第90話 信用

新たな新居への門出も無事終え、車両が戻ってきたのは日が暮れた18時近く



特にトラブルも無く敵との遭遇も無く美菜萌達は無事アジトに戻ってきた。



その翌日 10時30分



食料品がパンパンに積まれた2台のトラック、残りの荷物類が積まれた観光バスのエンジンがかけられた。



マツ「おまえら 向こうは頼んだぞ」



中野「分かりました」



石田「ザクトの兵隊さんも2人常駐してくれるみたいですし 大丈夫です ジジババの子守はきっちりやっときますんで」



先陣として新天地での生存者達のボディーガードを頼まれた佐田、中野、石田の3名がバスへと乗り込み



これから2回目の移送が行われる。



そして皆が出迎える中 バス、トラックがマンションへ向け、出発された。



それを見送るマツをはじめ、御見内、エレナ、美菜萌、七海、斉藤、川畑、阿部、百村、ポン吉、大堀、小泉、谷口、根城



いわゆる主力メンバーと言われる者達をここに残して…



彼等にはまだやらなければならない事がある



従ってここをベースに、しばし残るつもりのようだ



斉藤「さぁーて これで年寄りの守りはいらなくなった そろそろ本題って感じだな ですよねマツさん?」



マツ「あぁ 半田も戻った あの方達もいる… すぐに会議を開くぞ! 10分後に皆会議室へ集まれ」



斉藤「へへ うーす そうこなくっちゃ やられてばかりでもうムカついてしょうがねぇ」



ポン吉「やだなぁ~ なんか緊張しちゃうなぁ~ 自分もマンション行けばよかったかなぁ~」



斉藤「おい 何を今更ビビってんだよ ぽんぽん冷やして体調不良になってる場合じゃねえぞ」



ポン吉「怖いにきまってるじゃないですか だって…これから戦争始めるんでしょ? 誰かが死にますもん 自分はまだ死にたくないですもん」



斉藤「そんな考え方変えろよ こんな田舎町で我が物顔してる輩をおまえ許せるか? 奴等はこの町の罪の無い住民を殺しまくってる大犯罪集団なんだぞ… これは俺達が月にかわってお仕置きだよ それにネクロマンサーとかほざいてるペテン野郎に天誅をくわえるのはもう俺達以外いないだろ だからもう腹をくくれ」



ポン吉「そんな事言われてもなぁ…」



確かに…



もう弱い者を庇う必要が無いなら…



これからが本番…



思いっきし悪者退治がやれるって訳だ…



俯き笑みを浮かべた御見内



すると



エレナ「あ~ 悪い顔してる人発見」



それを覗き込むエレナがいた。



御見内「そんな顔してない」



エレナ「じゃあ何考えてたの?」



御見内「いや…まぁ これで襲撃に脅かされる事はなくなっただろ これで心置きなくやれるなと思ってな… 俺達の大事な大事なラブワゴンを燃やした罰として組織を何1つ残らず壊滅してやらないとなって思って」



エレナ「フフ 車燃やしただけで組織壊滅されたんじゃ やっぱ敵さんもお気の毒様だね」



御見内「あぁ お気の毒になって貰おう」



マツ「御見内 ちょっと来てくれるか」



突如御見内がマツに呼ばれた。



御見内「はい」



マツ「バタバタしていて礼が遅れたな 半田の救出感謝するよ」



御見内「あっ いえ」



マツ「それとよくぞ無事に戻ってきてくれた」



御見内「はい…」



マツ「それで1つ聞きたいんだが 医務室にいるあの男は誰だ?その詳しい話しを聞かせてくれ」



御見内「メサイアの事ですか?」



マツ「メサイア?」



御見内「あ… コードネームのようなものです メサイアとは病院に潜入した際に出会い、彼と行動を共にしました」



マツ「つまり あの男は奴等って事だな?」



御見内「はい ズバリ言うとその通りです ですがあいつの助力があったからこそ半田さんを救う事が出来ましたし もしがあいつがいなければ失敗してました  もし彼がいなければ自分はここにいないです」



マツ「命の恩人って事か?」



御見内「はい 奴には何度も助けられました」



マツ「そうか… 百歩譲ってそれがおまえの恩人だとしても敵には違いない… 諜報として紛れ込んだ恐れもあるんじゃないのか?」



御見内「諜報…? メサイアがスパイだと?」



マツ「あぁ もし目的がはっきりしないならその疑いもある どうだ?」



御見内「なぜ敵であるあいつがわざわざ俺に手を貸したんだって事ですね?それならハッキリしてます 彼はあの組織に嫌気がさしていたんです 早々にあの組織を抜け出す機会をうかがっていたんです つまりあいつもあの組織のやり方が許せなかった つまり俺達サイドの良心を持ち合わせた正常な人間だった訳です」



マツ「…」



御見内「神に誓ってもいい メサイアはスパイなんかじゃありません あいつは信用出来ます 裏切るような男でもなければ、皆に危害をくわえるような危険な男でもありません あいつを信用して貰えませんか?」



マツ「随分とベタ褒めだな」



御見内「はい 数時間行動を共にしただけですが密の濃い共闘を通し、単なる戦友だけでは言い表せない奴の人間性を見てきましたので 自分の言葉を信じ、奴を信用してやって下さい」



熱の籠もった御見内の目をジッと目にしたマツ



マツ「なるほど… その目を見れば熱も伝わる 偽りは無いな いいだろう 信用しよう ただし少しでも不審な動きを見せた場合は即刻有無を言わせず処理するからそれだけは覚えておけ いいな?」



御見内「分かりました その時は俺が殺してやります」



マツ「よかろう それともう一点ある エレナから大まかな話しは聞いた ザクトを呼んでくれたそうだな 今回お前が作戦の指揮をとれ」



御見内「え?まだここに入って間もないニューフェイスの自分がですか?」



マツ「あの潜入を成し遂げた功労、半田を救い出した功績は指揮する者に値する それにおまえは俺なんかよりも力があるしな」



御見内「いえ とんでもないです マツさんに比べたら俺なんかとんだ弱輩者です」



マツ「謙遜はよせ それにお前は情報を持っている、お前がZACTと共に作戦をたてるんだ」



御見内「分かりました でしゃばってしまって申し訳ありません」



マツ「よし決まりだ 私は全面的にサポートをつとめるから頼むぞ」



御見内の肩がポンと叩かれた。



御見内「宜しくお願いします」



マツ「よし じゃあすぐにはじめよう ザクトの方達も全て会議室に集めろ これから作戦会議をやるぞ」



御見内「はい」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る