第195話 攻略

今から10分程前… エレナ達がこの場から消えた頃



純やvsチャッキー



よし… みんな行った…



無事通過を見送った純やが一安心したつかの間



「うぅぅうう」 「うううぅうう」



地中から蘇ったアンデッド共がすぐ背後まで迫り、襲いかかろうとしてきた。



ドカッ



チャッキーの動きを封じていたスタンバットを引き抜き、ノールックからアンデッドの頭部に打撃した純や



またすかさずチャッキーから離れ、アンデッドの背後へと回り込んだ純やがバッティングフォームで構え



バコン



テイクバットで頭部を捉え、そのままスイングした。



簡単に取れた半腐の生首が打球の如くチャッキーに飛翔、兜に直撃された。



まだ身体の痺れるチャッキーがぐらつくと今度は背後から迫ってきた3体のアンデッドに背中や肩、腕にしがみつかれ、噛みつかれた。



ガチン ガチ ガチ



だが 鎧に噛みついた歯は通る筈無く歯が欠けると同時に振り払われる



ブン



アンデッド共はハルバードで3体同時に両断された。



チャッキー「やってくれましたね でもそれで出し抜いたつもりですか? 勝手に通すなんて許しません」



チャッキーが笛を手に取るや



純や「残念だったな ほれ しっかり周りを見てみろ」



蘇ったアンデッド等が町民にも襲いかかり今や混戦状態となっていた。



チャッキー「チェ おのれ よくもよくもルールを破って」



純や「遊んでる時間はねぇ ちゃっちゃと決着つけようぜ」



チャッキー「無敗の剣闘士である僕に勝てる見込みがあるなんておも…」



純や「おい 言っとくがこのご時世勝負に負ければ死に直結するそんな時代なんだ すなわち生き残ってる俺もいまだ無敗なんだよ ちなみにおまえは今まで自分より弱い相手としかバトってなかったんだろ 軽く大敗を喫してやるからかかって来な」



