第211話 光輪

スキャットマン「アミターバ(無限の光)」



そう発した途端 光輪の空間から金剛杵なる法具の数々が現れてきた。



江藤「なっ…」



宝塔杵、五鈷杵、羯磨、鬼首剛杵などの様々な種類の金杵が次元を越え空間から覗かせてきた。



それを目にしたチコ、合間が迎撃態勢で刀を構えた。



チコ「今度はなに… 斬り捨ててやるからかかってこい」



またそれを目にした江藤がふとスキャットマンに目を向けるとスキャットマンの口角が一瞬緩むのを目にした、そして現れた法具に目を向けた時



江藤はハッとさせた。



そしてスキャットマンが光輪から法具を発射させる直前



江藤「避けろ!」



そう叫び、石田の腰に触手を巻きつかせた。



また江藤の掛け声を受けたチコ、合間もハッとさせ、回避行動に移る…



次の瞬間



光輪からミサイルのように金剛杵達が飛び出してきた。



江藤等に向け、それが放たれた。



10発以上もの放たれた法具



チコ「わっ」



江藤、チコ、合間がその場から素早くバラけ、散開した。



すると



ドカァァァ ボカァァ ボォン ドォン



集中攻撃で放たれた金剛杵達が爆発を起こした。



チコ「キャ」



爆風に飛ばされ、ゴロゴロ地を転げながら回避したチコ、すぐに起き上がり、多発した爆発の光景を目にする。



また後方へ回避した合間も…



石田と共に爆発を逃れた江藤の目にも…



今さっきいた場所が爆撃されたのを目にした。



見た目、形は神聖なる法具そのものだが 中身はまさに爆弾かミサイルを思わせる殺傷武器



江藤が再度スキャットマンへ目を向けるやスキャットマンと目が合った。



すると



片手で結んだ印の指先をこちらに向けてきたスキャットマン



スキャットマン「フッ」



光輪からまたも現れた金剛杵のミサイルが一気に放射される



江藤「チッ」



そして10発以上の法具が江藤目掛けて放出された。



駄目だ… 避け切れない…



一斉に独鈷杵のミサイルが向かって来るや石田の腰に巻きつく触手が解かれ、石田もろとも2本の触手が江藤本体をグルグルととぐろ状に覆った。



次の瞬間



ドカァァァ ドォン ボカァァ…



触手の防壁に直撃した10発もの爆発が起きた。



爆風が散り、周囲が煙りに巻かれた。



チコ「江藤さん!」



スキャットマンがひとたび欠字の構えで爆撃を受けた江藤の行く末を確認、煙りが晴れるのを待っていた時だ



煙りの中から伸びてきた1本の触手



その触手がスキャットマンの眉間目掛け猛スピードで伸びてきた。



スキャットマンは眉をピクリと動かし、一直線に伸びてきた触手を視認、御札の貼りついた手のひらを前方にかざした。



すると



手のひらが光のサークルに包まれ、触手はそのまま手のひらの中へと吸い込まれていった。



スキャットマン「そっくりそのまま返してやろう フ ハッ」



そして定印の印相が切られると光のリングが今度は煙りに撒かれた江藤の前へと現れ、その輪から飛び出してきた触手が伸びていった。



だが



煙りが晴れるとその場に江藤の姿は無く、伸ばされた触手も既に本体から切り離されていた。



そのまま落ちゆく触手の残骸



スキャットマン「…」



スキャットマンが行方を探すと



江藤は石田を連れ、チコの元へと移動していた。



石田が降ろされ



隣りに着けた江藤の背中から新たに生えてきた触手を目にしながら口にするチコ



チコ「石田さん大丈夫ですか?」



石田「俺はなんとか」



チコ「良かった 江藤さんは?」



