第189話 蜂起

同刻  マンション屋上



麻島から事情を聞き、険しい表情を浮かべる純やと江藤



エレナ「純やさん… どうしよう…道の身に何かあったら私…」



涙を溜め、不安でいっぱいなエレナが弱々しい声を発した。



純や「ハサウェイさんはそんなヤワじゃない それぐらいで終わるようなタマじゃないって」



エレナを落ち着かせようと慰めの言葉を掛けた。



江藤「そう願いたいね でも自力で脱出するのは難しいよきっと」



純や「おい 希望的観測で勇気づけてるのに水差すような事言うなや」



江藤「ただ現実的な話しをしてるだけだよ どっちみち早急に助けださなきゃだね」



腕を組み静観する村田の元に美菜萌と青木が寄ってきた。



そして美菜萌が尋ねた。



美菜萌「あの~村田さん あの方達って何者なんですか? エレナさんと親密そうですね」



村田「あ~ あいつらか あいつらはエレナと御見内のお友達みたいだ ザクトにはゾンビ殲滅隊って特別部隊があってな 1人で100体平気で相手にするようなバキバキな連中が集まってる そんな連中の中でみるみる頭角をあらわし 今や主力中の主力って言われてるのがあの2人」



青木「…」



村田「あの金属バット持ってる方が純や、隣にいるのが江藤って奴で 特に江藤がヤバい 奴は国内で唯一感染を克服した奴らしいから 感染者とのハイブリッドなんだと」



美菜萌「感染者との?」



村田「あぁ 半感染者って感じか… 聞いた話しだとその証に背中から2本の触手が生えてるそうだ」



青木「え 触手が生えてるの マジ?」



美菜萌「へぇ~」



村田「っかしどいつもこいつもザクトに属してる者なら知ってる顔だ 戦場で名をあげた奴ばかりだわ」



美菜萌「そうなんですか?」



村田「あぁ まずあそこにいる女子高生みたいな格好した子いるだろ 刀刃隊って呼ばれている剣士揃いの部隊があるんだが それの第3刀刃隊の長(おさ)を務めるチコってやつだ 刀刃隊の連中もヤバいぞ なんせあの腰に携えた日本刀一本でゾンビの大群と渡り合ってる連中だからな しかもあの若さで長を務めているんだ」



美菜萌「あの子 剣士なんだ…」



美菜萌がチコの顔を目にした。



村田「それからその後ろにいる大男が合馬(ごうま)って奴だ あいつもチコと同じ刀刃隊の者で名を馳せた剣客の1人だよ それとあの右端にいる3人組 あの真ん中にいるのが山口大隊長 まさかあんな人まで参加してくれてるなんてビックリだな」



美菜萌「そんなに凄い人なんですか?」



村田「あぁ 凄いもなにもあの人は大隊の隊長クラスの人だ ちなみに麻島隊長は小隊長クラスの人と言えば凄さが分かるか 主に奇形型感染者 猿型とかサイレンサーとか触手型、あの特異と特殊な感染者専門に討伐を行ってる まぁ凄い人なんだよ」



美菜萌「…」



村田「その両端にいるのが榊原さん、吉田さんペアだ 及川さんと南さんのコンビまでいるな まぁ とにかくどいつもこいつも前の大戦で名を売った豪傑揃いだよ」



青木「ふ~ん そりゃあいい それなら足を引っ張られる心配もなさそうだ」



村田「素人のおまえがそれを言うな」



三ツ葉「皆さん こちらに集まって下さい」



三ツ葉から号令がかかり皆が集まってきた。



三ツ葉「ではっ 麻島隊長とマツさん あとはお願いします」



麻島「凄いメンツを前に恐縮ですがここは私達に仕切らせて貰います」



麻島が軽く一礼し話しを続けた。



麻島「昨夜敵の襲撃によって2名の仲間が誘拐されました これからその奪還及び総攻撃をかけたいと思っております なにとぞ協力の程願います」



エレナ「…」 純や「…」 江藤「…」



麻島「それで今作戦 前回同様2手に別れ、ポイント2カ所を同時に叩くコマンド作戦でいきます 現在分かってる情報はあまりに乏しく現場での判断となってしまうでしょう  当然ヘリの移動となれば接近時に察知されるのは必至 反撃も予想されます その上で捕らわれた仲間の救出を行わないといけないかなり難易度の高いミッションになります」



美菜萌「…」 青木「…」 村田「…」



麻島「また 現在敵の仕業により広範囲で通信機器の使用が不可となっています 従って別れた際は互いの状況確認も安否確認も出来ません 連携が取れなくなります」



海原「…」 チコ「…」 臼井「…」



麻島「ですがこれだけのベテラン揃いなら今回のミッション遂行も可能かと この少人数でも実行可能と判断し強行致します 私からはとりあえず以上です 何かありますか?」



マツが振られ



マツ「えぇ… あぁ そうだな じゃあ私からも一言 ここは私の故郷だ 都会の喧騒とは違う、田舎の風情がある ここにはのどかさもあり、うまい空気もある、人情味だって溢れている いや… 溢れていたか 私はこの生まれた土地が好きだ だから都会勤めを終え再び安住を求め戻ってきた 余生をのんびりと過ごす為にだ だが… その直後に未曽有の大パニックが起こった そしてこの混乱に乗じ、混沌のどさくさに紛れ奴等もこの青森の地にやってきた」



三ツ葉「…」 半田「…」 七海「…」



マツ「そしてそんな恐怖に脅える民を… 藁にもすがる思いの民を手練手管で懐柔し、弱味につけ込んだ  そして拷問や暴力によるマインドコントロールを行い住民を支配した。 あまりにも酷い行為、あまりに非人道的な行い 人の命を蚊でも殺すかのように 女、子供まで手にかける残虐ぶり」



石田「…」 中野「…」 佐田「…」



マツ「終いにはバスタードとかいう実験の材料にされボロキレのように民の命が粗末に扱われた。 奴等は夜叉だ 人なんかじゃ無い 私にとって奴等はゾンビなどよりも憎い… 憎くて憎くて仕方がない… 絶対に奴等を許す事など出来ない 山吹を… 怪しげな妖術を使うと謳うあの山吹をこの手で倒す力を皆に貸して頂きたい」



山口「…」 合間「…」 榊原「…」



マツ「御見内、早織、あとは臼井…おまえのご家族と柊のご家族も囚われているんだったな?」



臼井「はい」



マツ「みんなを奴等の魔の手から救い出したい なにとぞ宜しくお願い致します」



マツが皆に深々と頭を下げた。



すると



純や「頭を上げてよおじさん」



マツが顔をあげると



純や「そんなの言われなくてもあたりきしゃりきっしょ 何の為に俺達がきたんだか まぁハサウェイさんが攫われたのは予想外だったけど逆に闘志に火が点いたって感じだよね っで それよりでっぱつ(出発)はいつにするの?」



マツが麻島に目を向けると



麻島「そうですね… ではっ これから40分後に出発します」



純や「そうこなくっちゃ」



麻島「早急に進発致します これからこちらの方で班の割り振りをおこないますので 皆さんは出撃準備を整えておいて下さい 三ツ葉 武器、弾薬の支給の方は頼むぞ」



三ツ葉「おまかせ下さい」



麻島「それでは40分後に救出及び奇襲攻撃を開始します ひとまず解散」



麻島がマツと共にそそくさと屋上をあとにした。



純や「さぁ~てと 早く顔も見たいしパッパとハサウェイさんを救出しちまおうぜ」



江藤「うん そうだね」



これから御見内等の救出作戦が行われる



そして… 邪教徒集団との全面戦争の幕があがろうとしている

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