第151話 生還

反り返ったベイビーデスワームが…



グシャ



ジャンプした御見内によって踏みつぶされた。



エレナ…



横たわるエレナを目に御見内はすぐさま駆け寄り、心臓に手を当てた



ドクン ドクン



伝わってくる鼓動が感じられ



良かった… 生きてた…



一瞬 ホッと目を閉じそのままエレナを姫様抱っこで抱えあげると



御見内は巨大デスワームの体躯から離れつつ腹の底から大きな一声を発した。



御見内「撃てぇ~~~~」



坑道を流動し響き渡って来た御見内の声



柊等がその合図を耳にした



いつでも放てる様スタンばる雷銃



ギィイイイィィィイイイ~



そしてのた打ち回る巨大デスワームにMOT発射装置が向けられた。



柊「合図が来た みんな危ないから後ろに下がって」



村田「あぁ」



村田が小泉を引きずりポン吉と共に後退



臼井「もう撃てないんじゃなかったのか…」



柊「思ったよりチャージが早い ってもまだ50%で半出力だけど…」



臼井「あの巨体だぞ フルでなくて大丈夫か?」



柊「こいつを大人しくさせるにはもうこれしか手は無い 大丈夫 上手くいくよ さぁ 下がって」



臼井「神頼みか…」



臼井も数歩さがると



ギィイイイィィィイイイ



ガンガン壁に押し当て暴れる巨大ミミズにロックオン



電撃発射準備オーケー…



不規則に動く円形の牙、撒き散らす涎



荒れ狂うデスワームの口に照準を合わせた柊が発射ボタンに指を添えた。



確かに… ここまでデカい相手にこれが通用するのか分からない…



まだ不完全な状態のこれで…



倒せるか…



分からない…



でも… こいつで倒せなきゃ俺達全員ここで死ぬ…



頼む…



反動に備えた姿勢を取り



神に祈った柊



いけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ……



そして発射ボタンが押された。



ピカッ 



射出口から飛び出したぶっ太い稲妻の閃光が暗い坑道を明るく照らし



サンダーボルトが巨大デスワームを直撃した。



電撃を受けた巨大デスワームが小刻みに巨体を震わせ反り返った。



痙攣したかのように…



先程までの暴れが嘘のように微動でおさまりを見せた巨大モンスター



臼井「効いてるぞ」



発射装置から放電し続けられる中



エレナを抱え込んだ御見内が振り返ると、体表から煙りをあげたデスワームを目にした。



強力な電撃がモンスターの体内を流れているのが一目で分かった



またプス プスと音が鳴り出し、肉の焼ける臭いもしてきた。



村田「おい 見ろ」



通電で動きが取れないにも関わらず巨大デスワームが苦し紛れに粘液球を吐き出す仕草を見せた。



臼井「あの粘液の攻撃をするつもりだ 早く倒せ」



柊「分かってる 早く死んでくれ…」



装置から放電しっぱなしの雷撃を喰らわせているのだが、サイズがデカい為なのか… なかなかしぶとい巨大デスワームに焦りを見せる柊



クソ… このままじゃ…



デスワームの喉元が膨らみ、粘液球が吐き出される寸前



駄目だ…



こうなったら…



柊が装置の出力を最大限まで上げた。



すると



稲妻の筋が一層太くなり放出、衝撃によって装置が破裂した。



砕け散って壊れた装置と、反動で後ろに吹き飛ばされた柊



更なる雷光によって明るさが増した坑道で強力な雷を受けたデスワームに変化が見られた。



内部から引火し、いきなり表皮が燃え始めたのだ



ギィイイイイイイイイ~



180度まで反り返ったデスワームが今までで一番大きな鳴き声をあげた。



吹き飛ばされ、尻餅をつけた柊の目に、村田、ポン吉が見守る中



ドスン



反り返った頭部が落ち



巨大デスワームは死滅した。



柊「や… やったか…?」



再び暗闇に包まれた坑道でピクリとも動かなくなったモンスターがライト光に照らされ、柊に手を貸した村田



村田「あぁ 死んだ 倒したよ」



一方



ドスン



出口を塞ぐ尾っぽがずり落ち、陽の光が穴から差し込んできた。



エレナを抱き上げた御見内は出口へと歩み、見上げた。



眩しさに目を細めながら…



そして気を失うエレナに目を向けた



その時だ



天井の亀裂がいきなり拡散しはじめた。



土の破片がこぼれ、側壁にも裂け目が広がっていく



崩れるのは時間の問題…



