第2話
「あなたも私を抱くの?」
雨の降り続く荒野で、彼女はただそこにいました。
息を引き取った犬を撫でながら。
近づく私に彼女は犬を撫でたまま、こちらを見ずに問いかけました。
まさかこんな質問を問いかけられるとは思いませんでしたが。
この荒野で彼女と出会うことは分かっていました。
いえ、彼女と会うためにここに来たと言っても過言ではありません。
彼女がレインを引き継ぐものでしたから。
レインについては別の話ですので、今回は詳しくは話しません。
けれど肩までの白百合色の髪、薄氷色(アイスブルー)の瞳はレインの生き写しのようでした。
しかし、彼女の瞳が何も映すことがないと、その薄氷色(アイスブルー)の瞳をみて悟りました。
彼女と別の世界を生きたもう一人の彼女。
レインの魂は二つに別れたのです。
別の世界のレインを引き継ぐものは白金の髪と星の流れを視る力。
それによって、星巫女とされ、神の生贄としてその生涯を終えました。
私の前にいる彼女は、白百合色の髪と薄氷色(アイスブルー)の瞳を持つことになったのです。
いつしか此の世界では薄氷色(アイスブルー)の瞳は災いを招くという呪いが出来ていました。
本来なら弱視のままで終わるはずの彼女は、その呪いによって視力を奪われることになったのでしょう。
彼女との会話はどうあれ、私は彼女の願いを叶えました。
元凶となる薄氷色(アイスブルー)の瞳の色をもらうことで。
その代償として彼女の「クロニクル」を、そして一部の記憶と共に受け取りました。こうして私は彼女に新しい名前をつけ、彼女のための世界を作ったのです。
ここまでが彼女の失った記憶です。
現在の彼女ですか?
…それでは『書庫の世界』別名『澪音の箱庭』を覗いてみましょうか。
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