第188話 幇助

掛け声で一斉に窓際へと駆け寄り、窓から耳を傾けた。



耳を澄ますと聞こえてくるこの音



希望の光ともいえるヘリコプターの羽の音が皆の耳にも聞こえてきた。



臼井や石田、佐田がその音を耳にし笑みを浮かべる



臼井「やった こっちにやって来るぞ」



バタバタバタバタ



マツ「本当だ」



麻島「このヘリ 三ツ葉か… 皆 屋上に向かおう」



そして屋上へと駆け上がって行った。



バタバタバタバタ



街中に轟くヘリの音に、道路をノソノソ横断する感染者の足が止まり、見上げるや次々とゾンビ共の顔が上げられ、こぞって空を見上げていた。



前後で回るツインローター



月島等に破壊された機体と同型の輸送ヘリコプターが上空を移動していく



エレナは屋上へ飛び出し、音のする方向へ目を向けた。



バタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタ



機体はまだ視認出来ないが確かにこっちに向かって近づいて来る羽の音



手すりにしがみつき、空を見上げる青木の瞳に



青木「来た」



チヌーク47JLR(ロングレンジ)の機体2機が映し出された。



バタバタバタバタ



エレナも美菜萌、マツ、村田、中野の目にも視認され、ヘリは真っ直ぐこっちへと向かってくる



麻島「これで移動の問題は解消されそうで」



マツ「えぇ そのようだ」



皆から少し離れた位置でヘリを出迎える麻島とマツが間近まで迫るチヌークを見上げていた。



瞬く間に接近してくるチヌーク



ヘリの旋風を受け、エレナや美菜萌、七海の髪が乱れる中 エレナが髪を掻きあげた。



バタバタバタバタバタバタバタバタ



するとチヌークが屋上に到着、皆の頭上上空でホバリング態勢に入った。



また2機目も空中で動きを止め、待機する。



臼井「どうしたんだ? なぜ早く降りてこない」



海原「残骸が邪魔でランディングスペースに余裕が無いんだ」



パイロット同士が何やら手信号でやり取りを交わし



1機が動き出し、慎重に降下をはじめた。



バタバタバタバタバタバタ



チヌークがゆっくりと着陸降下



その際生じるダウンウォッシュ(吹き下ろし風)、嵐のような強風に晒された各人の衣服や髪は激しくたなびき、エレナは薄目で顔もとを腕で覆った。



そして4本の車輪が見事に着地し、着陸は無事成功



ただちにエンジン停止された。



ローターがしばらく惰性で回り続けるさなか



続いて2機目も垂直降下をおこなう



バタバタバタバタバタバタバタバタ



チヌークのスライドドアが開かれ、一番に三ツ葉が降りてきた。



バタバタバタバタバタバタバタバタ



三ツ葉「戻りました」



羽音の爆音と吹き荒れる風で全く声は届かず



三ツ葉は皆に会釈しつつ、麻島、マツの元に駆け寄った。



三ツ葉「只今 戻りました」



麻島「早かったな よくぞ戻った 待ってたぞ」



三ツ葉「もっと早く戻る予定だったんですけど 少々遅れてしまいました 申し訳ありません」



麻島が三ツ葉の肩をポンと叩いた。



マツ「その後小泉の容態はどうだ?ポン吉と柊はどうなった?」



マツが耳元で問い掛けた



三ツ葉「えぇ 小泉氏なら命に別状ありません ただ意識はまだ戻ってません それと2人も無事に治療を終えました 現在ザクトが管轄する御茶ノ水の東京医科大の方にいます」



