第191話 一騎

89式小銃、MPサブマシンガン



2種類の銃器を手にした面々が麻島に視線を向けている。



七海がヘルメットを装着し



美菜萌が取り出したキャップ帽を被った。



麻島「以上 それでは私の班は前のヘリへマツさんの班は後方のヘリへと搭乗して下さい」



人集りから少し離れた位置で立つ青木が歩き出した。



麻島「さぁ 出発だ」



その掛け声で皆が動き出し、それぞれのヘリへと乗り込んでいった。



純や「さぁ~ やってやろうぜ」



プロペラは高速で回り続け、いつでも離陸可能な操縦席に地図を手にした麻島がパイロットと何やら打ち合わせする中



臼井が乗り込み、山口も機内へと入っていった。



互いの拳をちょこんと当てたコンビ 純やと江藤もそれぞれ別れ、ヘリへと乗り込んでいく



また軽く手を振り、別れた七海と美菜萌もヘリに搭乗



松葉杖を付き、皆の乗り込む様子を見守る半田



南や石田も乗り込み



三ツ葉が小走りでヘリに乗り込むや、搭乗口前に立つマツが周囲を確認、バックハッチドアが閉められた。



そして操縦席に向け、親指を立てると



バタバタバタバタバタバタ



大型輸送ヘリがゆっくり浮上、屋上から飛び立った。



1機目が発進



また機内に乗り込む寸前



マツ「行ってくる 留守番頼むぞ」



半田「すいません お役にたてず お願いします」



マツ「うむ」



マツが軽く頷き、乗り込んだ



「ポジティブクライム ヘディング240へ移送 発進準備完了 離陸する」



バタバタバタバタバタバタバタバタ



垂直で機体がゆっくり上昇していくさなか



ふと窓から眺めるエレナの目に屋上に現れ、走ってくるクリスが見えた。



「ワン ワン ワン」



クリス…



上昇するヘリに吠えるクリスが半田へと寄り添い共に見上げていた。



見送りに来てくれたんだ…



いい子で待ってるんだよ…



遠ざかっていく機内から屋上を目にした。



いよいよ出征されたエレナ



エレナの胸の内でたぎる思い



やるべき事は2つ



待ってて道… 今行く…



1つ目は御見内を取り戻す事…



そしてもう1つは…



私をここまで怒らせた事後悔させてやるわ…



もう謝っても許さない…



あいつらだけはもうただじゃ済まさないんだから… 



特に山吹… 首洗って待ってろ…



敵を壊滅させる事…



敵の本拠地へと乗り込む一同



御見内奪還と敵の壊滅に闘志を燃やすエレナ達が動き出した。



また一方… 



ーーーーーーーーーーーーーーーー



とある森の中



ガサガサガサガサ



バキバキ ガサァ~~



枝が激しく揺れ、巨大な影が通過と共に樹木はへし折れ、薙ぎ倒された。



丘の上に現れたのは1頭の超巨大なツキノワ熊 



神獣と呼ばれし森の覇者 ミナグロだ



また…



バキバキ ベキ



隣りにも負けず劣らずなもう1頭の巨大熊が現れ、丘の上から数キロ先にある建物を見下ろしていた。



その建物とは山吹の邸宅…



すると



「ゴオオォォオオ~」



ミナグロが咆哮をあげた。



「ゴオオォォオォ~~」



連られてもう1頭も



獣王の雄叫びが森全域に響き渡るや



2頭は森の中へと消えて行った。



いよいよ人食い熊も参戦



牙が向けられ、激突する



ーーーーーーーーーーーーーーーー



同時刻  場所不明



ギシギシギシギシ



いかにも安物そうなシングルタイプのパイプベッド



血とシミだらけな くたびれたマットレスに



冴子「あぁ~~ ハァ ハァ ン ン」



ギシギシギシギシ



