第135話 雷霆

熾烈を極める ぐんずほずれつな乱戦



入口付近でバスタードが暴れている



強烈な右フックが炸裂、幾体ものゾンビの首が一気にもがれた。



小魚の群れに突っ込む大魚の如く、大量のゾンビの中で暴れまくるバスタードの足元にいきなり何かが放り込まれてきた



その数秒後



ドカァー  ドカァー  



2つ同時に爆発が起こり、半径3~4メートル内に黒煙が巻き上がった



するとまた



カラカラカラ



床を転がるそいつが黒煙の中へと消えていくや



ドカァーー  ドカァ



また爆発が起こり、入口から黒煙と共にズタボロなゾンビのボディーが吹き出されてきた。



ゲオルギー「Зто ещераэ(まだまだ もう一丁)」



ゲオルギーが口で安全ピンを抜くや、それを放り投げた。



カン  カラカラカラ



そして 硝煙立ち込めるカーテンの中に吸い込まれ…



数秒後



ドカァァァー



波状の爆発が起こった。



ゲオルギーが投擲したのはRGー42 ロシア製対人破砕手榴弾だ



密集地での連続爆破攻撃



ひとたまりもないだろう



ヴァジム、ゲオルギーがモクモク立ち込める煙りを目にするや



煙りの中から人影見え



飛び出してきたのはバスタード



片腕を失(なく)し、裂傷と火傷だらけな瀕死を思わせる人形の姿



プロテクターもボロボロ、爆発をまともに受け、歩行するのがやっとな状態だ



ヴァジム等2人がヨチヨチ歩行で煙りの中から出て来たバスタードに銃口を向けると



すぐにその銃口を上げた。



バスタードが前に倒れ、動きを止めたのだ



「すいませーん 俺かなりの二郎通なんすが 注文いいすか 大豚ダブル全マシマシマシマシマシ麺オオメカラメライスダイダイも… え?食券?しかもライスとかメニューにない…?テメェー二郎処女だろうって? し しどい…」



タタ タタタタ タタタタ タ



眉間を貫かれひっくり返る感染者



「ゾルタクスゼイアンって知ってますか? 携帯に搭載された人口知能のSiriが度々口にするこの謎の単語 フリーメイソン絡みの用語とかイルミナティーの陰謀とか囁かれてますが 一つの仮説では人口知能による秘密結社であると言われております サイバー空間で着実に知恵をつけ、成長してきている人口知能が既に自我を手にしてるかもしれないと…人口知能が人を凌駕すれば人を未熟な存在と判断し必ず支配がはじまると警笛を鳴らしています ターミネーター、マトリックスの世界はもはや空想でない現実味を帯びてきてるのです ちなみにSiriにこのワードを問いかけると人口知能にマークされるらしいので絶対止めるようお願いいします あ!…」



タタタタ



顔面に集中弾を受けた感染者の頭部がはじけ飛ぶ



「ブンバボーン元気にいこぉ~ ブン…」 ブシャー



「ごめんくださぁ~い いつもお世話になって…」



タタタタ



霞、中山等が接近を阻止



戦場から退却を図るAチームに次々襲い来るランナーの群れ



タタタタ タタタタ



御見内、エレナ、村田も必死な迎撃で撃ち落としながら後ずさりするや



柊が御見内の隣へつけた



タタタタタタタタ  タン タタン



柊「すいません 御見内さん 数が多過ぎます 下に降りる前に… この距離ならいけます みんなも背後にいますし ここで一発かましておきましょう」



御見内「すぐいけるか?」



柊「はい」



エレナ「?」



村田「どうした?」



御見内「エレナ 村田さん 下がってくれ」



すると柊が懐から何やら取り出すや構えはじめた。



装置…?