チャッキー「そんな小細工のバットがあるからっていい気になって … おまえから来い その頭をぶっ潰…」



踏み込んでいた純や



グリップを握り、既に振りかぶっていた。



スイングの姿勢で一気に間合いを詰め、兜目掛け、振り抜きの一打をかます純やを目にしたチャッキーが2本のハルバードで防御の姿勢を取った。



そんな力まかせなただの大振り…



また接触さして電流攻撃でもしようってんでしょ…



そんなの二度も通用すると思うなよ…



兜を一本の斧槍でガードし、もう一本の斧槍でブロックと同時に串刺しを狙うチャッキーを目にした純やが左足を踏み込むやそのまま振り抜いた。



純や「フン」



だが それは水平では無く下部を狙った斜線の軌道で



純やはガラ空きな脚部を見ていた。



バコォ



そして



チャッキーの無防備かつ露出したすねにバットを直撃



チャッキー「がぁ」



スネの骨がバラバラに砕ける感触を手に伝え、サイドを取った純や



バコォ



続けざま 手首に打ち当てられハルバードを落とした。



純や「ナイスヒット」



チャッキー「ぐあ のれぇ~」



チャッキーが兜の下から苦悶の声をあげ、もう1本のハルバードを振るおうと振り向くや



ガン



兜がフルスイングされた。



剛力の1発をモロに受け



チャッキーの足元が泳ぎ、フラつく



チャッキー「かっ」



ドスン



そして音をたて倒れた。



こんな奴に…



この僕が地面に背中をつけるなんて…



チャッキーが兜のバイザーを上げると金属バットのヘッドが押し当てられグリグリされた。



純や「どうだ? 参ったか?俺の完全勝利っしょ」



チャッキー「うぐぐ 何言ってるまだ…」



バットの先端でグリグリ力を込めこすられる



チャッキー「わっ やめ…」



純や「勝負はついた こいつは決闘なんだろ ならおまえのその口から降参って聞かないと終わらないし」



グリグリ擦り当てていく



チャッキー「冗談じゃない 僕はグラディエーターなんですから 降参なんて口が裂けても言えるものか」



純や「あっそ ならもういいや」



擦り当てを止めグリップのボタンに指を当てた純や



純や「おまえは俺の仲間を殺ったんだ このまま何も無く素通りは出来ない まぁ 死んでもしゃーないな 運良ければ気絶で済む」



純やが装置の電圧を上げ



チャッキー「何をする」



ビビビビビ



バットから電流が流された。



チャッキー「あがががが」



鎧からでも分かる背中を反らせたチャッキーは口から泡を吹き出し、白眼を剥くや気を失った。



プスプスプス



鎧や兜の合間から微かな煙りが立ち上り



気を失ったチャッキー



決闘は純やの圧勝で終わった。



バットを肩に担ぎ、辺りを見渡すやそこら中で町民とゾンビの合戦が繰り広げられている。



純やは前方にそびえる屋敷に目を向け



それから駆け出した。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



同刻 麻島班 廃棄物処理場(サタナキア)



月島の挑発的アナウンスを受け、正々堂々真っ向からサタナキアを目指す麻島班一行



先陣を切る2トップは江藤とチコの2人



チコは余裕綽々な様子で突き進み、江藤は辺りに目を配りながら進んでいた。



左右の木に設置された防犯カメラの数々を目にする江藤



どれもしっかり作動している…



つまり敵はしっかり俺達を監視してる訳だ…



何を企んでいるんだか…



それにそれとは別に…



また次鋒に位置する麻島、海原、中野、南、三ツ葉



麻島、海原も左右の監視カメラにチラチラ視線を送っていた。



海原「このまま奴の言う通り進んでよいものか…」



麻島「大丈夫だ あの口ぶりからして… 奴は直接対決を望んでるんだろ」



海原「御見内 あと早織ちゃんでしたっけ 2人が俺達をおびき寄せる為の餌だとしたら奴等はきっと何かを仕掛けてきます 施設内の潜入は慎重に行わないと」



麻島「そうだな…」



ふと麻島が硬い表情の三ツ葉を目にした。



江藤とチコが先頭を歩んでいるや



チコが左右の森を眺めながらふと口にした。



チコ「ねぇ~ 江藤さん 感じてます? さっきからジロジロ視線を感じるんだけど気配が無いんだよね」



江藤「うん… チコちゃんも気づいたか」



チコ「どうゆう事なんだろ… これ」



ーーーーーーーーーーーーーーーー



サタナキア ある一室



あぐらで座り込み、金剛合掌で印を結ぶ、スキャットマンこと空羅



そのスキャットマンが目を開いた。



よもや 我が千里眼に気づくとは…



前列の2人… それと最後尾の図体のデカい男の 3人…



手間のかかりそうなあなどれん輩が紛れておる…



今の内 我が結界の効力を強めておこう…



スキャットマン「アボキャベエロシャノナカモ ダラマニハンドモジンバラハリタヤオン オンバザラ ダラマ キリク ソワカ オンバザラ ダトバン」



金剛方印なる印契を結び真言の呪句を唱えはじめた空羅



金剛地結界契印呪法…




スキャットマン「オン キリキリ バサラ バサリ ブリツ マンダマンダ ウンパツタ オンキリ インユワ ソワカ オンキリ ナウマク イン ソバカ」



それと少々あやつらの力を削ぎ落としておかねば…



怨悪魔光来臨秘呪…



スキャットマン「オン ヒツチリ カラロ ロバウンケイ ソバカ オン ヒツチリ カラロ ロバウンケイ ソバカ うん はっ はっ」



数種の印を切ったスキャットマンがおもむろに立ち上がり、錫杖を手に取るや部屋をあとにした。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



同刻 屋敷内



思わぬ熊の襲撃から逃れ、移動するエレナ達



舞踏会でも開けそうな煌びやかでゴージャスな空間に何処までも続く死体の数々



食いちぎられ、腸をぶちまける惨殺遺体が延々と続く宮殿区間を7名が進んでいた。



食いちぎられ血みどろな上半身のみで息絶える町民を目にしたエレナ



そんな状態が廊下の先までずっと続いているのだ



300… いやもっとかな…



この悲惨な光景からしてこの屋敷にいた大半の黒フードや町民は熊によって殺された…



なら肝心な山吹は何処にいる? 



