第168話 撃攘

明神「くたばれ メス豚」



明神がトドメの攻撃を繰り出そうとした寸前



「くたばるのはテメェーだ」



安全ピンが抜かれ、すぐ真横から飛び出してきた青木



そして青木は手にする手榴弾を肉塊の盾へと押し込めた。



明神「なっ」



その3秒後



ボォォォ~~



手榴弾が炸裂、爆発した。



爆風で吹っ飛ばされ、木の葉の上をゴロゴロ転げた青木がすぐに起き上がり、確認を急いだ



どうだ…



ライトを照らすと



明神「ぐぅああああ~」



肉盾どころか右肩から腹部にかけ大きくえぐられ、消失する明神



やった… 上手くいった…



今がチャンス



青木はすぐさまMPを構え、発砲した。



パスパスパスパスパスパス



まずは左の羽を撃ち抜いた。



ボロボロとなりこれでもう100%飛ぶ事は出来ない…



一気に勝算を見いだした青木は畳み掛けの銃撃をお見舞いしようと明神に近づいた



その時だ



シュルシュルシュル



バキューム型の触手がいつの間にか通常の形状へ戻り、青木の胴体に巻き付いてきたのだ



しまった…  うぐぅぅぅ



上腕部から巻かれ、絞められた青木はサブマシンガンを落としてしまった。



身体が浮き上がり持ち上げられた青木を触手が締めあげる



青木「うぐぅぅ クソ…」



その間 天を見上げ虚ろな表情の明神は呻き声をあげていた



明神「あぁ~ ぁ~」



えぐられた箇所からブクブクと泡立てながら…



くっ… クソ… あいつ修復してやがるのか…



青木「ぐぅ くわぁぁあ」



締め付けが強められ、苦痛の叫び声をあげた。



クソ… ここまで来て…振り出しになんて戻してたまるか…



骨が軋む程の強い縛りを受ける中、青木が懐に右手を突っ込んだ 



明神「あぁ~ あぁ~」



明神は修復に専念してる為か動かない…



空を見上げたまま立ち尽くしている



苦痛に満ちた表情で懐をまさぐる青木がある物を掴んだ



青木「ぐぅう…く 明神 テメェーはここでくたばるんだよ」



懐から取り出されたのは拳銃マカロフ



そのマカロフを触手に押し当て発砲した。



パアーン



すると巻きつきが解かれ、触手が空中でのたうつ



青木は着地するや明神めがけ発砲した。



パアーン パアーンパァンパン



顔面にヒットされ肉片と血潮が弾け飛ぶ。



そして青木はすかさず明神の胸板を蹴りつけた。



それから倒れ込んだ明神の胸を踏みつけ、続けざま発砲をおこなった。



青木「おらぁぁぁ~」



パァンパンパンパン



鼻から上がグチャグチャに損傷



だが… こいつはこの状態でもまだ生きている…



青木は最後の一押しとばかりに明神の口に拳銃を突っ込ませた。



青木「さぁ~~ とっとと往生しろやぁ~ おっさん」



そして引き金をひいた…



のだが…



ガチ ガチガチ



ここにきてまさかの弾切れ…



なんだと… ざけんな…



青木はすぐにマカロフを投げ捨て、MPを探した。



そして振り返った



その時だ



シュルルシュル



青木「うぐっ」



明神「あぁ~~ ハッハッハ」



背後からまたも触手が首に絡みついてきた。



明神「あおきぃぃ~~~」



青木「くふぅ」



首が絞められ、地面に叩きつけられ、起こされ、明神と真っ正面で吊し上げられた。



マジか… ぐっ…



明神「あ~ハハ 惜しかったなぁ~ おまえにしては中々やるじゃないか」



ムクッと上体を起き上げ、グチャグチャになった頭部が早くも泡だちはじめる



胴体同様頭部も再生がはじまったようだ



明神「ハッハハッハ しかし相変わらずな詰めの甘さだ… おまえらしい ハハハハハハ 所詮おまえはこの程度の男だったって事だ…」



青木「うぐぐぐ」



明神「まぁ ここまで俺様を追い込んだそのガッツだけは誉めてやるが…」



チッ クソ… あともうちょっとの所で…



明神「これが元通りになるまでしばし時間がかかる 元に戻った暁には美菜萌は勿論の事おまえの仲間達もじっくりたっぷりコトコト煮込んで血祭りにあげてやろう ハハッ 心配せずともあの世に送ってやるから おまえは先に行って待ってるがいいわ ハッハァ~」