江藤「こいつ等のおかげで俺自身もノンダメージだよ 大丈夫」



そして2人はスキャットマンに目を向けた。



チコ「しかしあれは何?厄介すぎじゃない?」



江藤「あぁ」



チコ「デタラメ過ぎよ… ちょっとどうしようもないんじゃない 」



江藤「輪は全部で12個 あの輪から次元を越えて飛ばしてくる爆弾か… まずはあの輪を処理しない事には」



チコ「処理ったってどうやって? 私達の手に負えないレベルよ あんな怪奇現象どうやって対処すんのよ」



江藤「あの光の輪の真ん中には御札がある あれを切るか引っ剥がせば消えると思わない?」



チコ「そんな単純なのかな… まぁ仮にそうだとしても1つ2つやったところで意味ないよ その間にいっぱいかましてくるんだから」



江藤「確かにそうだね やるなら一気にやらないと じゃあそれをチコちゃんと合間さんにやって貰おうかな」



チコ「あたし達に…?」



江藤「うん ちょっと作戦を思いついた……」



そして打開の算段が立てられ、打ち合わせる2人



そして話しを終えたチコが江藤から離れ、歩きはじめた。



スキャットマンに気を配りながら移動



それをスキャットマンは黙視で伺った。



スキャットマン「…」



そのまま合間の元へと近寄り、なにやらヒソヒソ耳打ちするチコを目に



何を企ててるか知らないが… どんな小細工だろうとこの無限の光の前では無駄に終わるだけよ…



各光円から法具が顔を覗かせ、いつでも発射可能な態勢を取ったスキャットマン



チコ「ゴニョゴニョゴニョ…って訳 分かった?」



合間「ハッ 承知しました しかし上手くいきますかな…」



チコ「さぁ でも試すしか打開策は無いから 今はやるしかないでしょ」



合間「うむ いかにもですな かしこまりました 全力で挑むまで」



チコが軽く頷き合図を送るとそれを確認した江藤がいきなり突進開始



江藤「ぶっ殺してやる」



突撃を図った。



スキャットマン「フッ 愚か」



突っ込んで来る江藤目掛け、ただちに法具のミサイル達が一斉発射される



いまだ…



自分に向けられ、発射されたこのタイミングで…



それらを見計らうや2本の触手が地を着けた。



そして江藤本体を思いっきり跳ね上げた。



ドカァァァ ドォン ドン ドン



反動で舞い上がり、大ジャンプした江藤は爆撃を回避



ドカァァァ ドォン



次弾発射までのこのわずかな隙に…



チャンスだよ… いけぇ~~



今度はこっちの番と触手の攻撃を繰り出そうとした刹那



スキャットマン「阿呆め」



スキャットマンが12の光輪を上空に傾け、即座に斉射してきた。



江藤「ゲッ 早 マジか?」



12個の金剛杵弾がまたも一斉発射



浮上中な江藤に…



回避困難な状態の江藤に放たれた集中砲火な爆撃



そんな江藤の脳内に声が響いてきた。



ジジイ… 邦光の保護だ 急げ…



言わずとも委細承知しておりますよ…



アタック態勢から急遽ガードへと転ずる2本の触手が江藤のカバーに入った。



自我を持った生き物達が江藤の壁となり盾となりて重ねた防御



そして…



広げますよ…



うむ… 



2本の触手が膨張し円形に膨らませた。



その直後 ドォン ドカァァァ ドォォォオ



集中砲火を受け、爆発が起きる



煙りに撒かれた視界に江藤の影が落地



スキャットマンが目を凝らし、様子を伺うや、その目を見開かせた。



逃がさんぞ…



この光の輪から吐かれし法具は永遠に尽きる事は無い…



まさに無限…



たっぷりくれてやるわ…



