。そこに水があればいいが……」


俺はひとまず太陽から逃れようと歩き出す。


「日陰を探すにも何にもないじゃないか……」


当たり一面何もないただの大地なんだ。


日陰なんてあるわけもない。


いつしか滝のように流れていた汗も出なくなり、俺の意識もかすみ始める。


このままだと死ぬー……




『やっと見つけた。

毎回探すの大変です』



突然日差しが遮られた。


この辺りに日陰になりそうなんてものあったか?


意識が朦朧としつつも俺は前を見る。


目の前に大きな雲が浮いていた。


『ねぇ、聞こえてる?』


雲が話しているのか雲の中に人がいるのかはわからない。


「聞こえている。」


雲が話してくるなど普通であればおかしな事なのだが、意識の朦朧としている俺はそんな事はどうでもよかった。


「…水をくれないか?」


『水…?そんなものが欲しいの?

あなたの望む物を用意しますから、欲しいものを望んで下さい。』


「水と食料……全て叶えてくれるのなら俺の望みを全て叶えてくれ」


水に食料、できるなら快適な家が欲しい。


その家の中で俺の望みを全て叶えて貰えるとさらに嬉しいよな…


言われた通り望みを頭で考えた。


声に出てしまうのは癖のようなもんだ。


『まさか、全てのものを望むなんてね。

まぁいいわ。入りなさい。』

と雲は言う。


「入る?」

俺は目の前をみる。

そこには小さな家がある。


俺は言われた通りに扉を開けてみる。


……‼︎‼︎


俺は驚いた。部屋の中は涼しく、快適だった。



部屋の真ん中には大きなテーブルがあり、ガラス製の水差しとコップが置かれている。


俺は途端に体の渇きを思い出し、水差しから直接水を飲む。


不思議なことにどれだけ飲んでも、水差しから水ははなくなる事はない。


「ふう。助かった。

ところでお前は誰だ?」


大きかった雲は小さくなっていて俺の前をぷかぷかと浮いている。


『いきなりがそれ?

あなたの望みを叶えたのに……感謝はなしなの?』


不機嫌に雲は答える。


『いいです。

私は女神より作られし神。』


…意味がわからない。


もちろん言葉の意味がわからないわけでは無い。


いったん落ち着いて、飯を食おう。


水差しを置いた時合わせてらように出てきた冷麺に手をつける。


『聞くだけ聞いて後は無視ですか、人間。

自分が誰かわかっているのですか?』


雲は喚く。


うるさいやつだ。

出てきた冷麺はなかなかにうまかった。


『ねぇ!聞いているの?』


「うるさいな。

俺が誰かだって?

それくらいわかっているに決まっているだろう。

俺は…?俺はだれだ?」


冷麺の味が消えた。


おかしい、自分の事がわからない。


何も思い出せないのだ。


『全く…。』


『あなたは私が連れてきた人間です。

正確にはあなたの一部分のみを連れてきたのだけれど…

ここは私の世界で、あなたは私の母が作った世界にいた人。

名前は伊吹智紀で、年は21の男。』


雲は少し偉そうに言ってきた。

実際偉そうにしているからわからんが先程より高い位置を浮いていて声が高い。


偉そうに喋る雲に若干イラつきながらも俺は聞く


「俺を連れてきたとはどういう意味だ。

そもそも良心部分の召喚とはいったいなんだ?

お前の世界だとかいったいどうなっている?」


言いながら若干パニックになってきた…。


『あなたの精神の中の純粋で真面目なところだけ、つまり良心部分だけを複製し、ここに召喚したの。

つまり、あなたは私により作り出された人

ここは私が与えられた世界で、ここに来る前のあなたは私の母の作った世界に住む人間の一人でした。』


どう言うことだ……

作り出された物だって?


『だけど召喚するのは大変でした。

なにせあなたの精神は全体的に黒かったので良心部分がなかなか……

かなり苦労しました。』


今俺の事を馬鹿にしなかったか?


そもそもわけがわからない状況になっているのは雲のせいのようだ。

その上偉そうで腹が立ってくる。

軽くパニックになりヒステリーを起こしそうだ…。


しかし、イラついても話が前に進まないので抑えつつ話を進める。


「俺がお前に作り出された存在だと?

お前が神だと言うこともわからんがそもそもお前の世界だとかお前の母の世界だとはどういう意味なんだ?」


『説明するのに疲れてきました

なんでもよくないですか?』


俺はキレた。


数分後……




一つ言い忘れていた事があるので伝えておく。


この家は俺が望んだ家そのものだった。


言葉の通り俺が望んだものを全て用意する家だった。


さて話を戻そう。

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