第173話 趨勢

サンクチュアリー(廃病院)近辺の死の森



21時00分



所々松明(たいまつ)の明かりが灯され、陣営が組まれた奥深な森の中



吐く息が白く目立つ程冷え込んできた現在の気温は4℃



この極寒な森の中を全裸姿な奴隷共が危ない凶器を携え、あちこちで待機している



シャン シャン



そんな中



火の明かりに照らされ棒と人の形が木立に投影



シャン シャン



杖に取り付く6つの遊環(リング)が歩く度に音を鳴らし、白い長足袋が落ち葉を踏みしめた。



純白の法衣に紫色の五条袈裟を纏う、僧侶のような いで立ちの男が歩み、奴隷共に目を配る



腰まで伸びた長髪に少女漫画に出てきそうな美男子かつナルシストを思わせる整った顔



この錫杖(しゃくじょう)を手に歩を進める男の名は



コードネーム スキャットマン



スキャットマンがある一本の太い幹の前で立ち止まり、顔を覗かせた。



微かに松明の明かりが届くその先にはあの冴子の姿



そしてしゃがみ込む冴子の周りには素っ裸な3人の男共が直立し、硬く、長く伸びたイチモツを差し出していた。



冴子「う…うん あ… あん」



冴子はそのイチモツに激しくかぶりつき交互に口へ含んではジュルジュルと音をたてながら美味しそうにその肉棒をしゃぶっていた。



またその間 自らの陰部へ指を入れ、高速で抜き差し、シャワーのような潮を吹かし 自慰行為をしていた。



変態女め…



生理的に受けつけぬ不快かつ蔑んだ表情を浮かべ、その光景を目にしたスキャットマン



一本の肉棒が脈動し口内射精されるやそれを飲み込んだ冴子がジロリとスキャットマンに目を向けてきた



そして唇に付着した精液を舌で舐めまわし、口元を緩め、うっすら笑みを浮かべてきた。



イかれ女が…



もう2本の肉棒にむしゃぶりつく冴子からスキャットマンはすぐに視線を外し、その場から離れていった。



シャン シャン



スキャットマンが陣営の最前まで歩

みを進めると松明が固定されたいくつもの篝火(かがりび)が見られ、照らされる赤い衣が見えてきた。



赤いフードを纏いし男、山吹だ



山吹は魔導書を開き、暗闇が広がる森に向け何やら唱えていた。



山吹「…ルーデンファスファラケス… ゾルド アルド デミトルデピュール ギルドュークス…」 



無風な森の中で篝火から焚かれた焔(ほむら)が微かに揺らぎ



山吹「冥府の賢者共 偉大なる闇の開拓者共よ その遑(いとま)なき枚挙な闇の力を さまよいし霊体の降臨を その一部を我が魂の断片と引き換えに、預けよ」



山吹が手をかざすと



励起した炎の勢いが増し、激しく揺らいだいくつかの松明が消えた。



スキャットマンはその怪奇現象と思える光景を目にしながら山吹の元まで歩み寄った。



山吹が魔導書を閉じ、かざした手を下ろすと松明の炎は平常に戻り、また消えた筈の炎も再び燃えはじめる。



スキャットマンが山吹の背後へ着けるや山吹は闇夜の森を眺めながら口にした。



山吹「空羅(くうら) 私達万物の生きる意味とは何だ?」



スキャットマン「それは一般的な答えですか? それとも哲学的回答…霊的な世迷い言の方?」



山吹「この現世とは言わば魂の試練の間 苦悩し苦痛を耐え凌いで磨き上げる… この肉体もかりそめ この世もむしろこの世でいうヴァーチャルのような物」



スキャットマン「そっちですか…」



山吹「生きる意味とは?」



スキャットマン「生きる事に大した意味はありません ここで表現するあの世なら醜い煩悩も争いも無い快適な空間がある ですが上には上のステージが用意されている 皆その高みを目指している その高みを目指すには経験値が必要 その経験値を得るには この現世で経験値を稼がなくてはならない…」



山吹が魔導書を懐へとしまい込んだ



スキャットマン「…ってところでしょうか これが私なりの見解であり少なくともこの地球で万物が生を受け時と共に同じベクトルを歩んでいる答えです」



山吹「いい答えだ 流石は千里眼を持つ者だな 凡人には知り得ぬ 誰も解き明かせぬ境地を悟しているか… その通り… 全てはこの形無き魂の洗練 精製の為と言えよう この世界のルールもあらゆるシステムも無と帰せば意味を無くすと同等にいくら時を重ね生きようが 生きる事自体もまた無意味」



