第224話 髑髏

スキャットマン「1つしか持たぬ命 いつ何とき 死の災いに直面するとも分からぬ 言わばそれを回避する為の保険として生前より我が身自身に術式の儀を執り行っていた」



チコ「つまり あんたはゾンビって事ね」



スキャットマン「屍人… そう呼ぶならそうかも知れぬ… しかし自然界の干渉に左右されぬ 己が己自身にかけた禁術… 人肉を欲するだけの醜い肉人形とは異なる そなたに殺められる以前の記憶も残り、何も変わらぬ身、これは黄泉より脱却した蘇生 つまり生き返ったと言った表現の方がふさわしい」



江藤「おまえ もしかしてその儀式ってやつをする限り…」



スキャットマン「鋭いな… その通り あらかじめその儀を執り行えば私は何度だって甦る事が可能だ」



江藤「何度でも甦るだと? おまえ僧侶って神聖な職業につきながらどこまでもふざけた事を… 仏、神、死や生に対する冒涜だ」



チコ「そうよ 少なからず二度目はないと思いなさい 何故ならもうその髑髏なんとかっていう儀式はあたし達がさせないから」



スキャットマン「フハハハ 笑わせる 指一本動かせぬくせにたわけた事を」



スキャットマンが錫杖を突き立て



スキャットマン「まぁいい 後ろの2体もいつまでも骨格のみでは寒かろう 肉身を口寄せる 大人しく見てるがいい」



そして目を閉じると真言を唱えはじめた。



スキャットマン「ォン カカビ バザラ ウンカリゾワタ ォン カカビ バザラ ウンカリゾワタ…」



チコ「江藤さん」  江藤「何?」



スキャットマン「鎌広野に出(いで)て、人も見ぬ所にて、死人の骨をとり集め、頭より足手 の骨をたがへでつゞけ置きて、砒霜(ひそう) と云(いう)薬を骨に塗り、いちごとはこべとの葉を揉みあはせて後、藤もしは糸なんどにて骨をかゝげて、水にてたびたび洗ひ侍(はべ)りて 頭とて髪の生(は)ゆべき所へ…」



チコ「この金縛り 何とかなりませんか?」



江藤「触手さえ動かせない 無理っぽい」



スキャットマン「さいかいの葉とむくげの葉を灰に焼きてつけ侍(はべ)り。土のうへに畳をしきて、かの骨を伏せて、おもく風もすかぬやうに したゝめて、沈(じん)と香とを焚て、反魂の秘術を行ひ侍り…」



チコ「やっぱり… 大の大人を10人背負ってるくらい重いです」



江藤「同感… 見て」



スキャットマンが言葉を吐くにつれ骸骨に肉体が着いていく



スキャットマン「重陽の日、死陀 林にいたりて数多の髑髏 を集め於(おき)て日々に行して吒枳尼(だきに)の神呪を誦して加持すれば、下におけるが常に上にあがりて見ゆるを取るべ し…」



右手にぶら下げられた石田のしゃれこうべにも肉がとりつき、生首が形成



スキャットマン「…生身の肉の様によく見にくき所なくしたためつくり定むべし 其の上をよき漆にて能々ぬりて  箱の中に 納めおきて、かたらいおける好相の女人と交会して其の和合水を此の髑髏にぬる事百二十度ぬりかさぬべし 毎夜子丑の時には反魂香を焼て其の薫をあつべし」



生首と変化し伸びた髪の毛が鷲掴まれた。



スキャットマン「反魂の真言を誦せん事千返に満つべし。是の如くして数日みなをはりなば髑髏の中に種々相応物並に秘密の符を書て納むべし 是れ等の支度よく 定らば頭の上に曼荼羅をかくべし 曼荼羅の上に金銀薄をおすべし 如前、其の上に又曼荼羅をかくべし 如是、押しかさ ね書き重ぬる事、略分は五重六重、中分は十三重、広分は百二十重なり 曼荼羅を書く事、皆男女冥合の二渧を以てすべし 舌唇には朱をさし、歯には銀薄を押し、眼には絵の具にてわこ わことうつくしく彩色すべし。或は玉を以て入れ眼にす。

