第150話 救護

立ってるのがやっとな程の振動に柊、ポン吉が転んだ



ポン吉「あややや 何々」



臼井「今度はなんだ……」



各所で落盤した土の塊が砕け、土煙舞うトンネルに大きな物体が迫りつつある



ぐらつく御見内、エレナ、村田が壁や天井にライトを当て警戒



エレナ「なんかヤバいのが出てきそうね…」



御見内「あぁ…」



村田「100パーだろ 揺れが尋常じゃない みんな気をつけろ」



すると



ゴゴゴゴゴ



ひときわデカい横揺れが起こり、全員耐えきれずに倒れ込んだ



ポン吉「うわぁ~ 怖い 何これ」



すぐさま 天井、壁にライト光が当てられた



その時だ



ゴゴゴゴゴ



そいつは…



坑道に差し込む光の先から…



トンネルの先… 正面から…



身体をウネウネさせながら堂々と向かってきた。



周囲にばかり気を取られていた御見内達の前に、蛇よりも小刻みな蛇行運動で迫って来た巨大生物



そして そいつは御見内等の前で止まった。



円形の口に生え揃う牙が無秩序に動き、涎が垂れ落ちる



ポン吉「あ…あ…」



柊、臼井、ポン吉が現れたそいつに唖然とさせ たじろいだ



今までの奴より2~3倍はデカい巨体なのだ



トンネル半分のスペースを埋め尽くし、行く手阻んだ巨大デスワーム



村田「クソ こいつらのアタマか…?」



御見内「はたまた母親か…」



グイィィイイイィィィ~~



鳴き声と共に発せられた悪臭な吐息にエレナは鼻を押さえた。



ボガ ボコ ボゴ



そして背後からもニョキっと3体のデスワームが現れた。



村田「クソ 挟まれたか」



3体は現れるなり、襲いかかろうとした瞬間



ギイイィイイイィィイ~



巨大デスワームが鳴き声をあげるやピタリと動きを止めた3体を目にした御見内



今の鳴き声で襲うのを止めた… 明らかに従った行動…



こいつらのボスである事は間違いないな…



こいつを倒さぬ限り、外には出れねぇ~て事か…



そして御見内が前に出た。



すると エレナも飛び出し横についた。



御見内「エレナ 倒す自信はあるか?」



エレナ「ねぇ あたし達ってなんかヤバくない? こんなグロいモンスターを前にビビらないなんてさ 当たり前でしょ」



御見内「どう殺る?」



エレナ「そんなの撃って 撃って 撃ちまくるのみよ」



そう口にし、迷い無きエレナが小銃の引き金を引いた。



タタタタタタタタタタ



ひとタイミングあとに御見内も続き、弾丸が撃ち込まれた。



ギェエエエ~



タタタタタタタタタパスパスパスパスパスパスタタタタパスパスタタタタタタタパスパス



ワーム(口)にブチ込まれ、壁や天井を破壊しながらもがき暴れるデスワームにひたすら撃ち続ける2人



タタパスパスタタタタタパスパスタタタタタタタタタタタタタタパスパスタタタタパスパス



その間 2人の発砲と同時に村田も振り返りざまで発砲を行っていた。



3体に向けての乱れ撃ち



村田「おまえ等も早く撃て」



村田の掛け声で倒れ込んだポン吉も加勢、発砲に転じた。



タタタタタタタタタタ タタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ



ポン吉「うおお~ 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね~」



巨体が打ちつけられ、脆くも剥がれ落ちる土壁



巨大デスワーム相手に気迫で押したエレナが徐々に一歩づつ踏み出し、御見内もつられて前に出た。



タタパスパスパスタタタ タタタタタパスタタタタタ



銃弾を受け、暴れるミミズの1体が苦し紛れに粘液球を吐き出す寸前 



タタタタタタタタタタ



村田がそいつに集中的銃撃を行った。



ミミズは大きく仰け反り、天井に粘液を吐き出してからそのまま萎れた花の様に崩れ落ちた。



ポン吉「うぉおおぉお~ 早く死ね早く死ね死ね死ね さっさと死ね~」



恐怖で軽い錯乱状態に陥ったポン吉はムキになり、銃撃を行う



そんな中



柊がふとある物を懐から取り出し、チェックした。



チャージ52%… これならいける…



タタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ



薬莢が散乱、数十発撃ち込むもまるで倒れる気配が無い巨大デスワーム



このままじゃ先に弾が尽きる…



倒せない…



そう感じたエレナが御見内の発砲を止めさせ、いきなり前に飛び出した。



御見内「おい エレナ」



発砲しながら真っ向から突っ込んだエレナは、暴れ、振り回す頭部の隙間をかい潜りデスワームの側面へと入り込んだ



御見内「何をする気だ」



そして至近距離発砲でボディーに撃ち込み、移動したエレナ



五月雨流し撃ちを受けた巨大デスワームは更に激しく暴れまわり、壁や天井に頭部を打ちつけた。



強打で天井や壁に穴が開き、徐々に崩壊していく坑道



巨大デスワームがエレナへと振り向きリターンしようとするが阻まれ、強引に壁を壊しながら方向転換しはじめた。



体表に穴が開く度、不自由にも暴れまくるデスワームによって崩落した大量の土が降り注いだ



タタタタタタタタタタ



村田、ポン吉の連射で最後の1体も倒れ、死滅された3体が骸と化し



ポン吉「ハァ~ どうだぁ~ ざまぁ~みろ」