スキャットマンが煙りの先にうっすら見えた影目掛け、再び追い打ちの斉射を行った。



12個の法具弾が煙の中へ消え…



ドカァァァン ボォン  ドォン ドォン



連続で爆発音を轟かせた。



巻き上がる爆煙が周囲に吐き出され、スキャットマンをも包み込む



フフフ… 今のは手応えありだ… 無事である筈がないが… 念の為爆死した死に様を確認しておこう…



煙りの中 スキャットマンは目を閉ざした。



それから密教諸尊印の印契を結び念じた。



透視を行い、煙りの中にいるだろう江藤の状態を探る為だ



だが その直後 パッと目を開け、目の色を変えたスキャットマン…



馬鹿な……



透視で目にした江藤は触手のシールドに守られピンピンしていたのだ



あれ程の爆撃を受け、無傷だと…



またズタボロになった触手の尾が切り離され、新たに生えて来る光景を透視



スキャットマンは一層顔色を変えた。



我が術界にいるにも関わらず…



減力結界も効かず…



操作も無効にする…



あやつに巣くう蟲の影響か…



何度も生え代わる厄介な触手… 厄介な超人め… 早急にあやつから息の根を止める必要がある…



休み無く無限に吐き出してくれる…



スキャットマンが再度、無限の光から金剛杵弾等を吐き出そうとしたその時だ



透視映像の中 いきなり江藤がこちらへ振り向き、目を合わせてきた。



スキャットマン「なっ」



透視してる事など知る由も無い、ましてや見えてる筈など無い江藤がまるで肉眼で目にしてるかのようにハッキリと目を合わせてきた。



これにはおののき、一瞬たじろいだスキャットマン



すると 次の瞬間



煙の中から2本の触手が飛んできた。



そして錫杖とスキャットマンの腰へと巻きつかせた。



へへ… やっと捕まえたぜ…



スキャットマン「なに!」



江藤「いまだ! ゴー」



江藤が大声で叫んだ。



その掛け声で飛び出してきた2つの人影



スキャットマンの背後から刀を構え、颯爽と飛び出してきたのはチコと合間だった。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



創造結界内



海原、三ツ葉、中野、七海vs月島



中野の後ろに隠れた七海



月島が取り出した物に反応し中野が銃器を構えた。



1本の注射器、それをまじまじと眺める月島に海原、三ツ葉も銃口を向けた。



三ツ葉「4対1だ 勝ち目などありませんよ 素直に降伏するんです月島」



月島「降伏だと? 何を寝ぼけた事言ってるんだ」



三ツ葉「寝ぼけてるのはどっちだ  国家を裏切り、本国を占領するなど テロリズムなんぞに染まった愚か者め」



月島「あ~ 眠ぃ~説教はたくさんだぜ三ツ葉」



小指で耳をほじくる月島



海原「おい その持ってる物を大人しく捨てやがれ」



月島「フッ こいつが何なのか分かってるか なら話しが早い」



海原「いいから捨てろ 虫を取り込んでパワーアップを図ろとしてるならそいつはろくでもない欠陥品だ 悪い事は言わねえ やめとけよ そいつを使用して既に2人自滅してる」



月島「あぁ~ 知ってるとも スペツナズのタミルトンって奴と… もう1人は明神ってやつだったよな」



海原「完全にものにするなんて事は不可能なんだよ どうせ自我を喰われて終わるのがオチだ それを分かった上で使用したいと言うなら テメェーはゾンビになりたいだけの馬鹿だ それならいっそ俺がゾンビや感染者の群れの中にブン投げてやるよ… それともなにか… そいつだけは特別とでもいいたいか?」