 面貌白きものを塗り、べにをつけてみめ良き美女の形の如し。或(あるい)は童子の形の如し 貧相なく、ゑめる顔にして、業なる反魂の儀 成就となりて」



その生首な石田の目が開かれ苦悶な表情が浮かべられ口にされた



石田「に… 逃げて…」



江藤「石田さん」



江藤、チコの目の前で合間と石田が火急的に復元され、元通りな人間の姿にかわった。



チコ「合間!」



また青ざめるチコと目を合わせる合間



合間「お嬢」



スキャットマン「涙ぐましい感動の再会か 仕上げだ 骸界咒 ナウマク サラバタタギヤテイビヤク サラバ ボケイビヤク サラバタタラタ センダンマカロシヤダ ケン ギヤギ ギヤギ サラバビギナン ウンタラタ カンマ」



すると 合間の目つきが強制的に狂気へと変わる



スキャットマン「髑髏還り とどこおり無く終了 クク ある面白い工夫を施してやったぞ」



江藤「何しやがった」



スキャットマンが札を取り付けた掌をチコに向けると



チコの携える腰からひとりでに鬼切羽が外れ、合間の元へと飛んでいった。



それを掴む合間



スキャットマン「こいつらにも理性や記憶は残っている… だが 同時に私の命令に絶対的な操り人形となるよう吹き込んでおいた」



チコ「な…」



スキャットマン「当然そなた等と殺し合いなどしたくないこの下僕共 だがそなた等を殺れと命令を下せば背く事も出来ず襲うしかない そんな言いなりのこやつらとの一戦 興味をそそるな」



