第91話 概要

社員食堂 10時50分



人数が多い為 急遽場所が変更され食堂へと集められた面々



ZACT兵50名 レジスタンスメンバー14名



計64名が集まり、横並びな長テーブルに適当に席へとついていく



美菜萌と七海により大きなホワイトボードが運び込まれ、青森県内の地図が貼られた。



扉が開かれ、マツと御見内、ZACT隊員の5名が入室



前列に座り込んだエレナ、七海が隣りの席につき



3列目の端に斉藤、ポン吉、川畑等が着席、各人バラバラに座り、皆が着席するや



ボード前に立ったマツ



マツ「皆揃ったな じゃあこれから作戦会議を始める…その前に1つ…もう皆も分かってると思うが今ZACTの方達にお越し頂いている、移送の手伝いまでして頂き尽力して頂いた事 遅らせながら感謝致します そこでまずは軽い挨拶だけでも宜しくお願いしたいです ではっ お願いします」



すると軽く礼した1人の男が前に出た。



「改めまして 命(めい)を受け派兵で参上いたしました 私は2個小隊の隊長を務めます 麻島(まとう)といいます 宜しくお願いします」



元警視庁刑事部捜査一課特殊犯



通称SITの隊長を務めていた麻島



肩にはMP5Kサブマシンガンがケースへと収納されており、それを壁にたてかけた。



麻島「まずは手短に順々 手前から紹介致します まずこちらが第1小隊の分隊長を務めます…野々宮です」



野々宮「宜しくお願いします」



紹介され、会釈する男 野々宮も元警察



元は警視庁緊急時対応部隊 通称ERTに所属していたバリバリの警官だ



麻島「続いて隣りにいるのが第2分隊の指揮を務めます 赤塚です」



赤塚も軽く会釈した。



赤塚は元皇居特別警備隊(皇居警察)の主任を務めていた男



赤塚も元は警察官



麻島「次いで情報部から2名…まずは左から三ツ葉」



三ツ葉「おはようございます 三ツ葉です 私は元法務省管轄の公安調査庁で国内外の防諜のお仕事をしていた者です どうぞ宜しくお願い致します」



何故こんな辺境の田舎町に情報部の人間が…?



誰しもがふとその疑問を抱いたことだろう



麻島「次に隣りが月島です」



月島「おはようございます月島です 宜しくお願いします」



こちらは元航空自衛隊情報保安隊



こちらも諜報活動を主にしていた人間だ…



麻島「他 国内外で実戦経験を持つつわもの45名 移送先の警護兵2名を含む計52名 この地へ着任致しました」



麻島が軽く敬礼のポーズを取った。



マツ「ありがとうございます それでは早速本件に入りたいと思います どうぞ 席の方へおかけ下さい」



前に立つ5名が最前列の席へとつき



マツ「御見内 概要を説明しろ」



御見内「はい」



そしてマツも席へつき、御見内がボード前に立った。



御見内「ZACTの皆様 遠路はるばるお越し頂きありがとうございます これから説明する本作戦の指揮を務めます御見内です 宜しくお願いします」



そしてサイドに立つ美菜萌へ合図を送るや



美菜萌がある用紙をテーブルへと配り始めた。



美菜萌「すいません 一枚づつでお願いします」



5列の長テーブルへと配られ、横にどんどん配布されていく用紙



御見内「世界規模のバイオハザードで混迷する世の中 この混乱に乗じてこの地はある組織によって牛耳られています。支配されているんです。そいつらは黒いフード付きの装束を纏った ある種西洋的な宗教を思わせるような不気味な集団です そいつらによってこの町の多くの住民が攫われ、監禁、拷問、洗脳、殺人が当たり前のように横行されています。またマインドコントロールによって精神崩壊を受けた町民は廃人と化し、奴隷のような扱いで言いなりにされています。」



麻島「酷い話しだな…」



ボソッと呟いた麻島をチラッと横目にするエレナ



御見内「…今尚多くの町民達が苦しめられ、日常的に殺され続けています 今回それら監禁された町民、拷問で苦しめられている町民等の救出、ザクトの皆さんに力を貸して頂きたくお呼びしました。 そこで今お配りした用紙 それはある2カ所の施設内の見取り図です」



