第106話 駆除

トラップの森 B班 赤塚分隊 戦闘中



「We wish you a Merry…」 パン



「Oh bring us…」 パパパパ



憫然(びんぜん)たる感染者の頭部が弾かれ、歌声が止む



海原「おい 今フルオートにしてる奴は誰だ?すぐに単発に戻せ」



パン パンパンパン



渋谷「桐野さん 雅史 2人でその弾薬バッグ持って660フィート(約200メートル)まで下がってください ここは俺が制圧射撃で援護しときますから」



「悪い そっち持て 退去するぞ」



パンパン パンパン



森のフィールドに木霊するいくつもの銃撃音



只今 赤塚分隊は複数の感染者やゾンビを迎撃しつつ、後退を行っていた。



「Oh bring us some fig…」パン パン



襲い来る感染者のクリスマスキャロルも1つ2つと急速に減少していくが、その合唱はまだ完全には止んでいない



パン パンパン ガチガチ



太田「やべ 多摩岡ぁ エキストラクターが不良を起こした ジャムったよ… 代わりのマシンガンか拳銃はあるか?」



「これ 使え」



太もものホルスターからシグザウエル自動拳銃が投げ渡され、それと予備弾倉も投げられた。



太田「サンキュー」 ガチャ パァン パン パン



またドットサイトを覗く徳間



中央の赤い点を詰め寄る感染者の額へと合わせ



狙い澄ますや



パン



額が見事に撃ち抜かれ、すってんころりん



枯れ葉が舞った。



赤い点はノロノロと近づくゾンビ共にも定められ



パン パン パン



連発で仕留められた動骸が順々に枯れ葉に埋もれていった。



また2人の隊員が撃ち方を止め



「バックしよう」



「あぁ」



小走りで撤退した瞬間



突然2体の感染者が木々の間から飛び出て来た。



「We wish you a Merry christmas」



「…した所 何も起こらなかった だがその放置された車のある窓ガラスを一枚割ったらどうだ それはすぐに効果が現れた 最初はラクガキから始まり 次に他の窓ガラスが割られ出す、更にエスカレートしボディーが壊され始め、タイヤ、パーツが盗まれ始める。放置された車両は1ヶ月たらずで無残となり周辺で傷害や殺人事件が頻繁に起こりはじめた ガラス一枚割って放置した事で反モラルを呼び、反モラルが軽微な犯罪を呼び、軽犯罪が次第に凶悪犯罪を呼んでしまう これがブロークンウィンドウズ理論ってやつである 放置されたチャリのカゴに空き缶を捨ててみよう するとそのカゴは瞬く間にゴミ箱と化してしまうだろう 実例でこの理論を実践したある有名なビッグシティーがある それがアメリカのニューヨークだ 当時のニューヨーク市長はあまりに多発する犯罪に頭を抱え、特に犯罪の温床とされた地下鉄に目をつけた そして徹底的に壁のラクガキを消し、地下鉄をキレイにし、それからどんな小さな軽犯罪も徹底的に取り締まりを行っていった その結果 ニューヨークは凶悪犯罪都市の汚名を返上 今では安全なシィティーに指定されている 市長の犯罪撲滅と環美の功績はこの理論の実践に基づき、生まれた賜物であることはいうまでもありませんね ジャポンの警察がやたらチャリの取り締まりを強化してるのもこの理論に基づいて参考にしるのかもしれません…」



常人ではヒアリング不可能な早口でまくしたてる感染者が迫って来た。



「うわぁぁあ」



「… 本日はここまでです 来週のテキストはマーフィーの法則について12時間講習です」



慌てて立ち止まった2人の隊員が振り返りざま射撃態勢を取るや、感染者が飛びかかってきた。



「And a Happy New yeay.」



「…ちなみに補習授業を受講する方は講習授業料金30万円必要ですんで そのお金はそっとあっしの懐にお仕舞い下さいませ ませませ うるぁあああ~」



そして押し倒された。



「We wish you a Merry christmas」



「…授業料に諭吉50万人持ってこいやぁぁああ~」



噛みつこうと覆い被さる感染者を必死な形相で抵抗する隊員



「ぐぅ」 「おぉぉぉ」



噛まれぬよう、顎を押さえ耐え凌いでいるや



パス パス



感染者の開いた口から銃弾が入り込み、後頭部から血潮を吹いた。



また瞼にも銃穴が開き



隊員に跨がる2体が即座に沈黙された。



2人の隊員が向けた先には赤塚の姿



赤塚「おまえら 大丈夫か?」



「平気です ありがとうございます」



「こっちもっす 助かりました」



赤塚「奴等に背を向けるな 油断するんじゃない」



「はい すいません…」



「すいませんでした」



赤塚「よし 行け ここは引き受けるから ここから後退しろ」



「はい 行こう」 「あぁ」



2人の隊員がすぐに起き上がり、バック後退で後ろへ下がって行く



「Oh bring us some figgy pu…」



パス



赤塚「海原 全員のフロントライン(前線)をもう100メートル下げさせろ」



海原「了解です 主任」



あいつ… だから…俺を主任と呼ぶな…



ーーーーーーーーーーーーーーーー



指揮車 車内



麻島「B班 赤塚 前衛との距離はいか程だ?」 



赤塚「約5~600です 今ラインを下げてますんで」



麻島「分かった 負傷者の方はどうだ?」



赤塚「御陰様で今の所は0です 駆逐は順調であります」



麻島「それを聞いて安心した ならランナー、ゾンビの残存数は?」



赤塚「正確な数は不明ですがランナーは多分…残り30~40って所でしょうか……ウォーカーに関しては数えきれません 接近する体以外はスルーしてますので」



麻島「了解 引き続き迎撃しつつ 速やかに前衛で待機する皆と合流をはかれ A班サイドで妙な動きが見られた 突入開始地点までなるべく急げ」



赤塚「了解」



麻島が赤塚から送られるモニター映像を目にしながら指示を送る中



マツと三つ葉はかじりつくように野々宮班から届けられるリアルタイム映像をモニター越しで目にしていた。



プラントを抜け、地下階段を下り、古びた迷路の様な坑道を進む3人の姿



そして3人は冴子ルーム前に佇み、到着していた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る