第227話 双璧

ハッと見上げるチコの前にはスキャットマンがいた。



スキャットマン「どいつもこいつも役立たずな欠陥品ばかりで興の一つもありゃせん」



江藤「しまった…」



江藤が慌てて動こうとするや



チコの首がガシリと掴まれた。



チコ「うっ…」



スキャットマン「もうよい ついさっきの男のように全ての生気を吸い出し、骨皮にしてくれる」



イーシャ・プラーナ(統治者の吸収)…



チコ「うぐっ」



そして鷲掴みにされ、チコの身体が持ち上げられ



掌から神々しい光が発せられた



次の瞬間



シュ



何やら投げ込まれてきた数種の物



江藤の横を通り過ぎ、それがスキャットマン目掛け飛んでいった



キィン キィン キンキン



それら錫杖で弾かれ、打ち落とされた…



スキャットマン「…」



江藤「…」



それは手裏剣やクナイ、鉄毬など忍者の投げ道具



誰だ…



江藤、スキャットマン双方が視線を向けると



それらを投げ入れただろう男、羽鳥の姿があった



そして続々と入室してきた男達



江藤は振り向き、驚きをみせた



江藤「え? みんな… 何で?」



羽鳥の真横に着けた薊、その左右にバラけ横一列に着いた11人の男達がいた。



そしてその後ろから海原、七海、佐田も現れ、中の様子をうかがった。



チコ、江藤の元に訪れた11本もの刀



スキャットマン「何奴か知らないが… ぞろぞろ雑魚共が何のようだ そのまま去れば見逃してやる ただちに消えろ」



薊「雑魚…? 聞き捨てならぬ台詞よのう」



スキャットマン「サムライ気取りの雑魚共 雑魚は雑魚 どこまでいっても雑魚に変わりはない… ならば聞いてやろう 貴様等何しにやってきたのだ?」



薊「我々に用があるのはそこの二方のみ… おぬしには用も興味もない… だがこの状況からしてそうゆう訳にもいかなくなった」



スキャットマン「ほぉ~ この死にそうなガキをわざわざ助けにきたのか ならば次いでだ 遠慮せず死んでいけ」



薊「何者か知らぬがあまり舐めるなよ、無論 言われずとも介入致す」



薊率いるサムライ集団



そんな強力なチコの部隊がチコを助けに現れた。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



地下ホール 御見内、エレナ、純や、美菜萌、村田vs彩羽vsミナグロ



張り詰めたホール内



「グフゥ」



鼻息をたてた大熊に



ニタァーと笑顔で目を配る少女



御見内等の前に猛獣と怪物がそれぞれ対面された。



三角形に位置どられた陣で睨み合うさなかエレナが鋭い目つきで小銃を彩羽に向けた。



そして村田も



彩羽「ねぇ~ 私のパパとママを返してよ」



村田「一体何の話しだ?」



エレナ「知らないわよ 訳わからない言いがかりつけてるだけ お父さんお母さんの事なんて知らないよ」



彩羽「嘘つき 嘘ついたらどーなるか知らないのぉ? 嘘ついたら針千本飲ぉーます なんだから」



彩羽が両腕をかざし、掌を広げると腕の皮膚が剥離し無数の針状の触手が生えてきた、また五指も針状へと変化し伸び始めた。



一方 拳銃サクラをミナグロへと向ける御見内、美菜萌も木刀を構え、純やも電撃バットを構えた。



純や「俺等の相手はこのテディーベアか」



「フゥゥー」



美菜萌「…」



純や「そら こいバカ熊 おまえの仲間同様気絶させてやっから」



荒ぶる鼻息を立てながら目の前の少女に威嚇していた大熊が純やの罵声に反応、こちらへ振り向くや襲いかかってきた。



「ゴオオオォ~」



咆哮と共に熊手が振り上げられ、仁王立つそのあまりなビッグサイズに



見上げた3人はギョッとさせた。



ブン



そしてサイドから平手打ちが一振りされた。



純や「わぁ」



3人はそれを回避し一斉にバラけた。



右サイドへと避けた美菜萌



その美菜萌に目をつけた大熊が大口を開け、食いかかってきた。



ガチン



勢いよく噛みついてきたがそれを紙一重でかわした美菜萌は横転



美菜萌が顔をあげると影に覆われ、巨体が跨がっていた。



そして見下ろし



そして再び口を開け、食らいつこうとした寸前



バリバリバリバリビビビビ



いきなり大熊が暴れ、後ろを振り返った。



パァン



乾いた銃声と共に今度は大熊の左目に弾痕が生じた。



「グオオオオオォオオ~」



負傷した熊が吠える隙をつき



倒れた美菜萌を引きずる御見内と純や



御見内「噛まれてないよね?」



美菜萌「はい 大丈夫です」



純や「目を撃たれて暴れてる暴れてる」



数十メートル程後退させた3人