この屋敷内のどこかに隠れているのか…? 



もしかして自分だけそそくさ逃げたとか? 



なら道は…?



御見内の安否が気になるエレナは動揺した。



あの熊が徘徊してる以上



こんな広い屋敷を片っ端から探してる時間なんてないよ…



榊原「スマン もう大丈夫だ 1人で歩ける」



両肩を借りる榊原がそう口にした。



一行がひたすら進んで行くと目の前に高さ4メートルはあるだろうドデカい扉が見えてきた。



西洋の古城をモチーフにした装飾が施された豪華で立派な扉



その扉に近づくと扉には大きな引っ掻き傷が刻まれ、体当たりされた形跡、ブチ破られ半開きしていた。



村田「見ろ」



村田が扉に付着したある物を摘まんだ



それは熊の物と思われる体毛…



それと



扉の先には血痕による大きな獣の足跡がつけられ、続いていた。



山口「気をつけろ この先巨大熊がウロチョロしてるかもしれん」



半開きな扉からソッと外に出た。



壁にはレリーフの壁画や絵画の美術品などが飾られたこれまた大きなホールに出たエレナ達



ジャリ ジャリ



床に散らばる陶器らしき破片を踏みしめた一行は見渡した。



ホール内は荒れている



正面にはメイン玄関、辺りにいくつもの扉が見え、また2階に続く大きな階段が見られた。



ホール内のこの荒れっぷり… 熊が通過した跡なのか…?



倒された銅像やら壊れた骨董品などが散乱、その散らばる破片の中、くっきりつけられた熊の足跡は階段へと続いていた。



村田が2階に銃口を向け、山口と共にその足跡を眺めた。



村田「大熊のですね」



山口「あぁ これじゃあ2階には行けない…」



村田「えぇ」



辺りを見渡す美菜萌



美菜萌「御見内さんと早織ちゃんを探さないと」



佐田「でも どうやって?こんなに広いんじゃ探しようがない 何処にいるか聞き出そうにも敵は全滅させられてるし」



美菜萌「みんなで手分けして一部屋づつ探しましょう」



佐田「美菜ちゃん またここを戻るのかい? 命拾いしたのにわざわざ戻るなんて食い殺されに行くようなもんだぜ」



美菜萌「…なら2階から…」



山口「2階にもあの猛獣がいる」



美菜萌「…」



美菜萌は言葉を詰まらせた。



佐田「獰猛でバカデカい熊が屋敷内を徘徊してる ここは一旦引いて…」



美菜萌「駄目です 諦めるなんて絶対 早く探しましょ」



佐田「いや 諦めるんじゃなくて ここは一旦部隊を引いてだね…」



エレナもホール内を見渡しているとエレナの目にあるものが止まった。



ん…?



美菜萌「山口さん 村田さん このまま捜索の続行をお願いします」



山口と村田が顔を見合わせ美菜萌を目にした。



佐田「美菜ちゃん 落ち着いて」



美菜萌「私は至って冷静です」



佐田「一旦この屋敷を離れ、熊が去るのを確認してからでも遅くは無い それから捜索すればいいでしょ」



エレナが近づき陶器の残骸をどけるとそこには破片に紛れ、食いちぎられただろう両脚と引きずられた血の跡を目にした。



これ…



エレナがその痕跡を目で追うとそれはある一室まで続いている。



エレナは恐る恐るそれを辿った。



美菜萌と佐田が言い合う中



その痕跡を辿り、半開きな扉から中に入っていった。



室内は壺や皿などの陶器、中世の絵画などの美術品が並べられた一室



価値は分からぬがいかにも高価そうな古美術品の数々が展示された一室だ



エレナは部屋を進み、血痕の道標を目で追うと奥には既に息絶えた黒フードの死体が見られた。



壁にべっとり血の手形をいくつもつけ、何かしようとした最中、そのまま力尽きた様子の死体



エレナは奥へと進み、壁を見上げた。



一面彫刻されたレリーフの壁



羽の生えた子供達が戯れる姿が描かれた壁画



天使…



エレナはレリーフを見上げながらおもむろにその壁に触れた



その時だ



手に微かな風が感じられた。



風…?