崩壊したハシゴを見つめ



出口を見上げる御見内の元に…



村田達が駆け足でやってきた。



ポン吉「出口だぁ やったぁ わぁ」



ポン吉が頭上からふってくる土の塊に驚く



村田「崩れるぞ 早く脱出だ」



そして御見内、村田、臼井、柊、ポン吉が出口となる穴を見上げ陽の光を浴びた。



臼井「眩しい 久々にお日様を浴びた気がするよ」



御見内「それより問題発生だ ハシゴが壊されてる」



村田「なに?」



ポン吉「えぇ~ ここまで来て上がれないの?」



御見内「俺達だけなら何とかよじ登ってイケそうなんだが 問題は…」



重体の小泉、百村 そして気を失ったエレナに視線を向けた御見内



村田「怪我人か…」



御見内「あぁ この3人を引き上げないと」



村田「って事はロープのたぐいが必要か… 持ちあわせてねぇな ここは炭鉱場だぞ 資材降ろしたり、石炭引き上げるのに滑車とかエレベーターとか使ってなかったのかよ?」



臼井「恐らく 廃鉱になった際に撤去されたんだろ 解体されてそのまま放置されてるかもしれない… 縄かロープぐらいなら一緒に置いてあるかも」



ポン吉「ねぇ でもどうするの?こんな所登れないよ ゴールまで来て 生き埋めなんて俺 嫌だよ」



村田「5~6メートル… よし 分かった これくらいなら余裕だ 俺がよじ登って探してくる 彼を持っててくれ」



柊「はい」



柊に小泉を引き渡し、村田がデスワームの死骸に上がるや壁にしがみつき、スイスイと這い上がっていった。



ポン吉「すげぇ」



臼井「しかし… 何てバカデカいミミズなんだ こいつ全長何メートルあるんだよ…」



息絶えたデスワームを指さした臼井



柊「10メーター いや 20はあるか…」



御見内「やはりこいつは母親だったみたいだ 50年間こいつによってひたすら繁殖されてたんだよ」



臼井「って事は一体何匹いるんだ… 頼むぜぇ 子供達はまだその辺にウヨウヨいるんだからな 早くしてくれ」



ドン



突如天井の一部が落盤する



ポン吉「わぁ ねぇ まだ? まだ? 早く早く 崩れちゃうよ」



御見内「ポン吉さん 落ち着いて 大丈夫だから」



ポン吉「これのどこが大丈夫なのさ」



臼井「少し黙ってろ ジタバタしたって仕方がないだろ」



ポン吉「うぅ… はい…」



すると



上から縄が垂らされてきた。



村田「ビンゴだ あったぞ 古い縄だが まぁ大丈夫だろ 最初に誰か上がって来てくれ 一緒に引くのを手伝え」



皆がポン吉に視線を向け



臼井「ほら お望みだろ」



ポン吉「はい あ 行きます 自分が上がりま~す」



村田「よし それを身体に結べ 引き上げる」



ポン吉「はい」



ポン吉が背負っていた百村を臼井に引き渡した時



臼井「…」



臼井は受け取ったと同時にある異変に気づいた



百村をそのまま地べたに寝かせはじめたのだ



御見内「どした?」



そして 喉元の脈に触れ、胸に耳を押し当てた。



ポン吉「オーケーです」



親指を立てたポン吉が引き上げられていく中



臼井「死んでる…」



柊「え?」



御見内も脈に触れ、口に手を当て、心臓に手を当てると



氷のように冷たくなった身体…



百村は既に息絶えていた。



御見内「そっちは?」



柊「大丈夫 まだ心臓は動いてる」



ポン吉「お~い 次 早く上がってきて」



村田「次いいぞ」



穴から見下ろす2人から再び縄が下ろされる



御見内「まずは小泉さんからだ」



臼井「よしきた」



そして小泉の胴体に縄が巻かれ



御見内「上げてくれ」



臼井「いいぞ」



小泉が引き上げられた。



御見内「次はエレナだ」



柊「ねぇ エレナさんどうしたの?」



御見内「分からない 来たら倒れてた でも命に別状は無いよ ただ気を失ってるだけ」



柊「そう それなら 良かった」



村田「おい 次だ どんどん上がれ」



御見内が垂れてきた縄を掴みエレナの腰に巻き付けた。



御見内「オーケーだ 上げてくれ」



村田、ポン吉によって持ち上げられ、身体が半ばまで吊り上げられた時だ



ドン



御見内等からわずか4~5メートル先で落盤



通路は土砂に埋もれた。



臼井「な…」



御見内「…」



縄が揺れ、エレナの身体が揺すられる下で青ざめる3人



坑道は完全に塞がれ、その光景に絶句する。



村田「おい 何してる? 次だ 次 早くしろ 時間ないぞ」



