第128話 剛敵

絶命した野々宮の身体を支える臼井の眼前に新たにやってきた戦力



臼井も力無き声でボソッと呟いた。



臼井「もう駄目だ…」



頼りの隊長が倒れ



絶たれた望み



腕や脚を撃たれ、倒れた奴隷達も徐々に起き上がり、室内には100を越える奴隷達で埋め尽くされた。



柊「突破作戦は失敗だ… 神風が吹こうが…奇跡が起きようと こんな大勢を突破するなんて100%無理だよ」



「⇩∂≧&☆★※▲■♢◁」



旗を持つ奴隷が何やら掛け声を発している。



臼井は野々宮の亡骸を強く握り締めまた呟いた。



臼井「明子… どうやら助けられそうに無い… すまない…」



また



柊も膝をつけ、俯き



柊「クソ… 母さん……」



脱出を諦めた柊から数滴の涙がこぼれ、床に垂れた。



生きる望みを失った2人をよそに



ピィーピピピピピピィー



「WΔΩΨΦεθβαμλ①㎣~」



フラッグ野郎がホイッスルを響かせ、声を荒げるや奴隷共が一挙にどきはじめ



ピィーピ ピ ピ ピ ピィー



「☆&‥†■◎✓⇩┤≅⊅」



ふざけた人型騎馬隊が一歩前に踏み出された。



ピィ



そして槍持ちがそれぞれ構えを取り始めた。



騎馬戦で襲いかかろうとしているのだろう…



臼井の瞳に襲い来る騎馬隊を映し、フラッグ野郎がこちらに旗を差し向けるのが映った。



来る…



臼井が更に強く野々宮の死体を強く握り締め、目を瞑った その時



フラッグ野郎がその旗を挙げようとした



その時だ



タン



1発の銃声が鳴り響き



フラッグ野郎の眉間に穴が開かれた。



その音に目を開け、目を向けると



銃殺され、ひっくり返ったフラッグ野郎が映り



視線を送った先に



サブマシンガンを発砲した御見内を目にした。



それは柊も同様



御見内「臼井さん 隊長の弾薬を全て持ってこっちに来い」



柊「御見内さん…」



そう… この絶望的状況にも関わらず まだ諦めていない男が約1名いた。



その名は御見内 道



御見内「なぁ さっき奇跡が起きなきゃ突破は無理だって言ってたな… そんなの必要ない… 力ずくでこじ開けるまでだ」



仏と化す野々宮からありったけの弾倉を掻き出し、御見内の元へと近づいた臼井



御見内「2人共俺から離れるな… ここを突破するぞ」



柊「出来る訳ない…こんな大人数をどうやって…」



御見内「大人数だって…? 笑わせるな これしきの数… これくらい今まで茶飯事だよ」



柊「え?」



御見内が今まで潜り抜けて来た死線の数、レベルは臼井、柊には想像もつかないだろう…



御見内「本気出してやるよ 俺を殺りたきゃもう10倍は連れ来い 突破するぞ ついて来い」



野々宮分隊長は死んだが…



まだ御見内がいる



突破作戦は再開され



2人は御見内の真の力を目撃する事となる。



チッ…… ふざけた旗持ちで音頭なんか取りやがって… うっかり殺しちまったじゃねぇか…



目つきを変え、MPの連射機能をフルオートへと変えた。



ここは運動場じゃねえぞ…



エセ騎馬隊共…



俺様のお通りだ…



死にたくなければテメェー等道を開けやがれ…



指揮者を失い、突撃のタイミングを失った騎馬隊に即座に銃口が向けられるや



パスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパス



横一線に銃口がズラされながらフルオートされた。



土台の奴隷達の脚部が即座に撃ち抜かれことごとく崩れ落ちていく騎馬



上部に跨がる奴隷は落下、手製の物干し槍が転がり、骨董スピアの転がる音も鳴る



野球審判コスチューム野郎、甲冑野郎が顔をあげるや



両肩が撃ち抜かれ、顔を沈めた。



いとも簡単に6つの騎馬は崩され、今度は群れた奴隷共に御見内は銃弾を浴びせていった。



パスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパス



カシャ



ガチ



パスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパス



既に脚や肩、腕を撃ち抜かれ、立ってるのがやっとの奴隷に二度(にたび)撃ち込まれ、再起不能で床に伏して行く



スコープを覗く事無く的確に人体へと撃ち込まれ、面白い程急速に無力化されて行く奴隷達



また…同時にパソコンやデスクトップも一緒に撃ち抜かれ破壊されていく



「◎†@~○☆♡⊿♯☞〒」



掛け声があがり、出遅れた奴隷共が一斉に動き出し、向かって来たが…



遅ぇ~よ… 的共…



