第123話 退去

野々宮「御見内さん データから機器 例の験体までこっちは全て処分終わりました」



御見内「こっちも片付きました」



死亡した益良教授 倒れた若竹を目にした野々宮



野々宮「そのようですね ここの他に研究施設は?」



臼井「ここだけだ」



野々宮「って事はあとはここを壊せばもう新たな犠牲者を生む事はなくなる訳だな」



臼井「そうだ」



野々宮「御見内さん それより…」



御見内「えぇ しっかりと聞きました」



臼井「どうしたんだ?」



御見内「俺達とは別に 別動班が今廃病院に囚われた町民の救出活動を行ってるんだが… ある部隊の襲撃を受けたんだ そのやりとりが今こいつに入ってきた」



インカムを指差す御見内



野々宮「その襲撃の部隊というのが例のロシア人…スペツナズって呼ばれる特殊部隊のようなんだ…」



臼井「スペツナズ? って事はヴェチェラフ大佐のあの部隊か…それはかなりヤバい事態だぞ」



野々宮「知ってる情報は全て話せ…ロシア軍が何故こうも関与している?ここのトップとそのヴェチェラフって男とはどういった関係なんだ?」



臼井「バスタードの共同開発で大佐があらゆる機械や装置の提供をしていると聞いた そしてうちらがこの技術を提供していたんだ、ユートピア計画を実行する為 共に手が組まれた… そして我々のバックに着いたと言われてる いわゆるフィクサーってやつだな」



