第3話  コースマネジメントの必要性

 コースマネジメントの話を始めると、ゴルファー諸君は大概鼻くそをほじり始めてこう嘯く。


「オレ、コースマネジメント考える程上手く無いから」


 大間違いである。ゴルファーは下手くそであればあるほどコースマネジメントについて考えるべきなのだ。


 考えてもみるが良い。例えば全てのショットがミリ単位でコントロールできるだけ完璧なプレーヤーならは、コースマネジメントなぞ必要ないのである。全てのアプローチショットをカップに叩きこめば良い。それが出来無いからこそ「次」のパットの為にショットをマネジメントせねばならないのだ。つまり、出来ない事が多ければ多いほど、その数少ない手札でコースを攻略せねばならないのだから、その分コースの攻略に頭を悩ませるべきなのである。


 では基本的な話としてコースマネジメントとは何かという話をしよう。ゴルフコースが他のスポーツの競技場と決定的に異なる事は何かといえば、全く同じ条件のコースが基本的にはあり得ないという事だろう。日本だけでも様々なコースがある上に、季節天候によって同じコースでも千差万別に変化する。このような特徴の競技場で行われる競技でもっとも大切なことは何か。


 コースを知る事である。


 コースマネジメントとは詰まる所コースを知る事であると言い切って良い。コースを知らずにゴルフをプレーするというのは簡単に例えると、碌に知らない峠道を全速力でかっ飛ばすようなものだ。すぐ死ぬ。ところがそのようなゴルファーはいくらでもいる。彼らは備え付けのコース図も見る事無くとりあえず全力でドライバーをぶっぱなすのである。そりゃ死ぬわ。間違いない。


 少なくとも良いゴルフをしようと思うならコースの事は良く調べておくべきである。更に言うなら、初めてのコースでは良いスコアを出そうなどと考えない事である。プロが何のために練習日に入念にコースを下見すると思っているのか。初め来たコースで良いスコアを出そうと試みるという所業は自分をプロゴルファーより優れたゴルファーだと考えていると誤解されてもおかしくない。


 ではコースを知るとして何を知るべきなのか。簡単に言えば「死んでしまうポイント」と覚えてそれを避ける事である。例えばOBである。ぶっちゃけ、日本のコースは初心者に優しく出来ているから、左右共にOBで逃げ場が無いようなコースはほぼ無い。であればデッドポイントはそのOBがある側となる。OBは出してしまえば2打の損だ。スコア的にも気分的にも死ぬ。逆に言えば反対側の林にぶち込んだとてまだ生き残りの可能性はある訳である。同じように上がって来れない崖下、出られないバンカー、池などは記憶に留め徹底的に避ける。これがコースマネジメントの初歩の初歩だ。


 更にほんの少し推し進める。例えば右にOBがあるとする。しかし、自分のボールはフックしかしない。ならば右のOBはそんなに怖くない。むしろ左の崖下の方が怖い。というように自分のゴルフの傾向を加味してデッドポイントの危険性を計るのだ。何?自分のボールがどっちに曲がるか分からない?ならOBにも崖下にも届かないクラブで打ちなさい。君にはドライバーはまだ早い。


 陥りやすいトラブルを知る。それが自分の技術を把握することに繋がる。


 自分の技術を把握し、コースを知り、そこで初めて「ゴルフ」が始まるのだと言い切っても良い。何も考えずにゴルフボールを打つ事は「ゴルフ」とは言わないのである。

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