江藤「鬼や蛇じゃ飽きたらず、卑怯なマネしやがって」



スキャットマン「卑怯? ハハハハ ゾンビに等しいこやつらが苦悩しそなた等が非情になれるか 互いの葛藤の中殺し合う 見ものだな それ 縛りを解いてやる」



すると 2人の金縛が解除された。



スキャットマン「殺らねば殺られるぞ そしておぬし等…」



地に落ちた89式自動小銃が勝手に石田の元に戻り、キャッチされ身構えはじめた。



狂気な目つきと正常が交互に現れ、苦しみながらも自我で語らう合間がチコに向けメッセージを送った。



合間「お… お嬢… 私は殺し合いなどしとうございません… すぐにでもこの首…切り落と…」



スキャットマン「…そこの少女と蟲付きを殺せ」



スキャットマンから命令が下るや



瞬時に目つきが狂気と化し



鬼切羽が鞘から抜かれた。



合間「へっへへへへ」



石田「ハァ~ ゲハハハァ~」



髪の毛が掴まれた生首があげられ、気色悪い笑い声を発する石田の首



チコ「また合間とやる羽目になるなんて でも」



チコが愛刀赤羽の刃を静かに鞘から抜き出した。



チコ「殺るしかないですね 合間の為にも」



江藤「あぁ 辛いけどこうなったら」



覚悟を決める…



2人も構えをとった



江藤、チコvs合間、石田の2on2バトル開始



ーーーーーーーーーーーーーーーー



海原、七海vs月島



中野の遺体へと乗り移った月島



その月島より凶弾を浴び倒された三ツ葉



還らぬ人となる三ツ葉の死体を眼下に海原と七海は捕らわれ、目の前には今奴の姿が…



イソギンチャク化した腕から細かく、無数の触手が伸ばされ



七海「ヒィ 嫌…」



小銃は完全に覆われ、引きつる七海の腕を這うように侵蝕、首や胸元にまでまとわりつかせた。



また海原の首にも触手が巻きつき、締めつけられた。



海原「うぐっ ヤロー」



無表情ながらも冷酷なまなこで凝視する月島



すると月島は次に海原が握るサブマシンガンに手を伸ばし、ゆっくりと奪いはじめた。



海原がそれを抵抗するや締めつけが強められ、身悶える



海原「くはっ がは」



そして握力が弱まり、造作無くサブマシンガンは奪い取られた。



月島は右手でサブマシンガンを掴むと銃口を額に突きつけ、首を軽くかしげながら覗き込んだ



月島「麻島も死に 赤塚、野々宮もくたばった今 軍の飼い犬も残すは貴様のような雑魚のみとなったな」



海原「がぁ くっ テ… テメェ ぐぅう… ゲホッ」



月島「おまえに1つだけ救いの道を与えてやろう」



七海「…」



海原「…」



月島が1本の触手を伸ばすとクリーチャーの骸をまさぐり出し、ズボンから何やら取り出した。



それはあるケース



そして触手が器用にケースを開き、そこから取り出されたのは1本の注射器



それを海原の目前にちらつかせた。



月島「これが何なのか もう説明は不要だろ」



海原「…」



月島「軍門に下るも等しい身 だが今のおまえに助かる道を1つだけ用意した これをテメェーに打ち込め、クリーチャーとなり そして俺の下僕になれ」



注射器が海原に差し出された。



海原「…」



月島「それを拒めば貴様の頭は撃ち抜かれ 絶命する 命より大事な選択などこの世にないんだ クリーチャーとなって生き長らえさせてやる事に感謝しろ さぁ 少なからず組織に寄り添ったせめてもの情けだ 受け取れ」



首への締めつけが弱められると



海原「ふ…フフフフ 馬鹿も休み休み言えや…」 



月島「…なに?」



海原「何さっきからトンチンカンな事言ってやがるってんだよ」



海原が注射器を奪い取り、床へと叩きつけた。



そして踏み潰した。



海原「クリーチャーになって生き長らえろだと 命より大事な選択などないだと この世には死んだ方がマシだって言葉があんだよ その腐った脳味噌でよ~く覚えておけ 俺とてザクトの端くれだ 死ぬのが怖くて兵士は務まらねぇんだよ」



月島「それがおまえの答えか?」



海原「あぁ 殺るならさっさと殺れよ」



月島がサブマシンガンの銃口を押し付けた。



七海「いや~ やめてぇ~」



海原「殺れえぇ~ 月島ぁぁ~」



すると月島が突然サブマシンガンの銃口を七海へと変えた。



月島「テメェーは死を選んだ 当然おまけでこの女も消されるってのは承知の上だよな」



海原へ視線を向けたまま、銃口は七海の頭部へと照準、月島が狂気の笑みを浮かべる。



月島「テメェーを殺る前にまずこの女の頭をふっとばす かっこつけた言葉に二言はねぇーだろ 文句ねぇーよなぁ」



海原「テメェー 容姿も汚ぇが 中身はもっと汚ぇ~ くされ野郎が」



月島「そうとなれば話しは早い まずは女の頭が弾け飛ぶ姿を目に焼き付けな」



海原「やめろ」



七海「ヒィ や や」



月島「ひゃっは~~」



そして月島がトリガーを引く寸間



「待てぇぇぇい」



背後から一喝がとんできた。



トリガーの引く手が止まり、月島が振り返ると



ぞろぞろ部屋に入り込んできた男達の姿



なんだこいつら…



結界はどうした…



そう 気づけば結界はいつの間にやら解かれていた。



佐田「七海さん」



月島「…」



佐田が駆け出し飛び出すのを手で制した初老の男



代わりに初老が一歩前えと踏み出した。



薊「これはこれは一目で尋常ならざる光景」



宴「なんだなんだあの化け物」



薊「目に入った以上見過ごす訳にはいかん 介入いたします」



海原、七海の危機に刀刃隊到着

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