三ツ葉が声量を上げ答えた。



マツ「そうか それなら良かった 恩に着る」



三ツ葉「いえいえ それより…」



2機目のチヌークも無事着陸に成功し、すぐさまエンジンが切られた。



すると吹き付ける風がピタリとおさまり、エンジン音も停止



惰性のみで羽を回すヘリコプターから騒音が消えた。



帰還した三ツ葉の元に村田、海原、美奈萌等も集まり、エレナも三ツ葉の元へと駆け寄った。



海原「戻って来ないかと思った」



村田「あぁ ホントだぜ 遅いぜ 三ツ葉さん」



喜びの顔を表す2人



三ツ葉「えぇ すいません 色々とやってたもので それよりこれは一体? ヒドい…」



破壊されたチヌークの残骸に目を向け、指差した。



そしてチヌークの残骸に皆が目を向け、麻島が事情を説明しはじめた。



襲撃の件 そして御見内、早織が強奪された件



昨夜起きた一部始終を三ツ葉に話した。



そしてこれから行おうとしている救出作戦の事も…



何もかもが話された。



それを聞いた三ツ葉の顔色はみるみると変わり



三ツ葉「何て事をやらかしてくれたんだ… 月島の奴…」



茫然自失でボソッと言葉を漏らした。



2機共羽根の回転が止まり、静けさを取り戻した屋上



三ツ葉「それは急を要する事態ですね」



麻島「三ツ葉 弾薬の方は?」



三ツ葉「えぇ それなら大丈夫です 心配入りません 輸送ヘリに沢山積んできましたので」



マツ「って事はこれで2点目の問題もクリアーですな… 残すは1つ」



麻島「おまえならどうする?」



三ツ葉「そうですね やはり同時にアタックをかけるのが最良じゃないでしょうか」



マツ「あぁ 確かに先手で2カ所同時に奇襲をかけたい所 だがそれには人手も足りな過ぎる 2名の犠牲者が増え ポン吉や小泉、御見内も欠けた今 その上この少人数を更に割るなどあまりに危険過ぎる それに電波障害もある 連絡のやり取りが出来ない以上 連携は取れないんだ 2手に別れての攻撃は…」



その時だ



三ツ葉「戦力不足 その点も問題クリアーです」



三ツ葉がマツの話しを遮り、口にした。



三ツ葉「じつはあるとびきりの助っ人達を連れて来たんです」



そして三ツ葉がエレナに目を合わせた。



三ツ葉「とくにエレナさん 驚かないで下さいね」



エレナ「え? 私…」



次の瞬間



チヌーク2機のスライドドアが同時に開き数名が降りてきた。



エレナがその先頭で降りて来た人物を目にした時



エレナ「え? え…?」



エレナの目が飛び出さんばかりに大きく見開かれた。



嘘……



三ツ葉が片手を広げ紹介のジェスチャーを送った。



三ツ葉「戦力としては申し分無い方達を引き連れて参りました」



アスファルトに降り立った人物



エレナの前に現れたのは…



じゅ… 純やさん…



純やがいた



エレナ「じゅ… 純やさん え! 江藤さんも」



その後ろから江藤も姿を見せた。



驚きの表情を浮かべながら数歩前に出たエレナが2人の正面に立った。



エレナ「純やさん」



純や「やっほ~~ エレナさん お久しぶり」



江藤「やぁ エレナさん ども びっくりしたでしょ」



後続から降りて来た女性



スクールPコートに毛糸のマフラー、毛糸の手袋をはめ、通学する女子高生そのままの格好で腰には日本刀を携えている



チコ「寒」



そしてその後ろから現れた大男



「お嬢 素足では寒うございますよ 風邪をひきますんで せめてストッキングを履いてくだされ」



チコ「も~ うるさい だから大丈夫だって言ってんじゃん」



エレナ「な‥ なんで?ここに」



純や「北海道で今 ロシア人が怪しい動きをとってるらしくて その内偵の先発隊として召集されたんだ それでこれから三沢基地に行く予定だったんだけど 三ツ葉さんが来てマスターに直談判したようで まぁ それでこうなってああなって、急遽こうゆう成り行きになった訳さ」