配られた用紙に目を通す面々



御見内「その施設内に町民等が監禁され、拷問を受けています」



すると御見内がホワイトボードへペンを走らせた。



御見内「まず右が廃墟になった病院 そして左がこれも現在使用されてない廃墟となる巨大な下水処理場の見取り図です 廃病院はここからおよそ南南東に5キロ行った山奥に…ここにあります」



ホワイトボードに貼られた地図を、既にマーカーで記されたポイントを指差す御見内



御見内「そこから更に南東6キロ先に下水処理施設があります」



今度はそのポイントを指差した。



メモ帳やら配られた用紙裏に真剣な表情で耳を傾けメモる隊員達



御見内「この2カ所を2班に分かれての同時強襲 捕らわれた町民の奪還救出を行いたいと思っています」



同時奇襲攻撃…



麻島、野々宮、赤塚 他の隊員等の目つきがかわった。



御見内「そこで詳細な位置ですが右側の病院…実際にこの目で町民等の姿は確認されてません ですが有力な情報だと監禁者は最上階のこの広間に集められ隔離されているとの事です」



御見内が見取り図を指さしながら説明している。



御見内「廃病院には4つの出入り口があります こことここ それとこことここです」



図面の入口マークが示される



御見内「東西南北の4つの棟に入口があるって事です 自分は潜入する際この南棟から侵入しました。」



図面と睨みっこしながら説明を聞く斉藤、ポン吉、根城



御見内「ちなみにこのサイドには広大な森が広がり、様々なトラップが仕掛けられるいわゆるトラップの森と化してます この国道から正攻法で攻めるか森を抜けての奇襲で攻めるかは また後程詰めていきたいと思います… 次にもう1施設 ここは巨大な施設です この正門から入って ここを直進するとまず2つに道が分かれますのでここを左へ進みます。 もうここら一帯から拷問エリアになってます。 そして第1のポイントがこの部屋です」



今度は下水処理場の図面をみながら説明する御見内



エレナ「…」



御見内「…この部屋には四肢の一部が欠損されつつ生かされたままの人々が多数います その者達は鉤爪で手や足を突き刺され、吊されたまま生かされているんです… そんな町民達が複数ここに隔離されているんです まずはここの人達を救出します それから第2ポイント…」 



マツ「…」  美菜萌「…」



御見内「ここを真っ直ぐいくつもの浄化処理施設を通り抜けていきます この間の距離が1~3キロってところでしょうか…それに平行して数々の拷問部屋として使用される部屋が点在しています そしてここです 消毒プラントエリア辺りに地下へと降りる階段があります それを地下3階まで下り、迷路の様な炭鉱道を進むとある秘密の部屋があります そこが第2のポイントです…」



御見内「……」



急に御見内は言葉を噤み始めた。



マツ「どうした?」



御見内「…すいません…あまりに悲惨な状況なもんで説明に言葉が詰まります」



エレナ「え?」



御見内「実は… ここには… 20歳にもみたない 若き少年達が……ダルマにされてます」



マツ「なんだと?」



この場の一同が御見内に視線を向けた。



皆耳を疑った。



斉藤「ダルマってなんだよ…?」



マツ「ダルマにされてるとはどうゆう事だ?」



御見内「冴子…その女の仕業です…その女が少年達の手足を切り落としダルマにしてるんです、それで性奴隷にしてるんです」



斉藤「はぁ?まじかよそれ…?」



麻島「…」



七海「嘘……?」



エレナ「あの女が……」



凍りつく室内



誰しも顔を青ざめた。



御見内「あの女は女とて容赦しません…必ず殺します」



すると 突然手を挙げたエレナ



エレナ「すいませぇ~ん それは私に殺らせてくださぁ~い」



御見内「あぁ ならまかせる…ただし必ず殺せ」



エレナ「はぁ~い」



御見内「これが大まかな作戦概要です 3日後 これから3日後に本作戦を実行したいと考えてますので その間に準備や戦略の詳細を詰めていきたいと思ってます 皆さん宜しくお願いします」