今にも壊れそうなパイプが軋み音となり共に乱れた吐息



ベッドには御見内が寝かされていた。



手足は縛られておらず、普通に横たわる御見内の瞳はうっすら開いているが虚ろ、意識も朦朧とした様子だ



そんな御見内の裸体に跨がっているのは冴子



白衣から覗く胸を上下に揺らし



騎乗位で激しく腰を振り、性行為がおこなわれていた。



冴子「うん ん はぁ あん」



ギシギシギシギシ



乱れまくる髪を掻き上げ、自分の指をしゃぶりながら大人しく寝かされる御見内を見下ろす冴子



冴子が壁に設置された丸時計に目を向けた



そろそろ切れる時間ね…



そして腰を振りつつ白衣のポケットから何やら丸い錠剤を取り出し口に含んだ



そしてそのままもたれ込むや顔を近づけ口にした。



冴子「はい あ~んして」



御見内は虚無な瞳で言われるがままに口を開き



口移しで錠剤が流し込まれた。



冴子「はい 飲んで」



怪しげな薬を飲み込んだ御見内



耳元で冴子が囁いた



冴子「従順でいい子ね 痛い思いするのはもう少しだけあとにしてあげるから いっぱい楽しもうね 御見内くん…」



ギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシ



御見内の髪をかき乱し、再び激しい腰つきで動かしながら、ディープキスする冴子の後ろのテーブルには牛刀からノコギリ、ナイフ、中華包丁など切断用具がズラリと並べられていた。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



CHー47JLR機内 マツ班



バタバタバタバタバタバタ



まばらな民家、広がる田畑上空を飛行中の輸送ヘリ内



両脇に13名が立ち、固定用のベルトを装着、揺れに備えている。



マツが天井に両手を支えながら皆に口にした。



マツ「ヘリでの移動だ 到着まであと7~8分とかからない ただし接近すればこのプロペラ音で敵に気づかれる もう既に気づかれてかもしれないな… もしかしたらロケット砲の攻撃を受ける可能性がある 従って着陸は前回同様現場より少し離れた箇所に着ける」



ヘリが田畑から広大な森林上空へと入った。



マツ「半分近くが初めての者なので念押しで言っておきたい事が1つある この作戦は想像以上に厳しい 究極の課題と言うべきか… それは奴等の大半が町民なんだ マインドコントロールで廃人同然にさせられ操られてるだけの一般人なんだ つまり洗脳が解ければ普通の善良な人に戻る可能性がある人間なんだ 故に出来るだけ殺(あや)める事無く無力化しなければならない」



純や「え?」



またかよ…



黙っていた青木が口に出そうとした時



青木「またそれ いい加減その考え…」



山口「そんな話しは聞いてないぞ 殺さずに敵を無力化? どうやってやれと?」



マツ「これから突入すれば武器を持った血眼の群勢が襲いかかって来る 当然多勢相手に無傷での無力化などは到底不可能だ 私達はこの銃で腕や肩、脚などを狙い、致命にならぬ程度に手傷を負わせ動きを不能にするようやってきた これが今まで行ってきた私達のやり方だ」



純や「数も分からない上に手加減か… ハイレベルだな 江藤と刀刃隊に有利な条件じゃん」



榊原「俺達にもそうしろと?」



ヘリの機体が斜めに傾けられ、進路を変えはじめた。



ガタガタガガタ



機内が激しく揺れる



マツ「あぁ そうゆう事だ」



鈴木「つまり射撃の腕に自信がなければ話しにならん訳か… だが現場の状況も敵戦力も分からない以上 判断に躊躇すればこちらの身が危ない 全員が全員とはいきませんよ 状況によっては操られた民とて殺さなくてはいけない それはよろしいな?」