スキャットマン「えぇ ですがこれは単なる仮説に過ぎません それを知り得るのは死した者のみですから 私達如きがそれを知ろうとする事もまた無意味なのかと…」



赤い衣の下で腕を組んだ山吹が振り返った。



スキャットマン「代表 唐突になにゆえこのような尋ね事を?」



山吹「フッ あの小娘を飼い慣らしたはいいが 繋ぎ止めるには骨がおれる」



スキャットマン「少女のバスタードの事ですか?」



山吹「あぁ あやつの内には魔物がいる そいつは内からジッとこっちを見ているんだ この呪縛を破ろうと…  虎視眈々とな…」



スキャットマン「コントロールが困難になってるんですね… 代表 やはりあの生体兵器はあまりにも危険です 手に負えなくなる前に破棄するべきかと」



山吹「い~や 遊び心からとは言え 素晴らしい発見をしたんだ そして時間と労力を費やし、ついに完成させた貴重な逸品だぞ 手放すなど勿体ない」



スキャットマン「ですが…」



山吹「その為 我が魂の一部と引き換えに新たな契約の儀を果たした」



スキャットマン「これ以上深入りする事はオススメ出来ません 奴等など貪り食す事しか考えてないんですから 奴等の前ではいくらあっても足りません」



山吹「なぁ~に いずれは彩羽が集めた魂で補填するから心配いらぬわ」



スキャットマン「…」



山吹「空羅 それよりスペツナズの動向はどうだ? 邪魔なレジスタンス共は一匹残らず皆殺しにしたか?」



スキャットマン「いえ 逆です 助っ人に来たロシア兵は全て死に絶え 奴等はまだ生き残ってます」



山吹「そうか しぶとい奴等だ…」



スキャットマン「ザクトと呼ばれる正規の軍隊の介入もありますが 2人組のよそ者の存在が戦況を変えたように感じます」



山吹「2人のよそ者?」



スキャットマン「えぇ 男女のペアです 現地の者ではありません」



山吹「そいつらが戦況をひっくり返したというのか?」



スキャットマン「定かではないですが 何かしら影響を及ぼした事は確かです」



山吹「なるほど 2人組のよそ者か… 素性は後で詳しく聞いてみるか…… 月島にでも…」



スキャットマン「えぇ」



すると



ガサ ガサ



森の中から物音が聞こえてきた。



山吹「お待ちかねのお姫様がお帰りだ」



ガサガサ



何かを引きずった音



それと



「ヒィ ヒック ヒック」



少女のむせび泣く声が聞こえてきた。



闇夜の先に目を向ける山吹とスキャットマンの前に



「フィ ヒック ヒック」



松明の明かりに照らされし彩羽が姿を現した。



両手で涙を拭いながら嗚咽する少女



ピンク色のポンチョは真っ赤な生血に染まっている



そしてスキャットマンがある物へ視線を向けた。



少女は泣きながら何かを引きずっているのだ



少女の背からは少女の物とは思えぬぶっとい腕が伸び、そいつが何かを掴み引きずっていた。



それを目にしたスキャットマンの瞼が微かに揺れる



その筋骨隆々な腕が掴んでいたのは



巨大熊の生首なのだから…



冴子「う~~ 寒ぅ」



白衣一枚の姿で身を震わせながらやってきた冴子



スキャットマン「ふしだらな女め いつまでそんな格好をしている 服を着ろ」



