さっき見たのはなんだったんだろうか。走って帰りながら、考えていた。

 ミミズだったら、地上にあんなに出てこない気がする。芋虫だとしても、あの量は一匹とか二匹じゃない。百匹、もしかしたら千匹以上いるかもしれない。一斉に卵から孵化でもしたのか、もしかすると地震の前触れとかかもしれない。だいたい、なんで虫ってあんなに気持ち悪いんだろうか。

 だいたい3分くらい走っただろうか、車道が四車線ある明るい大通りのところまで来た。赤信号、ちょっと信号待ちだ。


 ふと、後ろを見てみると、走ってきた暗い一本道の道路の奥で影が蠢めているように見えた。まさか、と思って凝視してみた。間違いない、さっき見たアレだ。どんどんこちらへ近づいてきている。

 信号が変わるまでは、まだまだかかる気がする。この信号を渡ってまっすぐ行くと、家まではあっと言う間に帰れる。ちょっと待つしかない。後ろから、どんどんアレが近づいてきている。

 早く、早く、早く信号変われ。意味はなくてもジャンプして、足踏みをして、信号が変わるまで待った。このまま、信号を待たずに横に走って行くという選択もありだったが、家に帰るにも遠回りだ。

 車の流れが止まった。信号がついに変わった。走って信号を渡ったところで、好奇心が湧いてきた。後ろから近づいてきているあれは、信号も渡ってくるのか?信号を渡りきったところで、しばらく待ってみた。アレはどんどん近づいてくるが、先に信号が変わった。アレは自分と同じ道を進んで来ているようだ。車が進みはじめたところで、ちょうどアレが信号を渡りはじめたようだ。当然、アレは信号待ちなんかはない。

 車に轢かれろ。車に轢かれたら、あいつらは死ぬんじゃないか。そう思ったが、変わらなかった。アレの上を車が通っても、まるですり抜けているようだ。アレは幽霊のような、自分の知らないなにかのようだ。少なくとも、この世のものじゃない。そうわかった途端に、怖さが倍増してきた。

 大通りで見えて、少しはアレがはっきり見えてきた。数百匹以上のなにかがゾロゾロとこちらへ這ってきているようだ。アレ一匹は、10 cmくらい、横断歩道の路面の白い縞模様よりは短い。色は黒のようだが、ミミズや芋虫のような節は無さそうだし、足とかも生えていないようだ。

 

 とりあえず、家へ向かって走り出した。まだ、後ろからアレは自分の方へ這って来ている。

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