マツ「はい っとは言い難いが 感染者、ゾンビじゃない 本当の敵ではないって事だけでも頭の中に入れて頂き 任務にあたって欲しい」



二宮「なら俺達のターゲットってのは一体誰なんだ?」



マツ「黒の装束を纏った奴等だ それが俺達の本当の敵 奴等には遠慮はいらない 迷う事なく頭に弾丸を撃ち込んでやってくれ」



山口「他に注意点はあるのか?」



マツ「無い まぁ あるとすればこの老体にみんなの力を貸してくれと言いたい所かな」



山口「あぁ 楽させてやろう 何なら指揮も代わってやったっていいんだ 爺さん」



流石は経験豊富な陸戦の勇士



エレナは余裕な表情で口にする山口を目にした。



「目標LZに接近 現着まで1分切った」



マツ「分かった 到着まで1分だ 皆 降下するぞ 各自銃口にサプレッサーの装着を忘れるな」



チヌークが緩やかに高度を落とし、降下態勢へと入った。



高度計が200メートルまで落ち、みるみる数字を落としていく



「指定のランディングゾーンまで400メートル 見えた あの国道でいいんだな?」



マツ「あぁ あの道路だ」



あれか…



森林の中にポツリと佇む豪邸を発見したマツ



機内では各自で消音器が取り付けられていた。



ザクトのメンツは皆MPサブマシンガンをセレクトし他は皆89式自動小銃を選んでいた。



エレナは89式小銃に消音器を装着



村田や山口、船木、鈴木等はMPに消音器をねじ込んだ



美菜萌は麻島から貰ったM360リボルバーサクラのレンコンを確認、ガンホルスターへ仕舞うや木刀を手に取った。



「カウントダウン開始 9 8 7…」



パイロットがカウントダウンを口にし、機内にスピーカーから流される。



「5 4 3…」



エレナは目を瞑り、深呼吸した。



ガサガサガサ



辺りの木々が風に煽られ揺れ動く中



スピードと高度を落とし、空中停止



「LZ到着 これより降下する 揺れに備えろ」



そしてゆっくり垂直降下し車輪を無事にアスファルトへと乗せた。



ガタンと機内が衝撃で揺れた後



バックハッチが自動で開くと同時にエレナ達が一気に外へと飛び出した。



※勝手にテーマ曲 Payday2 DeathRow



チヌークから散開した14名の戦闘員



バックハッチが閉まり、すぐにヘリは上昇された。



吐き出された下降気流で、道路の落ち葉が舞い散る中



各自銃器を構え、四方へ向けられると



ズル ズル ズル



真横にへし折れた足首をアスファルトに引きずりながら向かって来る1体のゾンビを視認した青木



青木が狙いを定めると それは手で遮られ、いきなり前に出てきた純やが口にした。



純や「弾の無駄遣い 今はなるたけ一発でも温存を ここはまかせ…」



そう言い放ちバット片手に突っ込もうとした時だ



その横を颯爽と前に出ていった人影



一本に結ばれた髪束がフワッと揺らぎ、純やに向かって口にされた。



美菜萌「ここは私が」



純やより先に突っ込んで行ったのは美菜萌だ



美菜萌は木刀を両手に掴み突進



腐敗臭さえ出し切った程 腐りきる初期型のゾンビに突っ込むや



バシッ



通過と共に横薙の一振りがかまされた。



木刀を顔面に叩き込まれたゾンビの頭は…



ボトト



3分の1程白骨化したゾンビの頭は取れ、転がった。



一打で仕留めた美菜萌がブレーキを掛け立ち止まるや鋭い視線に変わった。



そして左右に目を配った。



「うぅぅうぁ~」 「おぉえあおお~」



森に囲まれた国道



道路両脇の森の中から呻き声と共に足音を鳴らし、ゾンビの集団が現れた。



降り立ったばかりのマツ班を歓迎とばかりに群がろうとするゾンビの大群だ



出始め早々、ゾンビ襲撃の洗礼を受けた一行がそれぞれ銃器を向け



「うわぁあぃああ~」



興奮したゾンビが足早に手を伸ばし向かって来るや狙いを定めた山口がトリガーを引いた。



パス



押さえ込まれ掠れた発砲音を鳴らし、途端に草っぱらに倒れたゾンビ



それを狼煙の合図とばかりに四方に銃撃が行われた。



パスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパス



バシッ



果敢に突っ込み、一打で沈めて行く美菜萌の背中を目にした純や



なんだあの子… 凄いのがいるじゃん…



感心すると同時に先を越された感に捕らわれ、純やも慌ててゾンビの群れへと単身突っ込んで行った。



純や「うおぉぉ~」



純やは金属バットを振りかぶり



バコン



振り抜いた



ゾンビの頭は取れ、ボールのように回転しながらグチャっと幹にぶつかる。



また すぐ横にいるゾンビの腹部にバットを押し当て



グリップのボタンが押されるや



バチバチバチ



金属バットが放電の光を放ち、ゾンビの体が後ろに吹き飛んだ。



ドン



木に激突し、ずり落ちたゾンビの体は半丸焼け状態であらゆる皮膚から煙りがあがっている。



純やが手にする金属バット、これには何やら導線がグルグル巻きにされ、装置のような物が取り付けられていた。



そう… これはスタンバット



スイッチを押せば放電させる事の出来る改造バット



しかも人やゾンビをソッコー丸焦げに出来る程の殺傷力を持っていた。