エレナは目を瞑り、再び壁に手をつけるとまた感じられた



吹き抜ける隙間風…



エレナは今度壁を軽くノックした。



コンコン



ノック音が響く



奥は空洞…



エレナは黒フードの死体を見下ろし、直感めいた。



隠し扉ね…



美菜萌「青木さんや臼井さん、純やさんとも合流しないといけません 今 部隊は引けません」



佐田「いつもクールな美菜ちゃんらしくない 何をそんなに焦ってるんだ?」



美菜萌「…」



すると



エレナ「誰か来てぇぇ~」



一室からエレナの呼び声がし、美菜萌と佐田、村田が部屋へと駆け寄った。



部屋に入るや壁を手探りするエレナ



村田「どうした?」



エレナ「見つけた この壁の先に何かある 空洞なの…」



佐田「もしかして隠し扉」



村田「隠し扉?」



3人も壁に近寄り、触れ、ノックした。



コンコン



村田「隠し扉か… 確かに奥になんかあるな」



美菜萌「よくこんなのに気づきましたね」



エレナ「そこの黒フードの死体に違和感を感じてたまたま調べたのよ」



村田「なるほど 偶然の発見でビンゴか」



エレナ「でも これ… 押しても引いても開かない」



美菜萌が辺りを見ながら



美菜萌「暗証コードじゃなさそうですね」



村田「鍵穴も無いな」



押しても、引いても駄目 鍵で開けるタイプでも無さそう…



エレナは壁に彫刻された天使の子供を指で触れていった。



描かれているのは羽の生えた幼児くらいの天使6人が遊ぶ姿



エレナは浮き彫りの彫刻を指でなぞり、調べていった。



この絵にカラクリ的な細工がある筈…



そう睨んだエレナが一体一体指で触れ、調べているとある1体の天使が持つ弓に矢が無い事に気づいた。



そこには矢を差し込む窪みらしきものがある



エレナ「ここよ ここに嵌め込む箇所がある 矢だ」



矢はどこ…



村田「矢か」



美菜萌、村田、佐田も一緒に調べた。



すると



佐田「あった これじゃない?」



レリーフ下部に描かれた天使が弓矢を握っていた。



黒フードの血糊がベッタリこびりつくその弓矢をエレナが手に取ると



それは外れた



そしてそれを弓へと嵌め込んだ



カチャ



何やら外れる音が鳴った。



村田「よし 開いた」



そしてエレナは壁を押した。



だが壁はビクともせず、今度は引いてみた。



だが これもビクともせず動かない



エレナ「駄目」




村田「嘘だろ 何かカチャって音がしたんだ 開くだろ」



村田、美菜萌、佐田も協力して壁を動かそうとするのだが



やはり微動だにしない壁



村田「マジかよ 何で開かない 開けゴマ的な呪文でも必要なのか?」



エレナがまた全体を見渡した。



そしてふいに矢に手を伸ばし、取り外し、再び元の位置に戻してみた。



すると



カチャ ガシャー



突然何やらタガの外れる音が鳴り



ガガガガガガ



自動的に壁がスライド



いきなり壁が開きだした。



佐田「何したの」



エレナ「弓矢の鍵を元の場所に戻してみただけよ」



ガガガガガガ



レリーフの壁は勝手に開き、全開された。



エレナ達の前に現れた隠し通路



LEDの電球が発光し通路は明るく



その先には下りの階段が見られた。



そして通路から何かが燃えた臭いが漂ってきた。



エレナ「とにかくビンゴのようね」



3人が頷き



隠し通路へ足を踏み入れると



山口「何事だ?」



音に驚いた山口が入口に姿を現した。



次の瞬間



ドスゥーン



何かが2階から落下、大きな音を響かせた。



榊原「熊だぁ~ 2階から飛び降りてきやがった」



榊原の大声が聞こえてきた。

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