第105話 徒手

シートは血まみれで汚れ、前方片輪が壊れガチャガチャとうるさい音をたてながら押されるストレッチャー



そのストレッチャーを押す、キチガイな表情の奴隷が1人



またその周囲に4人



真新しい鮮血



男達の身体中に返り血を浴びた跡が見られる。



誰1人としてその浴び血を拭き取る奴はおらず 気にもせず暗い廊下を5人の奴隷達が進んでいた。



そして2人組が人間精肉工場の中へと入り



ストレッチャーが部屋の中へと入れられた。



もう3人は更に廊下を進んで行く



下着一枚つけない、完全な裸姿の男達



1人は身体中が墨だらけ



顔から爪先までタトゥーが彫られている。



またもう1人は子供がお祭りなどでつけるような可愛らしいキャラクターのお面



血のついたア○パンマンのお面で完全に顔を隠し、手にはこれまた血に染まるマチェットナイフが握られている。



またもう1人は冴子のおもちゃにされたのだろう…



男性のシンボルが縦からきれいに真っ二つに裂かれている…



そんなイカれた奴隷達が下水処理プラントの扉を開き、中へと入って行った。



その背後で…



陰へ隠れながら跡をつける野々宮の姿



野々宮がインカムを手にした。



野々宮「計5人 2人は一つの部屋に… もう3人は処理プラントへと入って行った… 2人とも警戒しろ…」



野々宮が陰から飛び出し、2人が入っていった部屋を注意しつつ廊下を通り過ぎて行く



そして小走りで処理プラントの扉へと近づき、壁に貼られた一枚の案内プレートを目にした。



野々宮「……これから俺もそっちに行く…」



そして プラントの扉をゆっくり開き、中へと入っていった。



野々宮「…第2沈殿池付近で合流だ」



連絡を受けた御見内、村田に緊張が走る



2人がそっと入り口から顔を覗かせるや



距離60メートル



確かに3人組がこっちへ向かって来るのが見えた。



村田「クソ こっちへ来るぞ」



御見内「…」



村田「おまえ…格闘の経験はあるのか?」



御見内「えぇ 多少は」



村田「向こうは3人… 凶器も持ってるから… おまえはそこに隠れてろ! 俺がやる」



御見内「大丈夫ですか?相手は凶器を持った3人です 1人では…」



村田「素人が! 銃による射殺が無理なら俺がやるしかないだろ 経験の無いおまえを庇うくらいなら1人で相手した方がまだましだ」



御見内「なるほど… 分かりました」



村田「しかし完全に頭がイカれてるな あいつア○パンマンのお面なんかつけてるぞ」



御見内「えぇ それよりホント大丈夫すか?」



村田「おまえに何が出来る? こっちは国防を担った元自衛官だぞ 3人如き徒手戦でチャチャだ」



御見内「頼もしい限りっす」



御見内が向かって来る奴隷達を陰から観察した。



1人はマチェットに… 1人はノコギリか… もう1人は…あれは何だ?