もう一丁…



純やはすぐ近くにいるゾンビにスイング、ヒットされると同時にまたスイッチを押した。



バチバチバチ



打撃と電撃の力でかっとばされたゾンビの体はありえない程に飛ばされていった。



まだまだぁ~ かっとばされてぇ~死人は前に出な…



純やはバットを振り回しゾンビ共に向かって行く


一方



小銃を身構えるエレナ



片目を瞑り、狙いを定めるや



パス



発射



ゾンビの頭部が貫かれ、その真後ろにいるゾンビの額に弾丸が食い込んだ



そしてもう一発



パス



今度はこめかみを貫き、真横に平行するゾンビのこめかみをも貫き、2体一緒に葬られた。



エレナは1発で2体同時に仕留めていた。



またマツ、榊原、吉田、臼井、佐田、二宮等も発砲、次々とゾンビ共が倒されてゆく



そして突破口が出来るやマツが叫んだ



マツ「この森を進む みんな行くぞぉ~ こっちだぁ~」



一方…



マツ班より数分遅れで到着した麻島班



ヘリが浮上するさなか



麻島班もまた到着と同時に奴等のウェルカムな歓迎を受けていた。



麻島「円陣を組め」



森の中から、道路の先から



走ってやって来る奴等



意味不明な独り言で騒ぎ立て…



血肉を求め襲いかかって来る 走るゾンビ



ランナーだ



四方八方から迫り来るランナーの存在を察知し、ただちに円陣が組まれ自由射撃が行われた。



七海「きゃあ~ きたぁ~」



パスパスパスパスパスパスパスパス



七海のデタラメな発砲が胸部に被弾よろけると



パスパス



続け様的確に眉間が貫かれ感染者は倒れた。



中野「七海さん 落ち着いて もっとしっかり狙おうね」



七海「だってぇ 私 こんな大きな銃持つの初めてなんですけど」



中野「マジ?」



パスパスパスパス



東條「うじゃうじゃ 出てきやがったぞ」



パァン パアン パァンパン



長物もサブマシンガンも持たずハンドガンのみで応戦する三ツ葉



石田「囲まれてるぞ 突破できんのかこれ」



すると



江藤「チコちゃん 行くよ」



チコ「ヒャッホ~ オーケー」



合間「な! お… お嬢 遊び心ではなりませぬぞ」



チコ「べ~」



合間の監視の隙を突き



嬉しそうな顔で日本刀に手を掛け江藤と共に円陣から飛び出したチコ



遊び半分だろうとなんだろうと…



何がいけないのよ… あたしも楽しめて… みんなの為にもなる…



これぞ ウィンウィンってやつじゃない…



江藤「2人でみんなの突破口を作るよ いいね?」



チコ「お~ イエス」



江藤とチコがそのまま森の中へと入って行った。



そこら中から2人目掛け向かって来る感染者共を目にするや



江藤が背中の触手を伸ばした。



そして



感染者のみ根こそぎ攻撃しろ…



頭の中でそう念じ、指令を出すや2本の触手が勝手に伸び、広がった。



それから自動で攻撃しはじめた。



感染者の首に巻きつかせ



ブシュュ~ 一瞬でねじ切る



スパッ



しなる触手が一瞬で2体を斬首



江藤の意志とは別にオートモードで感染者を攻撃、5秒とたたずに周囲の感染者は瞬殺され次々と臥していく



また



チャキ



鍔が親指で押され、刃が顔を出すや



チコが刀を抜いた



胡座流一心抜刀術…



疾風の心…



颶風(ぐふう)…



バシュ シュパ



疾風の如く駆け抜けながら目にも留まらぬ太刀筋で次々と感染者の首を斬り落としていくチコ



そして前方から走って向かって来る感染者を目にし、立ち止まるや鯉口で抜刀の構えを取った。



フッ… 辻斬ってあげちゃう…



切り捨て御免… なんちって…



一刀斬りの心…



隼の爪跡…



バシュ シュパ シュパァ



高速な3連の袈裟斬りで斜めに斬りつけられた感染者の身体から血飛沫があがり、咄嗟に腕でガード アンド離れるもPコートに血が飛び散った。



ブシュュ~



チコ「あ~ ヤバ やっちった 汚ぁ 折角のオニューなのに も~ あったまきたぁ~」



斬殺よ…



乱斬りの心…



無刀鳥舞…



チコは刀を両手で握り、感染者に向かって行った。



ズボ



感染者のこめかみにサバイバルナイフが突き刺され、えぐられると 続けて隣りの感染者の頭頂に刺し込まれ



江藤が手を止めた。



白眼を剥いた感染者は倒れ、気づけば辺りは片付けられた死体が無数転がっている。



また



バシュ



刀が振り抜かれ、生首が跳ね飛ばされると



チコも手を止めた。



チコ「ふぅ~ まぁ 早朝のウォーミングアップとしてはこんなとこかな」



まだ数分しか経ってない…



なのに江藤とチコの周辺から感染者が全て消されていた。



つい最近までゾンビ討伐を専門にしてたとはいえ一次元上の無双っぷりを披露した2人



皆の移動するルートが確保された。



江藤「よし チコちゃん とりあえずこのへんでみんなを呼びにいこう モタモタしてるとまた集まってくる」



チコ「オーケー やだぁ 血の臭いがついちゃったよ マジ ブ~だよ」



2人は急いで皆の元へと後退した。



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