冴子「着るも何も持ってきてないし 空羅のその服貸してよ」



スキャットマン「…」



冴子「あら~~ 彩羽ちゃん戻ったのね あれ?」



彩羽「グス ヒック うぇ~ん」



山吹「どうしたのだ彩羽 何を泣いている?」



彩羽「ヒク うう… 怖かったの ヒック とっても怖かったの クマさんが彩羽を食べようとしたんだもん」



山吹「そうか… だがもう大丈夫だ さぁ おいで」



山吹が両手を広げ、すすり泣く彩羽を包み込んだ



スキャットマンは彩羽の身体の半分もあるだろう巨大熊の生首から、山吹の胸で泣く か弱き少女へと視線を向けた。



本当にこの幼き少女が…



この巨大熊を仕留めたと言うのか…



にわかに信じ難い光景にスキャットマンは驚きの表情を見せた。  



山吹「彩羽 よくやった 悪~い熊さんをやっつける事が出来たんだな」



彩羽「ヒック うん…」



山吹「どれ その戦利品とやらを見せてくれるか?」



彩羽「うん」



すると



彩羽から伸びたごっつい腕が生首を持ち上げた。



断面から滴る血、半分開かれた口から剥き出す牙と垂れ下がるベロ



巨大熊の巨大な生首が空中にぶら下げられ、落とされた。



ゴロゴロと生首は転がり、ごっつい腕が急速に縮小



触手へと変形しながら彩羽の背中に収納されていく



山吹はしゃがみ込み、彩羽の頭を撫でながら



山吹「ほ~ 見事だ彩羽 だが…」



生首を持ち上げた



山吹「こいつはミナグロとは違うようだ 十分規格外だが あのミナグロにつかえていた家来の片割れ」



そしてすぐに生首を放り捨てるや



山吹「まぁ いい 今日の所は引き返すとしよう」



冴子「え 追わないの?」



山吹「夜もふけてきたしな 一旦屋敷へ戻るぞ」



冴子が捨てられた生首を拾うや



冴子「ねぇ 幻史 ならこれ持って帰ってもいい? 剥製にしようかと思って」



山吹「好きにしろ」



冴子「やったね クシュン う~ 寒寒ぅ~」



山吹「戻るぞ」



スキャットマン「はい」



彩羽の手を取り、撤退を始めた山吹等本陣



静けさ漂う暗闇に包まれた森に…



張り裂けんばかりに目の見開いたロシア兵 それから はらわたが引き出されたロシア兵やら撃ち殺されたゾンビ、鋭い爪跡が刻まれた感染者などの死体がそこら中に転がり



入り乱れ、激しい戦場と化した森に無数の死体が放置されている



また冷たく横たわるアイビスの死体に…



赤塚の亡骸…



イジャスラフ… タミルトン… 太田… 徳間などのザクトの隊員等の遺骸もそのまま遺棄され…



他にも明神や…



川畑や谷口…



斉藤など、レジスタンスのメンバーの亡骸…



巨大な一頭のツキノワ熊の死骸と…



この森で繰り広げられた戦火に呑まれ、散っていった者達の置き去りな死体は供養される事無く、このまま土へと還って行く事となる



そんな死体だらけな森の中



「Я…(俺だ…)」



携帯に酷似した通信用の端末でさまよいながら会話する1人の男




「Извините, но полковник(残念だが 大佐)



月島の姿が見られた



月島「Все вы люди мертвы(あんたの部下は皆くたばったよ)