江藤「ここのいざこざってロシアが大きく関与してるみたいだから それも兼ねての指令を受けて 合流に至ったんだよ」



他のチヌークからも続々と降り立ち



総勢15名もの兵(つわもの)共がヘリから降りてきた。



純や「まぁ そうゆう訳なんでしばしの間宜しくねエレナさん」



江藤「宜しく」



まだ信じらんないといった様子でポカーンと口を開け、純や等を目にするエレナ



純やが辺りをキョロキョロ見渡し口にした。



純や「あれ? ところで ハサウェイさんは? 折角サプライズでマブダチがやって来たってのに出迎えもなしっすか?」



江藤も一緒に周囲を見渡した。



すると



その名を聞いた途端変なスイッチが入ったのか…



また数歩歩み寄ったエレナが純やに近づくや目に涙を溜め、胸に飛びついてきた。



純や「え? え! エレナさん あれ どした…」



いきなり泣き出したエレナに動揺する純や



エレナ「道が… 道がね… 奴等に攫われちゃったの」




純や「み… 道って?」



江藤「ハサウェイさんの名前だよ 純や君忘れたの?」



純や「あ! あ~ 馬鹿 忘れっかよ」



江藤「攫われたって?」



顔を見合わせた2人の表情が一気に変わり、胸に抱きつき、すすり泣くエレナの肩が掴まれ、純やが引き離した。



純や「嘘でしょ? ハサウェイさんが攫われたってどうゆう事 それちゃんと聞かせてよ エレナさん」



しわがれ声で嗚咽するエレナに純やが真剣な眼差しで問い掛けた。



江藤「攫われたの?」



エレナが泣きながら頷いた。



純や「あの人が攫われるなんて信じらんないな なぁ」



江藤がコクりと頷くや



麻島「それは本当だ その件は私の方から説明する」



割って入ってきた麻島を目にした2人



御見内が敵の手に落ち、攫われた件が2人にも話された。



純や「まじかよ…」



江藤「来てそうそう凄い事になってんね…」



ーーーーーーーーーーーーーーーー



同時刻  場所不明



ゆっくりと目が開かれ意識が戻った御見内



顔を上げ、周囲に視線を配るとそこは見知らぬ場所



窓1つ無い石積みの壁、目の前にある暖炉では炎が燃え盛り、また所々に灯された蝋燭があるのみの殺風景な一室にいる事が分かった。



ガシャン



そしてもう1つ…



一糸纏わぬ姿で両手、両足首が頑丈な鎖で固定されている事にも気づいた。



これを自力で抜け出すの不可能と悟った御見内は無闇に暴れる事無く、冷静に目を配った。



暖炉で燃える炎を見つめながら



ここは何処だ…?



そう思考した時だ



カツン カツン



ヒールの音が聞こえ、女が室内に入ってきた。



冴子「フフ やっとお目覚めね」



御見内「冴子!」



白衣に手を突っ込み近づいてきた冴子



冴子「ここはどこだ? なぜ私がいる…? どうして裸で繋がれているんだ…? 聞きたいのはそんな所かしら ウフ」



不気味とも言える笑みを浮かべ、吊された御見内の前に立った冴子



冴子「私の口からはまだ言えないわ でもすぐに分かるからちょっと待っててね」



いやらしい手つきで御見内の胸に触れながら口にした。



御見内「…」



冴子「ねぇ 動物には全身体毛が生えてるじゃない 季節によって生え代わる 言わば衣替えみたいなもん つまり体毛は服の代わりでしょ でもなんで人間だけは体毛に覆われてないんだろう? 服がこの世から無くなったら人も動物みたいに全身体毛で覆われるのかな? そう思った事ってない?」



御見内「…」



冴子「ハタから見たら裸族だの露出狂だの白い目で見られがちだけどこれが本来の姿… ありのままだと思わない?」



御見内「思わねぇーよ ネジがイかれたサイコと一緒にするな」



冴子「あっそ まぁいいわ」



冴子が御見内の男性器をいじくりはじめた。



冴子「あなた 私が長年かけて採集した大事な大事なコレクションをぜ~んぶオジャンにしてくれたみたいね」



指先で亀頭をいじりながら、御見内の反応を伺う冴子



冴子「フフ でも いいの 恨んでなんかないわよ また集めなおせばいい話しだもの この世に男がいる限りいつでも手に入れられるから それで再収集の輝かしい第一号は… あなたよ…」



手でシゴキ、上目づかいな冴子に対し睨みつけた。



御見内「このままで済むと思うなよ」



冴子「フフフフ 怖い顔 でもこの状況をどうやって切り抜けるのかしら あなたはもう私のオモチャなんだよ」



唾をたらし、激しくシゴキはじめる冴子



御見内「今からおまえに忠告しといてやる 初めて会った時 拳銃を持った女がいたろ 覚えてるか?」



冴子「えぇ 勿論 エレナって子でしょ 覚えてるわよ あの子も攫う筈が失敗しちゃったみたいで残念よね」



御見内「そのエレナに… おまえはエレナに殺されるだろう 今後100%の確率でな」



冴子「あらそ~ 大した確率ね それは楽しみにしとくわ じゃあ私からも忠告しといてあげるわね あなたと早織とかっていうおチビちゃん 2人とも今後お日様は見れなくなりそうね 100%の確率で」



