第二十一話・3
いつもどおり今日のバイトが終わって、スタッフルームで帰り支度をしていると、古賀千聖が入ってきて僕に話しかけてきた。
「ねぇ、楓君」
「なに? 千聖さん」
「今日、暇かな?」
「暇…ではないけど。どうかしたの?」
「そっか……。暇じゃないんだ……」
千聖は、残念そうにがっくりと肩を落とす。
「何かあったの? 少しくらいなら時間はあるけど……」
「そうなの? だったらさ。これからデートしよ」
そうは言ってくるが、外はもう夜だ。
デートと言ったって、20~30分くらいしか時間はないだろう。
特にも制服姿だから、周りの目が厳しいだろうし。
「いきなりだね。買い物くらいしか付き合うことはできないけど。それでもいいなら──」
「うん! それでいいよ。ありがとう」
千聖もそれが目的だったのか、笑顔でそう言っていた。
普通のデートなら、日曜日の方が有意義にできるだろう。
とりあえずは、今日のタイムカードを通さなきゃ。
古賀千聖を待つ間、僕はスマホを見ていた。
誰かに連絡をしようというわけじゃない。
ホントに、ただなんとなくといった感じでメールやらを確認してるだけだ。特に何もなかったが。
しばらくして、古賀千聖が喫茶店から出てくる。
パタパタとしていて落ち着きがなかったけれど、僕の顔を見ると笑顔を浮かべていた。
「お待たせ。…って、ちょっと待って」
「あ、うん」
まだ何かあるのかな。
千聖は、僕の目の前で履いているハイソックスを直し始めた。
なぜこの場所で?
そうとも思ったけど、やり始めたのだから仕方ない。
電灯の明かりがあるから、ここだと直しやすいんだろう。
ただ、その前屈みの格好だと短いスカートが翻って中のパンツがチラ見えになってしまってるんだけど。
ちなみに色は、ピンクだ。
僕は、千聖から視線を逸らそうとする。
「──ちょっと。私から視線を逸らさないでください。しっかりと見てください」
「ああ、うん。ごめん……」
千聖に注意されてしまい、僕は彼女から視線を逸らすわけにはいかなくなってしまう。
──ダメだ。
どうしても、スカートの中の下着に目を奪われてしまう。
香奈姉ちゃんの下着で見慣れてるはずなんだけどなぁ。
それとも意図的に見せているのだろうか。
なんにせよ、そこは見てはいけない。
「もう! さっきから言ってるじゃない! 視線を逸らさないでよ! 私のこと嫌いなの?」
なぜか千聖は不機嫌そうな表情になる。
そんなムッとしたような顔をしなくても……。
「そういうわけじゃないんだけど……」
「だったら何よ?」
千聖は、そのままの体勢のまま訊いてくる。まるで誘惑しているかのように──。
だからパンツがチラ見えしてるんだって……。
そんな事は、彼女の前では言えない。
「それは……」
はっきりと言えない自分も悪いんだろうな。
千聖は、ハイソックスを履き直すとスッと立ち上がる。
「あ~あ……。眼福だったのに……。勿体ないなぁ。楓君なら、別に見られてもいいんだけどな」
「ん? 何の話?」
「なんでもない。…さて、ちょっとした時間のデートを楽しもうか?」
「うん」
僕は、千聖に手を引かれ、歩調を合わせるようにそのまま歩きだした。
千聖は、そんなちょっとした時間でも楽しんでいる様子だった。
とりあえず、誰もいないな。
そう思って自分の家に帰ってくると、香奈姉ちゃんが不機嫌そうな様子で玄関先で待っていた。
「おかえり。バイトにしてはずいぶんと遅い帰りね。何かあったの?」
「いや。別に何も……。香奈姉ちゃんは、どのくらい前から待っていたの?」
「ん~。一時間くらい前からかな。いつ帰ってくるのかなって思って、ずっと待っていたんだよ」
「そうなんだ。待っていてくれて、ありがとう」
僕は、素直にお礼を言う。
わざわざ玄関先でお出迎えをしてくれるのだから、そのくらいはしないと。
「どういたしまして。早速だけど、お風呂には入るよね?」
香奈姉ちゃんは、それだけでは物足りないのか、笑顔でそんなことを訊いてくる。
僕は、嫌な予感がしつつも答える。
「うん。入るけど……。もしかして、香奈姉ちゃんも?」
「そんなの当たり前じゃない。弟くんとは、何がなんでも一緒に入るんだから」
「拒否権は?」
「ない!」
きっぱりとそう言ってしまうあたり、これは決定事項なんだろう。
香奈姉ちゃんは、僕の腕を掴むとそのまま浴室まで引っ張っていく。
「そういうことだから。はやく入ってしまおうよ」
「ちょっと待って。まだ準備ができてなくて──」
「お風呂の用意なら、もうできてるよ。このくらいの時間には帰ってくるかと思ってね」
「そ、そうなの?」
「うん。弟くんのことなら、大体のことは把握してるかな」
そんな事をはっきりと言われてしまうと、何も言い返せない。
浴室に入って、バス籠の方を見やると着替えもバスタオルもしっかり用意してあった。しかも、香奈姉ちゃんの分もだ。
一緒にお風呂に入る気まんまんである。
その証拠に、香奈姉ちゃんは浴室のドアに鍵をかけた後、着ていた上着を脱ぎ始めた。
もう見慣れているので取り乱すということはないが、ピンク色の可愛いブラジャーが露わになる。
お姉ちゃん的な存在だからといって、必ずしも大人っぽい下着を着用しているわけじゃない。
香奈姉ちゃんだって、一人の女の子だ。
可愛い下着くらいは、身につけるだろう。そこを否定するつもりはない。
きっと、今履いてるミニスカートの中の下着も同じ色だろう。
「ん? どうしたの?」
僕の視線が気になったのか、香奈姉ちゃんは訊いてくる。
あまりに見惚れてしまって…だなんて、とてもじゃないが言えない。
「いや。なんでもないよ。…ちょっとね」
そうとしか言えなかった。
香奈姉ちゃんは、僕のその返答が気に入らないのか、なぜかムッとした表情で抱きついてくる。
「もう! 気になったのなら、はっきり言ってよね。私だって、そこまでは鈍くはないんだから──」
気のせいか、照れてないか?