興奮状態へと変わったポン吉の目の前に…



ドカン



ポン吉「わ」



突然大きな土の塊が落下し、割れた。



村田、ポン吉が天井を見上げると無数の亀裂が生じ崩落しかかっているのが分かった。



村田「こっちは始末した」



ポン吉「やばい このトンネル崩れかかってるよ」



臼井「あぁ あのデカい奴の暴れを止めないとこのままじゃ落盤で生き埋めになるぞ」



その時だ



柊「御見内さん こいつが使えるようになった これで倒せる」



柊が示したのは電撃発射装置だ



村田「なら早く撃て」



御見内「駄目だ 今撃ったらエレナまで巻き添いになる」



村田「エレナが? どうした?」



御見内「中に入ってった」



村田「なに?」



臼井「でもあいつの動きを止めなきゃ マジでみんな死ぬぞ」



ポン吉「やばい やばい どんどん脆くなってるよ」



暴れる度 崩れていく土壁を見上げた一行



すると



御見内「エレナをこいつから引き離す」



村田「おい 馬鹿言え 無茶を言うな こん中突っ込むつもりか」



御見内「エレナが奥にいるんだ 合図を送ったらその必殺武器を撃ち込んでくれ」



柊「分かった なら急いで」



御見内「あぁ」



そして御見内がもがき暴れる巨大デスワームに向かって走り出した。



村田「どうかしてるぜあのカップル」



一方



発砲を続けながら奥まで進んで行たエレナ



何て長さ…



全長20メートル以上はあるか…



まだ尾っぽが見えない…



そのまま奥まで進んで行くと



エレナは出口であろう穴へと到着した。



そして発砲の手を止め、見上げた時



なんて事…



エレナは愕然とさせた



何故なら巨大デスワームの身体は穴から入り込み、外まで続いていたのだ



そして当然穴はその身体によって塞がれ、ハシゴも壊されていた。



このままじゃ外に出れない…



ダラリと小銃を垂らし、絶望感に襲われた時だ



ボコッ



ミミズの背中部から生えたある太い管に気づいたエレナ



その管がボコッと音をたて動いているのだ



なに…



エレナは小銃を身構え、その管を照らした。



ボコッ



管が膨らみ、萎むとまた膨らみ萎むを何度も繰り返している。



何が始まるの…



エレナに緊張が走り、不気味に動く管に照準を合わせた時だ



管が急激膨らむや小刻みに動き、何かを外へと吐き出した。



管から吐き出された物体はドロドロの粘膜の玉に包まれ、地に落ちる。



エレナは即座にその転がる物体を照らした。



包まれた粘膜の中でゴソゴソと何やら動いている。



生き物…



凝視するエレナの目の前で



その動く生き物が粘膜を掻き分け、出てきた



幼虫のデスワームだ



キィィィィ~



そいつは小さな鳴き声をあげ、地を這いはじめるや、そのまま地中へ潜ろうとした。



生まれたばかりの幼虫が土の中に逃げ込もうとした寸前



タンタン



身体は弾け、撃ち殺された。



エレナはこいつを産み落とし、吐き出した太い管を見上げた。



この管… 生殖器官…



って事はやっぱりこいつはこの化け物共の親玉で…



母親って訳ね…



エレナは小銃を生殖器に向け、狙いを定めた



その時だ



蛇行で波打ち、いきなり膨らんできた身体がエレナの胸部に接触



目の前が真っ白になり唾液が吐き出された



エレナ「かはっ」



エレナは吹き飛ばされ今度は壁に激突



強打し、ずり落ちた身体



エレナの意識は急激に遠のき、ガクンと首を垂らして目を閉ざした。



∩の字で強引に移動しようとする巨大デスワームが嵌まり身動きが取れずにいた。



ギイイィイイイィィイ~



それでも力づくで側壁を破壊しながら少しずつ前に進むデスワームに完全通せんぼされた御見内は1本の弓矢を取り出し、それをボディーへと突き刺した。



そしてそれを唯一の足場にジャンプ



デスワームの身体をよじ登っていった。



暴れる身体は荒々しくS字に波たたせ、よろけつつもデスワームの背中を伝って駆け出した御見内



エレナ…



ーーーーーーーーーーーーーーーー



頭が完全に下がり、気を失ったエレナの身体が横へと倒れ込んだ



そんな中



背中から生えた生殖器官がまたも動き出し



膨張と縮小を繰り返す管から新たな生命が産み落とされようとしている。



そして、粘膜に包まれた玉が管から再び吐き出されエレナの目の前に転がった。



脈動する粘膜の殻を突き破り姿を現した赤子のデスワーム



キュイィィィィ~



そいつは地を這い、エレナの周辺を動き回るやエレナの存在に気づいた。



そして幼虫がエレナに近づいてきた。



幼虫はワームの中から1本の触覚のような物を伸ばすやエレナを調べはじめる。



脚部や胴部、眠ったように意識を失うエレナの頬に触覚が触れ



調べ終えると



幼虫は触覚を口内へ仕舞うや大口開き牙を剥き出した。



食料発見 頂きますっと言わんばかりに無防備なエレナに襲いかかろうとした



その瞬間



シュ



鋭利な突起物が幼虫の背中に突き刺され、グイッと引き寄せられるやバタバタともがいた。



縄の付いた投げ槍



打根が突き刺されていたのだ



その先にはデスワームの背中に乗り縄を引く御見内の姿があった。


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