ピーターパンに出てくるフック船長が左手に義手として嵌めているフック型の刃に酷似した武器を装着している



村田「御見内 これ持って奥に隠れてろ」



御見内「あ…はい」



村田がMPサブマシガンを手渡し、近づいて来る奴隷達を壁際で待ち伏せた。



距離20メートル



血飛沫で身体が汚れるイカれ奴隷共は真っ直ぐこちらへと向かって来る。



村田は戦闘服の袖をまくり、いつでも飛び出せる態勢で潜んだ



近づく気配に



村田がスタンダードな攻撃の構えをとった。



ペタペタと裸足の足音が数メートル手前まで近づき、村田が軽く呼吸を整えるや



一気に通路へと飛び出た。



その出た途端



真っ先に村田の視界に飛び込んできたのはマチェットの刃



村田が慌てて仰け反り、紙一重でその振るわれた刃をかわすや



ガチン



刃が壁に叩きつけられた。



村田はバランスを崩しながら後退、転びそうな所を何とか踏ん張って留まる



く…ヤロー



村田の目にはいきなりマチェットナイフを振るってきた大の大人が国民的人気キャラクターア○パンマンのお面なんかつけやがって野郎が映った。



また2人の奴隷が村田を見るなり、ノコギリ、フック武器を振り上げながら襲いかかろうとする姿も



く…来い



態勢を立て直し、村田が構えた。



ア○パンマン野郎もマチェットナイフを振りかぶり



3人同時に村田へと襲いかかろうとしたその時だ



御見内「おい こっちだ」



その呼び声に反応したア○パンマン野郎が室内へ振り向くや



御見内が何やら投げつけた。



バコン



それが顔面に直撃



お面が潰される。



御見内はMPサブマシガンの銃本体を投げつけ顔面に直撃させていた。



ア○パンマンの体躯が後ろに弾かれると同時に室内から飛び出して来た御見内



出るや否やノコギリ野郎の懐に高速タックルをキメた。



ノコギリ野郎の体躯も後ろへと吹き飛ばされ、転げ落ちる。



その間 急に現れた御見内に驚きの表情を向けたフック野郎が一瞬動きを止めた。



すると御見内はすかさず、今度は自らが所持するMP本体をフック野郎の側頭部へと殴りつけた。



バコン



モロに受けたフック野郎がピヨり



御見内は素早く膝を滑らせながらノコギリ野郎の背後へと回り込んだ



それからノコギリ野郎の喉輪に腕を巻き付かせ



ガッチリと頸動脈へ絡ませた腕をロック



回避不能なチョークスリーパーをキメた。



そしてノコギリ野郎の首をきつく締め上げ、後ろに引きずりつつ村田へへ口にした。



御見内「今がチャンスです しっかりそいつを伸(の、(打ちのめす))して下さい」



村田「あ… あぁ」



チョークを決めつつ



ア○パンマン野郎を目にした御見内



床に大の字で倒れ、動かない…



奴は完全に気を失っている



ノコギリを振り上げあがく腕、暴れるノコギリ野郎をよそに冷静な表情で締め落としにかかる御見内が更に体重移動で後ろへ引きずる。



頸動脈は圧迫され、呼吸は出来ない



徐々にノコギリ野郎の暴れる力が弱まり、振り回すノコギリがだらりと落ちた。



そして奴隷の肩の力がガクンと抜け、頭もガクンと下がり



ノコギリ野郎は落ちた。



御見内は気絶を確認した後 腕を放すとノコギリ野郎が床へ倒れ込んだ



その間 みぞおちへ正拳を打ち込んだ村田



全身タトゥーだらけなフック野郎が呼吸困難で悶絶し、上体を屈めた瞬間を御見内が目にした。



それから村田は後頭部の髪を鷲掴みにし、壁に向かっておもいっきり投げつけた。



バコ



顔面から直撃し、そのままずり落ちる奴隷



背にしたまま、そのまま座り込み、フック野郎は動かなくなった。



どうやらこいつも気を失ったようだ



御見内「お見事 流石自衛隊格闘技ですね」



村田「おまえ…」



3体を瞬く間に制圧した中



御見内を目にした村田



すると



野々宮「2人共」



野々宮が2人の元へと駆け寄ってきた。



村田「隊長!」



一部始終を後ろから見ていた野々宮がMPを拾い上げ、それを御見内に手渡した。



野々宮「やりますね これじゃあ村田の護衛も必要なかったかな」



御見内「いえいえ」



野々宮「俺の出る幕などなかった」



気を失った奴隷達を見下ろし、MPを拾い上げた野々宮が村田に手渡した。



村田「あざす」



野々宮「こいつらをそこの部屋に隠そう 騒ぎが起きたら厄介だ」



村田「そうですね 了解」



そして野々宮、御見内、村田が気を失う奴隷達を部屋へと引きずる



野々宮「御見内さん 一つ聞きたい… 何故こいつらは素っ裸なんです?」



御見内「これはサイコな女王様の悪趣味です」



野々宮「女王って 例の冴子ってやつですか?」



御見内「そうです」



村田「趣味って… その女どんだけドSなんだよ ってか相当頭イっちゃってる女だな… もしやこいつのチ○コ真っ二つに裂いたのも…?」



御見内「えぇ 恐らくそうです もし残虐な犯罪ランキングがあるとしたらあの女が全てを塗り替えるでしょうね 冴子はこの日本史上最強の女殺人鬼だと思います ちなみにまだこんなのは序の口ですよ」



村田「おいおい これで序の口かよ 次行く場所がそのメインステージなんだろ?」



御見内「えぇ そうです」



村田「さっきので十分ホラーを味わったのに更なる衝撃的現場って… 行くのが憂鬱になってきた」 



3人の奴隷が部屋へと押し込められ、扉が閉められた。



村田「まぁ しょうがない 行くなら早い所行こうぜ その第2ポイントやらに」



野々宮「よし 早速その現場とやらに行きましょう 案内して下さい」



御見内「はい こっちです」



御見内を先頭に進みだした3人



村田「なぁ それとあいつらの身体に付着してた血… あれは一体誰の血なんだ? さっき連れ去られた人達のかな?」



分からない…



御見内が無言のジェスチャーで首を横に振った。



野々宮「可能性は高い」



村田「隊長 そうなるとつまり こんな事してる間にも救出者が殺されてるって事ですよね こうしちゃいらんないす すぐにでも踏み込んで制圧にかからないと」



野々宮「分かってる だが何度も言うように俺達の第1任務はここの監禁された人々を救う事だ それにはスムーズに事を運ばせるよう場所と状況把握がまず先だ」



村田「なら急ぎましょう」



顔を見合わせ、頷いた御見内と野々宮



そして3人は早歩きのスピードを上げ、あの冴子ルームへと向かった。

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