そうは思ったが、それを言ったら余計にややこしい事になりそうなので、言わないでおく。
ここは素直に──
「ごめん……」
そう謝るしかない。
すると香奈姉ちゃんは、思案げな様子で訊いてきた。
「なんで謝るのかな?」
「なんとなく……」
「別に悪いことをしたわけじゃないんだから、謝る必要なんかないじゃない」
「う、うん」
僕が自信なく頷いている時に、香奈姉ちゃんはミニスカートを脱いでいた。
そうなると、もう完全に下着姿だ。
香奈姉ちゃんのそんな姿は、何度見ても美しい。
多少の恥じらいはあるのか、香奈姉ちゃんは頬を赤くし、自身の身体をギュッと抱きしめて言ってくる。
「やっぱり、弟くんに見られてしまうのは恥ずかしいかも──」
「それなら、やめにするのもアリかと──」
「それだけは絶対に嫌──。お風呂を沸かした意味がないよ」
たしかに、ここでやめにしたらお風呂を沸かした意味がないだろう。
「そうだね」
「だからね。ここは弟くんが、私のことを引っ張っていってくれたら嬉しいかな」
香奈姉ちゃんは、上目遣いで僕のことを見てくる。
そんな物欲しげな視線で見られてもな……。
僕に、香奈姉ちゃんが着用している下着を脱がせとでも言うのだろうか。
そんなことは、間違ってもできない。
「うん……。できればそうしたいんだけど……」
僕は、頬をぽりぽりと掻きながらそう言っていた。
すると香奈姉ちゃん。勘がいいのか、長めの髪を手でかき上げると僕に背中を向けて、背中辺りにあるブラジャーのホックを見せてくる。
「もう! 弟くんったら。ここを外せば、簡単にブラジャーが取れるようになるよ。…はやくしてよね!」
「………」
まさかのブラジャー外してほしいっていうお願い。
いくら香奈姉ちゃんの全裸を見ているからって、こんな事までお願いしてくるかな。
ブラジャーを外したら、絶対にパンツの方もお願いしてくるに違いないだろうし。
一体、どうしたら……。
なんにせよ、香奈姉ちゃんを待たせるわけにはいかない。
僕の手は、黙ってブラジャーのホックに伸びる。
ブラジャーは、いとも簡単に外せた。
途端、香奈姉ちゃんのおっぱいは抑えていたものを失い、ぷるんと下に垂れる。
香奈姉ちゃんのおっぱい。
見たかった気もするけど、ここは見ないでおくのが正解かもしれない。
香奈姉ちゃんは、僕がブラジャーを外していくのを見ても、何の抵抗もしなかった。
頬を赤く染めて黙って見ているだけだ。
そして、僕の顔をチラリと見て、当然のことのように言ってくる。
「ほら。次はパンツも──」
「いや。パンツはさすがに……」
「無理なことはないでしょ? 私の裸を見てるんだし」
「だけど……」
「反論は認めないよ。…はやくして」
潤んだ瞳でそう言ってきても……。
やるしかないのか。
僕の手は、ゆっくりと香奈姉ちゃんのお尻に伸びていった。
「ひゃうっ……」
なまじお尻を触られた経験がないためか、香奈姉ちゃんの口からそんな声が漏れる。
お尻を触る手の感触はとても柔らかく、それでいて良い肉づきをしていた。
いつまでも触っていたくなるような。
──ダメだ。そんなことをしたらいけない。
そもそも、パンツを脱がしてあげるのが本来の目的なはずだ。
邪な心で触っていたら、香奈姉ちゃんに嫌われちゃう。
ここは誠意を見せないと。
背中を向けてはいるけど、いいのかな。
このまま脱がしていいのか?
悩んでいても始まらない。
こういうのは、思い切ってやるしかないのだから。
「いくよ。香奈姉ちゃん」
僕は、香奈姉ちゃんの返事を聞く前に、パンツの両端を指で摘み、そのままゆっくりと下ろしていった。
香奈姉ちゃんは微動だにせず、ただ自身の手を露わになっただろうおっぱいと秘部の辺りにそれぞれ添える。
さすがに大事な箇所を見られてしまうのは、何よりも恥ずかしいんだろう。
下ろしたパンツが足元までいった時に、香奈姉ちゃんはこちらに向き直る。頬を赤く染めたままで。
途端、香奈姉ちゃんの大事な秘部が僕の目の前に映る。
なぜなら、僕に手を差し出してきたからだ。
「ありがとう、弟くん。さぁ、一緒にお風呂に入ろ」
そこにいたのは、すべてを露わにした、まさに生まれたままの姿の香奈姉ちゃんだった。
これはもう、断れる雰囲気じゃない。
「うん……」
こんな時、どんな顔をすればいいんだろう。
僕は、多少申し訳ない気持ちになりながらもそう答えるしかなかった。
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