御見内「さぁ 立って」



美菜萌を立たせ、3人は身構えた。



御見内「2人共気をつけろ」



大熊は牙を剥き出し、怒りの形相を向けてきた。



「グルルルルゥゥ」



御見内「今ので相当怒りを買ったみたいだ」 



純や「えぇ 完璧ロックオンされましたね」



美菜萌「…」



先にはじめられた御見内等によそ見する村田



村田「やべえ 乱戦か」



エレナ「村田さん!」



エレナの一声で視線を戻した村田



村田「うわ 何だこいつ」



彩羽「うぅぅぅぅぅぅ」



怒りにかられた彩羽の左目、両耳から気色悪い無数の触手が生えていたのだ



また前屈んだ彩羽の背中がぼこぼことコブ状に膨らみだし、大きく盛り上がりをみせていた。



彩羽「どうあってもパパとママを返さない気なのね? それなら彩羽にだって考えがあるし」



そして背中部の衣服が異常に膨らみ、破け、何やら突出された



村田「なんだ… こいつ…」



それはこの世のものとは思えぬグロテスクな腫瘤の塊



そのコブは隆起し心臓のように脈動している。



彩羽「いっつもいっつも彩羽を馬鹿にして も~ホントにプンプンプン」



そしてその怒りに同調するかのように今度はドーム型の腫瘤から4本の脚らしき物が飛び出してきた。



それは長く 細く



彩羽の身体は3メートル近く上昇され



4つの脚が地に着けられた。



変態したさまを目にしたエレナが数歩後ずさる



彩羽「ここにいるお兄さんお姉さん達 それと熊さんも み~んな みんな 全員死んじゃえばいいんだよ」



彩羽がザトウ虫を思わせる細長い節足で歩き出した。



村田も後退、エレナの隣りで口にした。



村田「おいおい これからこんなのを相手にしろってのかよ」



エレナ「…」



一歩また一歩と不気味な足を使って接近する彩羽の片目から黒目が消えている事に気づき



おぞましき姿に変えた彩羽と顔を合わせたエレナが…



彩羽「はあああ~」



口を開けた瞬間



パスパスパスパスパスパスパス



いきなり銃撃を行った。



それに続き村田も



フルオートで連射する2人、エレナサイドも戦闘がはじまった。



「ゴオォォォ~」



片目を失った猛獣が牙を剥き



圧倒的体格差と突進のプレッシャーを前にすかさず3人はバラけた



美菜萌と純やは左方に御見内は右方へと逃れるが今度は御見内に目をつけた大熊



襲いかかってきた。



後退しながら拳銃サクラを向ける御見内



その頭上から熊の手が叩きつけられる



御見内は鋭い鉤爪の鉄槌をバックステップでかわした。



一発貰えばお陀仏必至な重い一打をヒラリとかわし、側面に周り込もうとするや続け様に振るわれてきた鉤爪攻撃



両手でブンブン振り回され、御見内はシフトウェイトでその攻撃をギリギリにかわすのだが…



乱れたポジショニングに一瞬足を滑らせた。



チッ…



その転びそうなわずかな隙を突かれ



大熊が両手を伸ばし、御見内を捕まえにかかった。



バシッ



強烈な両掌のプレス



だが… 手の内に御見内の潰れた姿はない



地を一回転させ避ける姿が熊の目の前に…



御見内は飛び込み前方回転受け身で離れ、間一髪逃れていたのだ



そして受け身から倒れ込む御見内が仰向けな姿勢から拳銃サクラを向けるや、既に接近する大熊が大口を開けていた。



犬歯剥き出しな巨大な口が御見内の瞳に映り、食らいつこうとする大熊に向け



引き金をひこうとした時だ



大熊の側面から不意に現れた美菜萌



素早き突きが打ち込まれた。



ボスッ



熊のノズル部に打ち込まれた木刀に足が止まり、熊の視線が美菜萌にズラされるや



連発で鼻に打ち込まれた。



ドカッ



その打撃で熊が少しよろけた。



今まで幾ら銃弾を浴びてもビクともしなかった猛獣がこの一撃でたじろぎをみせたのだ



弱点の1つでもある鼻にダイレクトな打撃が効いている



美菜萌はまたとないチャンスにもう片方の目を狙った目潰し攻撃の突きを打ち込もうとした時だ



口が開けられ、思いもよらぬノーモーションからの動作で美菜萌の頭に食らいついてきた。



ガシッ



だが… 咄嗟に木刀を盾に受け止めた美菜萌



血走るまなこと目が合う



美菜萌「くっ」 



牙が木刀に食い込み、動きを止めた熊が美菜萌を凝視する



力比べなど話しにならない…



この状態から動けぬ美菜萌にギロリと向けられた獣の目



息を呑んだ時



顎に力が入れられ、木刀に亀裂



そして



バキッ



一気に木刀が噛み砕かれた。

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