首への絞まりが強められ、爪先立つその足が浮かされた。



青木「かぁ…」



チクショー… チッキショー…



明神「ハハハハハハ 残念だったな青木 今度こそ死にさらしやがれ」



完全に足が浮かされ、首吊り状態な青木は苦しみと無念の表情を滲ませ明神を睨み付けた。



クソ… クソ… こんな所で…死んで… 



意識が段々遠のいてきた。



ぼやけてきた視界の中、青木の頭に浮かんだのは美菜萌の顔



美菜萌さん… ごめん… 明神の言う通りどうやら俺はここまでの男だったようだ…



もっと話しがしたかった…



守れなくて…



青木「ご…めん 美菜…萌…さ… 駄目…み…たい…」



虚ろう青木の目蓋が閉じられた時



青木の耳元で声が聞こえてきた。



「そんな事無いよ」



声を耳にしパチッと目蓋を開くと隣りにはあの美菜萌がいた。



ザクッ



そして触手にスピアが打ち込まれ



ブシュー



切り裂かれた。



切断され、足を着けた青木を受け止めた美菜萌



次いで…



「青木 ここまでやれば上出来だ あとはまかせとけ」



横目にした青木の目に映ったのはあの麻島と海原の姿だ



みんな…



美菜萌が青木を抱えるとすぐに首に巻き付く触手を剥がし、後ずさった。



明神の胸板が踏みつけられ倒すと、MPを構え見下ろす麻島が口を開く 



麻島「排除する」



明神「ゲッ ハハハハ ザクトのザコ兵どもか… テメェーらなど…」



パスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパス



サブマシンガンが連射され、蜂の巣にされるや首もとから上がほぼ消失した明神



下品な笑いと言葉は無くなったが



泡立ちは続いた。



頭部を破壊しても尚再生が行われる明神を見下ろす麻島が



麻島「用意はいいか?」



海原「いつでも」



麻島が手榴弾を手に安全ピンを摘まむや



ピン



無言で手榴弾を胸に落とし、後退した。



すると



ボォ~~~~~ン



手榴弾が爆発



そして



続けざまに2~3個の手榴弾が海原によって放り込まれた。



ボォ~~~ ボォ~ボォ~ン



美菜萌、青木の目の前で連続的な爆発



また安全圏で待機する2人が身構えながら様子を伺った。



爆発がおさまり、辺りに静けさが戻るとともに明神に動きは見られない



やったか…?



海原が確認で前に出た。



麻島は第2弾に備え、身構え



青木と美菜萌は固唾を飲んだ



どうだ… 頼む… 生きてんじゃねえぞ…



死んでる事を強く願う青木



そして確認する海原の口から…



その願いが通じたのか…



海原の口から発せられた。



海原「目標 排除成功 死んでます」



明神の跡形も無く飛び散った肉片と焼けた肉塊の残骸が確認された。



再生反応はもう見られない



海原「大丈夫 死んでます」



麻島「ふぅー」



麻島がホッとさせ、銃器を下げた。



青木、美菜萌、麻島、海原によってクリーチャーと化した明神は完全に始末された。



青木「ゲホォ コフォ ゲホ」



麻島「大丈夫か青木?」



咽せ返る青木の背中を擦る美菜萌



青木は咽せながらサムズアップ(親指を立てる)のサインを送った。



そして麻島、海原が2人の元へ近づいた時だ



「ゴオオォォォォ~」



獣の咆哮が響き渡ってきた。



麻島、海原、美菜萌が森を見渡す



美菜萌「え?」



海原「何だこの鳴き声は 熊か…」



声からして少し距離はある



麻島「何だか知らないが構うな すぐにこの森から離脱する ホームへ撤退するぞ」



海原「了解」



美菜萌「はい」



海原「歩けるか?」



青木「ゴフッ ゴホォ 大丈夫…」



今作戦に参加した赤塚班



強襲スペツナズの侵攻を撃破したものの



多くの犠牲を払い生き残ったのはたったの4名のみ



青木、美菜萌、麻島、海原の4名はこれにて帰還する



その青木等が撤退をはじめた数百メートル程先の森の中…



バキバキ 



暗い森の中で大木のへし折られる音が鳴り、倒される 巨大な黒き体毛の猛獣が見られた。



「ガアアァァァァ~~」



鳴き声をあげ、起き上がるや逃走を図ろうとする一頭の巨大熊だ



「ゴオオォォォォ~」



巨大熊は威嚇声をあげ、その先から向かって来る者におののいている様子が見られた。



先から歩み寄って来たのは1人の幼き少女



巨体な大熊がその近づいて来る少女に恐れをなしていた。



ガサッ ガサッ



「ガフッ グゥオゥゥウウウ~」



威嚇の声をあげながら後ずさる熊の前に現れたのは早織と同い歳くらいの少女



彩羽だ



バスタード最強ランクの少女が大熊と対峙した。

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