第2話  練習するということ

 ゴルフは、練習すれば上手くなる。


 これはきわめて当たり前のことであるが、意外と賛同して貰えない意見でもある。


 何故か。賛同してくれないプレーヤーの半分は「練習しないで上手くなりたい」と考えていて、これは論外だから無視するとして、もう半分のプレーヤーは「練習しても上手くならないんだが?」と思っている。


 正直、練習しているのに上手くならないプレーヤーというのはまぁ、何かが間違っているに違いないのだが、少なくともプロか上級者に基礎を教わってその通りに練習しているのに上手くならないプレーヤーというのは、練習しているつもりで練習していない事が多い。


 練習しているつもりで何をしているのかというと、そういうプレーヤーは練習場で「実験」しているのである。こういうプレーヤーは熱心で雑誌や本もたくさん読み、常に新しいことを取り入れようとしている。そうすると基礎的なことを十分「練習」している暇が無く常に「実験」を繰り返す事になってしまうのである。


 「練習」とは「出来ることをより出来るようにする事」である。「新しい事が出来るようになるべく試す」のは「実験」である。ゴルフは「練習」すれば上手くなるが「実験」ばかりやっていては上手くならないのである。


 なんとなればアマチュアレベルで「練習」が不要なレベルでボールが打てているプレーヤーなどいないからである。基本通りにスイングし、普通にボールが打てる。しかしながら当然だがそれは「とりあえず出来る」というレベルであって、まだまだ長い道のりが待っている。基本通りのスイングを完璧に身につけたならボールは毎回必ず同じ弾道を描き同じ落下点に落ちる筈だ。


 毎回毎回、全く同じスイングが出来るように練習する。プロがその境地に達するまでにどれだけの「練習」を繰り返していると思っているのか。その事が分かっていれば「練習しているのに上達しない」とは口が裂けても言えない。上達しないのは無限に繰り返す苦行のような「練習」をせずに次ぎ次と新しい事を試す楽しい「実験」ばかりしているからなのだと断ずる。


 もっとも、実験もそれなりに大事ではある。しかしながら「実験」とはどんなものでも「失敗」のリスクがある。ゴルフもしかり。新しくトライする技術、理論はまずほとんどが使い物にならない。膨大な失敗の中からどうにか使い物になる技術や理論を見つけたら、今度は実用レベルに引き上げるべく「練習」しなければならない。


 ぶっちゃけ、その困難さを知れば短いゴルフ人生「実験」に無駄な時間を使うよりも基本通りの「練習」に時間を割いた方が遙かに効率が良い事が分かるだろう。アマチュアにとってゴルフに割ける時間は貴重なのだ。上手くなりたければ正しい基本を身につけるべくひたすら練習を繰り返すべきだ。


 練習の意味を理解し、しっかり練習すれば必ず上手くなる。それを知っているが故に、上級者になればなるほど黙々と練習場でボールを打ち続けるものなのである。

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