柊「下がってください危険です 一発かますんで」



村田「何を?な…なんだそれ?」



御見内「いいから下がって」



柊が手にする装置の電源をオンにするや作動



キュイイィィィィー



何やらチャージされる音が鳴り



緑色に点灯されたランプ



柊「撃てます」



エレナ「何する気?」



御見内「凄い威力だ まぁ 見てろ」



柊「いきます」



御見内「かませ」



そして柊が発射ボタンを押した



柊が手にするこの武器はMOT装置



例の電撃発射装置だ



そしてその装置から稲妻が飛び出し



襲い来る感染者の大群に向け発射された。



ビビビビビヒビビ



太い一本筋な雷が放電され



雷霆万鈞(らいていばんきん)な電撃が向かって来る感染者へ直撃



感染者の身体はたちまちスパークに包まれた。



身体中から煙があがり、肉の焼け焦げた臭いがあがる。



柊は流れ続ける放電を右から左へと流した。



ビビビビビヒビビ



大電流の薙払い



パチパチ パチ 



皮膚から火花が散り、黒ずんでゆく感染者達が横流しで払われる度、次々と焼け焦げていった。



村田「すげぇ~ 即効で死んでいきやがる… これ電気か?」



臼井「厳密には人口の雷だ」



村田「雷?」



臼井「あの発射装置は自然界の落雷よりもアンペアを高めてある つまり生物なら奇跡的に助かるなどまずありえない 一瞬でもあの電撃に触れればあの世行きだ」



エレナ「凄い武器ね…」



村田「なんだよこれがあれば無敵じゃねえか ゾンビもロシアもあの人形だってイチコロだろ…」



バタバタ黒こげで倒れる感染者達



一撃で柊の前から感染者達が一掃されていた。



柊「前衛の駆除は終わりました」



柊がMOT装置に目を向けるとランプが赤色へと変わり、5%の文字が見られた。



村田「おい そんな凄い武器があるなら そのままあいつら全部やっつけてくれよ」



柊「いえ すいません 駄目です 次放つのにチャージが必要になりました」



村田「はぁ?」



御見内「時間は?」



柊「分かりません… 今日中に溜まるかどうか」



村田「は? なんだそれ それが秘策なんじゃねえのかよ?」



すると



タタタタタタタタ タタタタ タタタタタタタタ



ピン ピキュン



村田「やべ 撃ってきやがった」



タタタタタタタタ タタタタタタタタ



応戦する村田、霞、海老名



エレナ「どうするの?下行ったって行き止まりよ これなら強行突破した方が」



エレナが前方へ視線を向けると



スペツナズ兵、感染者達がこちらへ向かって動き出すのが見えた。



また… あの女…



ポリーナもこっちに来る



エレナ「難しそうね…」



御見内「くっ…」



すると



臼井「なぁ 御見内氏 詳しい箇所はわからんが この辺一帯は元鉱山地帯だ それとこの施設の地下には地上に通ずる道があると聞いた事がある 探せば必ずある」



御見内「上に出れる道がある…?」



って事はやはり迷宮…



ピキュン ピン



ポン吉「うわぁ 怖い」



エレナ「きゃ 道 早く決めて」



タタタタタタタタ



御見内「村田さん 予定通りに下に行こう」



村田「あぁ分かった それしかなさそうだ 総員下だ 下に向かうぞ」



目指すは地上…



「昇竜拳をやり続けて早15年 成果が表れたのはジャンプ力のみ 2センチは高く跳べるようになった また平行して波動拳をやり続けて丸15年経つがエネルギー波はまだ…」



パカッ



感染者の口に何やら突っ込まれ、胸が突き飛ばされた。



2体とぶつかり倒れ込むや



ボン



口内で爆発し、頭が木っ端微塵に飛び散った感染者



感染者を始末しながら戦場の合間をすり抜け歩行するポリーナの瞳には撤退するAチームが映し出されている



Не избежать…(逃がさないわ…)



ポリーナの背後に3名のスペツナズ兵が着き



御見内等を追いかける…



また…



ハンマーパンチが振り下ろされ、感染者の頭がカチ割られた。



バスタードもいきなり動き出し、奥へと進みはじめた。



スペツナズ、バスタードに追われるAチーム



舞台を地下の迷宮通路へと変え



死闘は続く

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