御見内「早織? 早織に何をした?」



冴子「あの子もあなたと一緒に捕らわれ、連れてこられたのよ あ!この先は私の口から言っちゃうと幻史にしかられちゃうからごめんね もうじき来るから待ってて」



御見内「早織ちゃんが…」



冴子「う~ん それより早く来ないかなぁ~ とりまSEXしたいんだけど まだかしら…」



すると我慢出来ない様子の冴子が御見内の陰茎を咥えはじめた。



御見内の眉がピクリと動き



冴子「ムフフ あらあら 反応しちゃってるね 私に殺意を持ってるわりには大きくなってきて ホント男の心と身体ってバラバラよね」



御見内「くっ…」



その時だ



急に扉が開かれ、数人の男達が部屋に入ってきた。



冴子「やっと来た」



月島「はっはぁ~ 素っ裸にされちまって随分と不様だな 御見内よ」



御見内「月島」



月島「しかもチ○コ咥えられてよがってりゃ世話ねぇー それ見られたらテメェーの女にどやされんじゃねえの ハハハハ」



冴子「フフフ」



目を閉じ、勢いを増して尺八を楽しむ冴子



御見内が月島の隣りに現れた見知らぬ男に視線を向けた。



ロン毛に僧侶の格好をした男



そして2人の背後からもう1人男が現れた。



深々とフードを被り、赤い装束を纏った男



そいつは手に書物を抱え、御見内の前へと立った。



「おまえが御見内とやらか?」



御見内「あぁ おまえが山吹か?」



そしてフードがパッと剥がされ、素顔を晒した山吹



御見内「特別手厚い招待を受けた理由を教えろよ ネクロマンサーさんよ」



山吹「理由? これといって特にはないな」



御見内「ふざけるな」



山吹「強いて言うなら脆弱でろくに力もないくせにいつまでも刃向かうコバエの集団に新しい蠅が群がってきたと そのハエとやらの顔が見てみたくなっただけだ」



フェラをストップさせ振り返った冴子



冴子「え?それだけ?」



山吹「あぁ こいつはおまえにご褒美だ すぐに壊さず大事に遊べよ」



冴子「あは うん ありがとう幻史」



再び性器にむしゃぶりついた。



月島「おいおい それだけの為にあんな労力を使わせたのかよ…」



御見内「そのハエにおまえ等はいずれ潰されるんだよ」



山吹「フッ 少々掻き回した程度で図に乗るな」



山吹がそのままあとにしようとした時



御見内「待て 何故早織ちゃんまで攫った? この争いにあの子は関係ないだろう」



山吹「あぁ… あの小娘か… 確かにもう私にとっては無用の長物だな 最高傑作は完成され既に成就された」 



御見内「なら何故あの子を付け狙う?」



山吹「私は欲しい物は何が何でも手に入れたくなる性分でね その点欲してる際何度捕獲しようとも逃げおおせたあの小娘に執念を燃やしていた」



御見内「…」



山吹「そしてようやくあの小娘も手中におさめる事が出来た 我が悲願は達成されたといった所か 理由はそれだけだ」



御見内「テメェーの自己満の為だけに攫ったってのか クサレ外道が 早織ちゃんをどうする気だ?」



山吹「案ずるな 生かしといてやる 先ほど無用の長物だと言っただろ 殺す意味も価値も無い小娘 そうだな… せいぜい彩羽の遊び相手として使ってくれよう まぁ かといって返す訳にもいかないがな」



御見内「どこまでもふざけた野郎だ」



山吹が完全に背を向けるや



山吹「無論 それは貴様とて同じだ… 冴子 あとは好きにしろ」



冴子「はぁーい つ~か凄~い これだけ私が舐めてるのにまだ出ないなんて」



御見内「山吹 これで終わりじゃねぇぞ 必ず仕留めてやるからな」



山吹「フッ」



鼻で笑い部屋をあとにした山吹



月島がニヤリと蔑みの笑みを浮かべながら口にした。



月島「お~お~ 虚勢はってんじゃん御見内 その前にたっぷりと冴子に可愛がってもらえよ 快楽と痛み… セックス&バイオレンスって感じか まぁ せいぜい性欲地獄で溺れ死なねぇようにな ハハハハハハハハ」



高らかに笑いながら月島も部屋をあとにし、スキャットマンも部屋をあとにしようとした時だ



後ろを振り返った。



そして御見内と目が合った瞬間、スキャットマンの背筋に悪寒が走った



おぼろげなイメージだか千里眼で映し出されたヴィジョンを目にし身震いを起こしたスキャットマン



確かなのは さっきこの男が口走った通り…



この男…



バタン



御見内の目を見てそそくさと逃げるようにドアが閉められた。



山吹等の退出後2人きりになるやいなや



冴子がおしゃぶりを止め、立ち上がった。



冴子「美味しいけどヤバ なんか顎がつりそう さぁ~ それよりやっと終わった終わった ベッドのある部屋に移動しましょう その前に」



白衣のポケットからある物を出してきた。



冴子「いくら何でも力じゃ勝ち目はないもの 鎖を外した途端暴れられちゃ困るのよ」



手にしているのは注射器



ピュっと針から液体が飛び



冴子「またオネンネして貰います」

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