ーーーーーーーーーーーーーーーー



北海道 網走市 航空自衛隊第28警戒隊 外周レーダー基地



オホーツク海が見渡せる絶壁に面し、構えられたある警戒基地



ドーム状のレーダーが幾つも設置された小規模な基地内にはプロペラが回されたまま停まる輸送機が幾つも見られ 



バタバタバタバタ



ライトが照射された一機の武装ヘリがオホーツク海から現れた。



Miー8AMTSH 通称ターミネーターと呼ばれる機体だ



バタバタバタバタ



ターミネーターはすぐに着陸態勢に入り、蛍光灯で振られた誘導員に従い着陸



アリゲーターやハボック、ハインドなる最高級な戦闘ヘリが並べられたその列に収められていく



バタバタバタバタ



後を絶たずに再び鳴り響くヘリローター音



オホーツク海にはある一隻が浮かんでいた。



その艦とはセヴァストポリ級強襲揚陸艦 セヴァストポリ



その艦から次々にヘリが羽ばたき網走の地に上陸を行っていた。



バタバタバタバタ



また上陸と共に警戒基地から羽ばたいて行くヘリも見られた



千歳基地にでも向かったのだろうか…



暗く冷たい最北端の地は今騒然とし、ロシア語飛び交う基地内



その基地内のレーダー管制棟にあるとある一室



明かりが灯る一室の窓ガラスには己の姿が反射



暗くて何も見えぬオホーツク海を展望しながら通信端末機でやり取りする男が見られた。



ヴェチェラフ大佐「О, я понимаю Оказывается(そうか 分かった)」



ヴェチェラフは端末を切り、ソファーに投げ捨てると壁に貼られた日本列島の地図へ視線を向けた。



協議、和平交渉などクソ食らえ…



強力な軍事兵器を携え、武力のみの支配を目論む徹底交戦な構え



力ずくなアプローチで上陸を果たしたヴェチェラフの脳裏に浮かぶ文字は…



侵略のみ…



ーーーーーーーーーーーーーーーー



同刻



栃木県 宇都宮市



所々ライトアップされた市街地に



タタタタタタタタ ドカァァ~



ドタドタドタドタ



発砲音や爆発音、おびただしい数の足音が街中に響き渡っていた。



「インスタ映えする盛りヘアー代が10万もかかっちゃったぁ~」



「エンジェル投資家に起業支援金200万頼んだら口座になんと2兆円も振り込まれてた ラッキ~ もう店なんて開かないでこれで遊んで暮らそう」



「うぁあああああ~」



タタタタタタタタ タタタタタタタタタタタタタタタタ



新聞紙や広告紙が舞い上がるスラム街のように荒れた道をあらゆる場所から数え切れない奴等が現れ、音目掛け突っ走ってきた。



そんな血に飢えた迫り来る集団を迎え撃つのは



ZACTゾンビ殲滅隊



大内「どけぇ 噴射する」



岩渕班のメンバーである1人、大内が大声を張り上げた。



そして



手にする一本のホース、そのノズルからある液体を噴射した。



ブシュュュュ~



強力な水圧と長さで噴射された液体は向かって来る群れにぶっかけられ



大内はすぐさま違うホースに持ち変え



大内「集団火葬だ」



シュボボボボ~



今度はノゾルから火炎を吹き出した。



液体を浴びた群れに火炎放射器の炎が放射されたのだ



ゾンビが浴びたその液体とは軽油



ゾンビの群れはたちまち火だるまとなり、火は群れ全域に燃え広がった。 



また



他の区画では



キュイイイ~



ドドドドドドドドドドドドドド



重量感ある発砲音 6本の回転した銃口から1秒間に100発もの弾が吹かれた。



重量100キロ近いガトリングガンを軽々と操る男



2メートルの巨漢な黒人



アベバオだ



向かって来るゾンビの群れは一瞬にして穴だらけのミンチ状態と化し



10秒たらずで周囲は一掃された。



後ろで見守る新入りの隊員等がその光景に唖然とし、言葉をこぼした。



「おいおい たった1人で3~400体を掃除かよ… すげぇ なんてもんじゃねえぞ」



一方



これまた別の区画では



片側4車線はある大通りの十字路交差点に大型バスやらダンプカーが□型に並べられ道を封鎖、隙間無く囲まれた中央には消防ハシゴ車が停車



その消防車から歩道橋にハシゴが掛けられ、登り下りする隊員等の姿が見られる



その歩道橋からスナイプする隊員、歩道橋の階段に組まれた強固なバリケード前に群がるゾンビ等に弾を撃ち込む隊員



夜も更けた市街地はある意味にぎわい



途切れる事無くゾンビ等が集まって来る



そんな中



1台のダンプカーの荷台に2人の男女が見下ろしていた。



1人は少女 通っていた高校のだろうごくごく普通なブレザーの制服姿、腕にはプロテクターの様な物が装着され、腰には日本刀らしき物、髪はポニーテールで結まれ、元高校生とは思えぬ大人びた顔立ちに発育したグラマーかつスレンダー体型



既に色気を漂わせる女子



ザクト 東部方面隊 ゾンビ殲滅関東第3刀刃隊



胡座(あぐら) 千恋(ちこ)