フルオートで飛んで行く、無数の高速回転した弾丸が体内へと進入、血と共に貫通させ排出していく



10人 15人 25人…



向かって来る奴隷を全く寄せ付けず



正に御見内の独壇場と化すラボ内にバッタバタと倒れ、床でもがき足掻く人数が増えて行った



そして御見内も徐々に前進をはじめた。



パスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパス



唖然とする2人…



あの格闘家の若竹を倒したのもしかり… この射撃術の高さもしかり…



そして この状況での冷静な判断と一切臆する事無く座ったこの肝



凄い…



御見内「行くぞ ついて来い」



パスパスパスパスパスパスパスパスパスパス



ガシャー



銃弾を受け、跳ね飛ばされた奴隷が腕の入ったサンプルケースに衝突



また棚に衝突し、倒れた棚の下敷きにされる奴隷



次いで御見内は4~5人の塊に自ら突っ込むや



パスパスパス



太腿に流れ撃ちした。



そして飛びかかり、殴りつけた。



バカッ



鼻筋を殴り、こぞって将棋倒しに倒れる。



パスパスパス パス



パスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパス



右方 左方 奴隷達の手首に弾が着弾、凶器がこぼれ、また脚部へ乱れ撃ちされ次々倒されていく



そしてあっという間に突破口が開かれた。



御見内「出るぞ」



2人は頷き



御見内の掛け声でラボを出る。



柊が後ろを振り返るや室内には手足を撃たれ満足に動けぬ奴隷達でひしめいていた。



そして自動扉が開き、3人は通路へと飛び出した。



その飛び出た途端



バン バン



前方から勢いよくドアの開かれる音



またドタドタと幾つもの足音が向かって来る



奴等はまだ半分残っている…



前方 中扉の前で



御見内は立ち止まり、背後の臼井、柊は恐怖で思わず後ずさった。



ドタドタドタ



「@☆■┤≅λ@○♯☆」



扉の先から近づいて来る声



そして立射で身構える御見内の前に…



バン 



押し扉が開かれ



血走る奴隷共が雪崩込んできた。



カチャ パスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパスパス



御見内はMPを連射、排出された薬莢が壁を跳ね、無数床に転がっていく



出現と同時にどんどん撃ち落とされ、跪(ひざまづ)き、寝転ぶ奴隷に御見内が駆け出し



そして一体の胸部を蹴りつけた。



ガシャー



開かれたドアから3~4人を巻き込み奴隷が吹き飛ばされる



御見内が2人について来いのジェスチャーを送り



臼井、柊が負傷しうずくまる奴隷を恐る恐るまたいで渡った。



前方にはもう一つの中扉



御見内は勢いよくその扉を開き、広い空間へと出た。



ダクトやパイプが天井を這う機械室



ついさっきまで殺戮遊戯の闘技場として使われていたこの場所に3人は出た。



3人が見渡すや奴等の姿がぱったり見えない



静けさ漂う機械室



柊「あれ いない… もう全部倒した?」



御見内「いや そんな筈は無い 用心しろ」



御見内が新しいマガジンに取り替え、また緩んだサプレッサー(消音器)を再装着させた。



御見内「無駄な戦闘は避けたい 一気に突っ切よう」



柊「はい」



そして3人が動き出そうとした時だ



カツン カツン カツン



一つの踏みしめる足音が聞こえてきた。



御見内「…」



3人の耳にゆっくりと近づいて来るその足音



臼井「奴隷の群集のじゃない… 誰か来るぞ…」



カツン カツン カツン



柊「えぇ…」



すると



ドタドタドタ 



幾つもの足音と奴隷らしき者の声が響き



「◎⊿‡ª◑◁⇄⇨)」



その数秒後



ピカッ ピカッと光りが見え



ビビビビビビ



「ぐぎぁぁああああ」 「がぁわぐぅぅううう」



3人の視界外で何やら巻き起こる



そして奴隷達の断末魔が響き渡ってきた。



臼井「何だよ… 何だ…」



再び静けさが戻り、そいつの足音のみが近づいて来た



ブシュュュ



パイプから漏れた蒸気が吹き出し



その先に一体の人影



そしてその人影が蒸気を抜けた時



3人の視界にある一体が姿を現した。



そいつを目にした臼井、柊は目を見開き、声をうわずらせる。



臼井「ば… 馬鹿な… なんでこいつがこんな所にいるんだ?」



3人の前に現れたのは…



バスタード

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