御見内「面倒を処理する黒幕か… なるほど それでザクトが出てきたから奴等も矢おもてで表立って登場してきた訳か」



臼井「おそらくそうだ 邪魔者を全て消し去る為に現れた 大佐の部隊に情けは無いぞ みんな殺されちまう」



御見内「隊長 こっちの救出を早く終わらせて すぐに廃病院へ行かないと」



野々宮「今からでは手遅れです… それにおかしい… 私達の突入が感づかれてるって事だ… 情報がリークされたとしか思えません」



御見内「内部に裏切り者?」



野々宮「可能性があります それともう1つ…向こうが攻め込まれたとなれば……ならこっちは?」



野々宮の一言でハッとさせた御見内達



4人は顔を見合わせた。



野々宮「急いでここを破壊し、皆と合流しよう 2人も手伝ってくれ」



臼井「勿論だ」



2人の研究者を仲間に入れ、破壊活動を開始した4人



そんな野々宮の不安は的中…



下水処理場より8キロ程離れた上空に



バタバタバタバタバタバタバタバタバタバタ



3つものプロペラのローター音を響かせていた。



1機は戦闘ヘリ カモフアリゲーター



そしてもう1機はMiー28 ミル



別名ハボックなる攻撃ヘリコプター



そして輸送ヘリ ヘイローの3機が編隊飛行している。



赤塚班に続きスペツナズの襲撃は御見内、エレナ等にも迫り来る。



ーーーーーーーーーーーーーーー



廃病院(サンクチュアリー) 洗脳ルーム



階段を駆け上がった赤塚達



赤塚「戻れ戻れ戻れ」



桐野「へ?」



海原「早く部屋に入れ」



廊下を疾走しながら搬送中の隊員等を全員押し戻していく



血相を変えた赤塚等が部屋に入るや海原が入り口付近でMPを身構え、廊下の先に向けた。



太田「ど…どうしたんですか?」



只ならぬ雰囲気で戻ってきた赤塚達



徳間「襲撃ってどうゆう事です?」



太田「え?襲撃…?」



赤塚「たったいまバスが襲撃を受け…やられた…」



谷口「は?やられたって誰が誰に?」



徳間「敵って誰にですか?」



赤塚「スペツナズ ロシアの特殊部隊だ 表を見てみろ」



窓際に張り付くや濃煙に包まれた外を見渡す一同



川畑「うわ なんだこの煙り」



赤塚が肩に背負う救出者をそっと床に置く



赤塚「バスがガンシップに爆撃され炎上してる」



川畑「ちょ 待って え じゃあ搬送した救出者は…?」



赤塚「駄目だ 死んだ……バスもろともみんな殺された…レジスタンスの阿部さん 渋谷、池丘、高橋、植田、久保、坂田等7名も死んだ」



谷口「阿部さんが…?」



川畑「嘘だ…クソ…」



赤塚「海原ぁ」



海原「大丈夫です まだ現れてません」



赤塚「こちらB班赤塚到着 合流しました 指示願います」



麻島「直ちにそこから出ろ その部屋を右手へ進むとすぐにC5避難階段ってのがある そこを降下して外に脱出するんだ」



館内の見取り図を広げて指示を送る麻島



麻島「…奴等は十中八九 正面と裏門から攻めて来るだろう そこはゴミ置き場へと通じ、外に通ずる小口がある そこからなら気づかれずに抜け出せる」



赤塚「ルートは分かりました ですが隊長1つ問題が…自力での歩行が困難な民間人が40人程います これを一気に搬送するのは無理です 人手が足りません」



しばしの沈黙が続き



一間も二間も空いた後



麻島が口にした。



麻島「救出者はそこに置いていけ… おまえ等だけで脱出を図れ…」



赤塚「なんの冗談ですか? この人達を置いては行けません」



麻島「輸送のバスは潰えた…多数の民間人を運んで移動するのはもう無理だ 一旦諦め 新たな機会で回収にあたる 今はおまえ達だけで離れろ 」



赤塚「隊長 お言葉ですが間違ってます…救出は第1重要任務の筈 私達はこの任務を果たす為にここに来たんです それを見捨てるなど…」



麻島「赤塚 今おまえと口論するつもりは無い これは命令だ!従え 相手は指一本で人を殺せる程の術を持つ そんな殺人術を身につけたプロ中のプロだと言う事を忘れるな」



谷口「指一本で人を殺せるって…?そんな事…」



太田「ありえるよ 聞いた話しだと ロシアの軍隊といえばコマンドサンボがある…どうやって素早く敵を無力化するか… いかに人体を的確に破壊するか…それらを徹底的に追究し、洗練し、編み出された軍隊格闘技こそがコマンドサンボだよ」



谷口「まじ? そんな奴等が今下にいるっての…」



麻島「バス襲撃で敵意は明らかだ… 奴等の人数とて不明 それにレジスタンスの方々は素人だ その為レジスタンスの専守を優先させる 迅速に退避に移れ 急げ赤塚」



海原「主任 麻島隊長の決断は正しいです すぐに行きましょう」



赤塚「ぐっ ならせめて1人でも… そうだ 正常な女性が1人だけいただろ その人だけでも…」



太田「隊長 その女性なら既にバスへ…」



それを聞いた赤塚は茫然となり、置き去りにしなくてはならない町民等を見渡した。



残された半狂乱、目は死に廃人と化した人達を…



それから目を瞑り悔やんだ赤塚…



クソ…



青木「…」



そんな赤塚を無言で目にする青木



海原「主任 急ぎましょう」



そして目を開けた赤塚が決断する。



赤塚「分かった ここの回収は再度行う ひとまず退避するぞ」



太田「了解」 徳間「了解」



桐野「了解です」



赤塚「みんないるな? 行くぞ」



そして赤塚班が動き始めようとした その時



川畑「あれ? そういえば斉藤と美菜ちゃんの姿が見当たらないぞ 何処行った?」



谷口「え? さっきまでいたけど いない」



川畑「2人がいないぞ どこ行ったんだよ?」



谷口「赤塚隊長 ちょっと待って下さい 大変です 斉藤と一条の2人がいないんです」



赤塚「何?」



それを耳にした青木が反応を示した。



え…?



一条… あの子が… いない…あ  

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