月島「…」



三ツ葉「そうです それをただちに捨て 投降しろ 月島」



月島は注射器を目にしながら口にした。



月島「なら…奪ってみるか?」



そして拳銃を取り出し身構えた。



海原、三ツ葉、中野の三者がトリガーに指を引っ掛ける。



三ツ葉「私と同じオフェンシブタイプじゃない 戦闘は不得意な筈です 何度も言うがこの人数相手に貴様に勝てる見込みは… ゼロだ」



月島「そうかい… フッ」



すると



月島がいきなり己の首筋に注射器を突き刺した。



三ツ葉「なっ!」



そしてポンプが押され、中身が体内へと注入された。



次の瞬間



パスパスパスパスパスパスパスパス



海原が引き金をひき、フルオートされた銃弾が月島の顔面から胸部にかけて蜂の巣にした。



瞬く間に顔面修羅場な血塗れで穴だらけにされた月島はその場で倒された。



一瞬で勝負は決められた…



海原「ごめん 三ツ葉さん こいつを生かして連行出来なかった」



三ツ葉「いえ しょうがありません 当然の報いです しかしなんて馬鹿な行為を… 月島…」



七海「死んだの?」



中野「うん あんな血を流してるんだ 当然死んだよ」



七海「そう… 随分とあっさりしてるのね」



中野がその言葉に振り返り、七海の顔を目にしたのち月島の死体を見つめた。



床にはおびただしい血の池が広がり、哀れな末路で死に絶えた月島の姿



誰もが早期決着されたのだと思われた



次の瞬間



月島「ハハハハハハ」



突如月島の笑い声があげられた。



月島「あ~ ハハハハハハ ハァ~ ハハハハハハ」



高らかに爆笑をあげるがどこか籠もった声



月島は仰向けからゆっくりと上半身を起き上がらせた。



そしてムクッと月島がその顔をあげた時



それを目視した時 一同驚愕した。



七海「ヒャ」



海原「うっ」



中野の背中に隠れる七海から悲鳴ともとれる声が喉から漏れ



思わず一歩後退させた海原



そう… 月島の顔面は血塗れながらもケロイド化した表皮に覆われており、目、鼻、口、耳などの突起物や窪みが無くなっていた。



パーツの見当たらない顔



のっぺらぼうな顔をしていた。



月島「ハハハハハハ」



マスクでも被ったかのようにケロイドの表皮下からその笑い声は漏れているのだ



またのっぺらぼうな顔部のあちこちでドクドクと脈動がはじまり、目、鼻などのパーツの代わりに腫瘍らしきものが突起してきた。



上体を起き上がらせた月島はよっこいしょと言わんばかりに立ち上がる



それを目にした三ツ葉もハンドガンを構えながら後退



中野もつられて数歩下がった。



月島「ハハハハハハ ハハハハハハ」



いつまでも笑い続ける月島が二足で立ち上がり、直立して静止



その間 みるみるデカくなっていく腫瘍は人のゲンコツ程まで成長させた。



すると



コブのように大きく突起したケロイド状の腫瘍先端部がいきなり裂け出し、謎の分泌液を排出、撒き散らされた。



その液体が地面に降り注がれるや地から湯気が生じ微かに溶けていく



またまるでイソギンチャクのようにデカく変化した腫瘍も見られ、そこから吐き出された液体が同様にジュっと音をたて地面を溶解させた。



超短時間で見る影もなく変貌を遂げた月島



月島「ハッハハハハハ」



三ツ葉「なんて醜い姿なんですか…」



海原「あぁ 誰よりも早く… 誰よりもあっさりと呑み込まれやがった 三ツ葉さん 復活したはいいが あれじゃあ生け捕りも連行も無理だ」



三ツ葉「えぇ ここまで醜いクリーチャーになってしまっては… ですが逮捕が適わぬなら元同僚であったよしみ… いくら愚か者であっても 少なからず仲間であったあいつを… 責任を持ってあの世へ葬る必要があります これが私の務めかと」



海原「えぇ 立派です しかし何て化け物になりやがった」



月島「ハハハハハハハハハハハハハッハハハハハハハハハハハ」



ブシュ ブシュ プシュ~



イソギンチャク型の腫瘍は身体全体へと広がり、そこから水鉄砲のように吐き出される得体の知れない液体がそこら中の床を溶かしていた。



そして月島の両腕も変化



イソギンチャクのようにみるみる形が変わっていき



指は失われ、かわりに無数の触手やヒラヒラなヒダが生え、ゆらゆらと揺らしだす



中野「うぅ…」



海原「距離をとれ この化け物 強力な酸性を帯びてるぞ」



こちらサイドも完全クリーチャー化した月島とのバトルがはじまる



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る