臼井「柊 先に行け」



柊「あ… あぁ 分かった」



そして自ら腰に巻き、柊が上昇していった。



臼井「なんて冷たさだ… 借りるぞ」



百村の遺体を見下ろし、また百村の89式自動小銃を手にし、肩に掛けた臼井



御見内「その粘液は敵の動きを封じると共に食料として冷凍保存する意味があるんだと思う」



臼井「ここにほっといたら奴等の餌か… 彼の遺体どうする?」



御見内「百村さんも連れて行く」



臼井「だが 引き上げてる時間なんてないぞ」



御見内「こんな所に置いてけない 仲間をみすみす奴等の餌なんかに出来ない 連れ帰る」



臼井「気持ちはわか…」



穴から再び縄が下ろされ



村田「オーケーだ 来い」



柊「次いいよ」



ポン吉「早く上がってきて」



御見内「俺は最後でいい 行ってくれ」



臼井「あぁ ではっ お先に」



縄を腰に結び、オーケーサインを出すや急上昇していった臼井



その間 御見内が百村の遺体を運ぼうと担ぎ上げた その時だ



ドドドド



激しい地鳴りと揺れが発生



坑道のあらゆる箇所が崩落しだした。



村田「マズい 早く上げろ」



3人がかりで急ピッチに引き上げられ、上昇していく中 御見内に向け臼井が叫んだ



臼井「その遺体は諦めろ 早くおまえさんも上がれ ヤバいぞ」



ゴゴゴゴゴゴ



チッ…



クソ… ごめん 百村さん…



御見内は断念、百村の遺体を地面に戻すやすかさず動きだした。



ゴオオォォ~  ドン



先程の村田同様巨大モンスターの体躯に飛び乗り、壁にしがみつくや自力で登りだす



臼井が穴から引き上げられると4人は穴を覗き込み、腕を伸ばした。



臼井「頼む 間に合ってくれ」



ポン吉「おみないさぁ~ん 早く」



がむしゃらに壁をクライミングする御見内の周辺も崩壊がはじまった。



側壁が崩れだし、巨大デスワームの

身体に土が被さると共に



ほんのわずか1メートル先の天井が崩れ落ち、百村の遺体が埋まった。



柊「もうちょっとだ 頑張れ さぁ 手を」



見上げる上で手を差し伸べる仲間達



御見内は一挙手一投足を…



全てを外界脱出に集中させた。



ゴオオォォ~



そして



崩落した土が波のように押し寄せ、デスワームの死骸を呑み込むと同時に



死に物狂いでよじ登る御見内が手を伸ばした。



そしてそれを幾つもの手がキャッチ



村田「よし 掴まえた」



皆によって引き上げられた御見内の身体が外に飛び出した。



村田「すぐに離れろ」



村田の掛け声で4人は一斉にその場から離れた。



その直後



ゴオオォォ~



坑道状に地盤沈下を起こし、崩れ落ちていった地面



百村をはじめ、ZACTの隊員、スペツナズ兵、バスタード、デスワームなど、この坑道で散っていった幾多の亡骸を呑み込み完全に崩壊された。



ポン吉「はぁ はぁ はぁ」



臼井「俺達助かったのか…」





村田「あぁ みんな無事か?」



頷く御見内



柊「なんとか」



隊長である野々宮を失い多くの犠牲を払ったAチーム…



わずかに生き残ったのは御見内、エレナ、村田、ポン吉、そして重体である小泉含めた5名のみ



ポン吉「これからどうするの?」



柊「まずはこの人を治療しないと」



村田「そうだな それにはまず赤塚隊か麻島隊長等と合流しないと」



ポン吉「でも無線は使えないんでしょ どうやって?」



村田「現場まで直接歩くしかない」



ポン吉「え~ 無理だよ 何キロあるのよ もうヘトヘトだし」



臼井「いや 待て 確かに徒歩で向かってる余裕は無い 彼は今 一刻の猶予も無いんだ まずどこかの病院施設に行かないと」



村田「病院か… こんな田舎町にあるかな…」



臼井「診療所でもクリニックでも何でもいい」



御見内「エレナは俺が」



エレナを背負った御見内が口にした。



御見内「駐車場に行けば車がある筈 それを使って探そう」



ポン吉「冗談は止めてよ またあそこに戻るの? 足痛いし 歩けないよ 違う方法考えようよ もう嫌だよ」



臼井「うるさい奴だな つべこべ言うな ほら 歩くぞ」



ポン吉「うぅ… はい…」



村田「決まりだな」



御見内等は休む事無くその場から移動をはじめ、これより小泉治療の為医療施設を目指す

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