そしてその隣りにはバットを担いだ男



あの純やの姿があった。




チコ「純やさん 4勝4敗だからね 今日で勝負は決まりそうね」



純や「うん ぜってぇ~ チコちゃんには負けないし」



カーキ色のツナギ姿



純やの上腕部もプロテクターに覆われ



愛用する金属バットのグリップ底には何やら機械系の装置が嵌められ、そこから伸びたワイヤーが張り巡らされ、バットにぐるぐる巻きにされている。



チコ「あたしこそ絶対に純やさんになんか負けないから 例のDVDはいただきよ あたしが勝ったら頂戴よ 約束はちゃ~んと守って貰うからね」



喋れば十代丸出しな少女



チコが腰に携(たずさ)える鞘から日本刀を抜いた。



それはオモチャでも模造刀でも無いモノホンの真剣



チコは刀を一振りし、下を見下ろした。



2人は何か賭け事をしているようだ…



純や「そっちこそ俺が勝ったら約束守ってよ」



すると チコは軽蔑な眼差しでジィーと純やを目にした。



純や「え? な…なに?」



それからボソッと口にした。



チコ「頭の中はそればっかなの? この変態オヤジ」



純や「へ… 変態! オヤジ?」



やり取りする2人のすぐ下では腕を伸ばし、群がる奴等がひしめいている。



ザッと40体って所…



チコ「じゃあ お…」



そしてチコが日本刀を両手に、先手で飛び降りようとした時だ



2人の間を駆け抜け



チコよりも先に降り立った男がいた。



そいつはゾンビの群れの真後ろへと着地



チコ「え?」



純や「あ! お…おい おまえ」



2人より先に降り立った男とは



背中から異様な2本の触手を生やす男



あの江藤だった



2人は降りるタイミングを逃し、完全に出鼻を挫かれた。



純や「ちょいちょいちょ~い 江藤 何邪魔してくれてやがんだ」



江藤は降り立つなり、背中から伸びた2本の触手で群れを攻撃した。



振り向いたゾンビの両目に突き刺し



次の瞬間



触手がスクリュー回転しながら円を描くやゾンビの頭部は一瞬にして粉々に弾け飛んだ



そして



シュ



伸ばされた2本の触手で



今度は両サイから横一線の斬撃をくわえた。



スパ スパと面白い程ゾンビや感染者の首が取れ、ボトボト転がる頭部



また向かって来る感染者に目を向けるや触手を伸ばした



首に巻きつけ、一体は投げ飛ばされボンネットに激突、もう一体は引き寄せるや額にブスリ



サバイバルナイフが突き刺される



そして江藤は大群で押し寄せる群れに1人で突っ込んで行った。



チコ「ほぇ~ 相変わらず江藤さんの戦いっぷりって圧巻ですのぉ~」



チコは刀を鞘に収め、しゃがみ込むと頬杖をつきながらその光景を見入った。



純や「あ~ あいつ… 台無しにしやがって」



チコ「フフ お預けなようね」



2人が観戦する中



バッタバッタと感染者やゾンビが江藤1人に掃除されて行った。



チコ「あ 危ない」



背後から江藤に飛びつき、腕にかぶりついた感染者



だが 歯型がつく程度で歯は通らず、江藤は振り返るや感染者の首根っこを掴み上げた。



チコ「ねぇ今噛まれたよね?どうなってんの?」



純や「今更? あいつに感染はきかない ってかもう感染者だからね あいつが言うには例えるなら俺やチコちゃんが象に噛みつくよなもんらしいから」



チコ「象さんに… つまり皮膚が硬くて歯も通らずか… やっぱ無敵って事よね」



純や「まぁ そうゆう事だね ぶっちゃけ言うと部隊出さずにあいつ1人にやらせとけばいいって話しになるんだけど」



チコ「へぇ~」



すると



江藤「ちょっと純やくん 変な事吹き込まないでくれる」



純や「聞こえてるんかぃ」



江藤「ねぇ それよりコソコソと一体何を賭けてんの?」



純やは焦りの表情を浮かべ



純や「おまえには関係ねぇーから」



チコ「え?言ってないの? あたしのヴァージンですよ」



純や「お…おい チコちゃん」



チコ「ヴァージンだって言ったら勝負に勝ったら一回だけやらせてくれぇ~て せがまれちゃって いやらしい目でジロジロあたしの身体を見てくるから困ってたんです」



江藤「は~ 純やくん 相手は未成年だよ」



純や「うるせぇ~ 黙って討伐に集中しろよ」



チコ「フフフフ」



喋りながらも次々とゾンビ等を駆逐していく江藤



江藤「ならチコちゃんが勝ったら?」



ダンプの荷台に腰かけ、足をぶらつかせるチコ



チコ「あたしミスチルの大ファンで 勝ったら幻の限定ライブのDVDくれるって ねえ」



純や「う…うん あぁ そうだよ」



チコ「あはぁ~ 超動揺してやんの 可愛い~」



江藤「へぇ~ そうゆう事か」



純や「だからおまえは本日の大事な大事なクライマックス戦を割り込んでブチ壊したんだぞ」



江藤「あ~ それはごめんね~」



チコ「プッ ハハハハハハハハ」



純や「何がおかしいんだチコ」



チコ「ハハハハハハハハ 別に~ あ~ おかしい」



こうして激しい市街戦は朝方まで続けられた。

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