ざわめきが起きる室内



すると御見内が再び喋りはじめた。



御見内「とりあえずの大まかな内容は以上です ですが… 本作戦にあたるうえである3つの問題点があります…」



再び御見内へと注目される



御見内「まず1つ目の問題点は本作戦にあたれば必ず奴等と戦闘になります…衝突は避けられません ザクトの方は強力なアサルトライフルやサブマシンガンを所持してますから掃討するのは簡単にいくかもしれません……ですが問題はそこにあります。 襲いかかって来る大半はゾンビではありません マインドコントロールで廃人にさせられた町民達なんです 洗脳が解ければ自分等と変わらぬ人間であり生存者です つまり…命を奪わずに制圧しなければなりません」



斉藤「ちょちょ… すいません そりゃあ無理っしょ~ こっちも命懸けなのに生かしつつ作戦を実行するなんてさぁ~」



御見内「はい かなり厳しいと思います ですが救うと言う意味では彼等も犠牲者であり町民です 出来うる限りの考慮でやるべきだと思ってます」



斉藤「まぁ 分かるけどさぁ~ ただでさえ危険なのに急に難易度が上がったじゃねえかよ」



御見内「いえ まだあります もう1つの問題点…ここにいる方はもう知ってると思いますが人形の件です ザクトの方は知らないので最初から説明します」



野々宮「…」



御見内「奴等はあまりにも残虐な行為  人間の各ボディーを生きたまま切り落とし、それを強引に縫合してくっつける 異形となる人形の製造を行っているんです それは拷問室と同様下水処理場の奥にある施設 ラボと言われてる場所で行われてるそうなんです 実際ここには行く事は出来ませんでした 正直未知の場所で情報も状況も何も分かってません ただこの場所がそうって事だけしか知りません」


美菜萌「…」 阿部「…」 川畑「…」



御見内「それで潜入した際、ある1つの事実に辿り着いたんです それがこの人形を製造する目的です」



百村「…」 小泉「…」



御見内「実は潜入の際 自分はある人形に襲われました… そいつはハンドガンの弾を全く通さない頑丈な鎧に身を包み、軽機関銃で武装した人形でした」



エレナ「え?何その話し?初耳よ」



御見内「皆に黙ってた事は謝ります この場で話そうと思ってましたので…その人形はまるで完全武装した兵士のようでした 確証はありません まだ確証はないですが奴等の目的は人形の戦闘部隊を作る為なんじゃないかと思ったんです」



マツ「人形の戦闘部隊…?」



御見内「はい 最初は悪趣味な残虐行為と思ってましたが あの格好からそう思わざるしかないかと… 奴等は人形を兵器化しようと企んでいるんです」



斉藤「おいおい そりゃ~ぶっ飛び過ぎじゃないか?」



御見内「信じられないかもしれませんが現にその人形と交戦しました。交戦したうえでそう思ったんです …まだ今ならきっと間に合います 、食い止めなければなりません…」



御見内「救出と平行してそのラボも叩きたいと考えているんですが…ここで1つ問題があります それは作戦中その武装した人形がラボを叩く前に出てくる恐れがあるって点です」



マツ「御見内 先ほど交戦したと言ったが銃弾の効かないそいつは一体どうなった?」



御見内「何とか倒しました」



マツ「ならそいつはどうやって倒したんだ?」



御見内「運よく強力なリボルバーを手にする事ができ 鎧の耐久性を何とか貫く事が出来ました コルトパイソンクラスのマグナム弾で…やっとの思いでです あれがもしなければ倒せなかったでしょう」 



マツ「強力なリボルバーが必要って事か…」



御見内「えぇ その通りです 問題はラボ襲撃前にそのタイプが出現する可能性があるって事と… ちなみにアサルトライフルは89式ですか?」



麻島「そうです 弾は通常の5.56NATO弾です」



御見内「そうですか… それとアサルトライフルが効かないかもしれないって点です…そうなったら全滅する恐れがあります…」



斉藤「おいおい それちょっとヤバいんじゃねぇーの なら中止か?」



麻島「いえ もしそうなら ショットガンがあります スラッグタイプの実包もあるので、そこは事前にマグナム弾に匹敵するスラッグで対応すればいけるかと!」



御見内「そうですか ならそのへんも後程入念に打ち合わせしていきたいと思います そして最後 実はこの問題が一番厄介かもしれません」



マツ「今度は何だ?」



マツがボソッと口にした。



御見内「実はこの組織…黒魔術がどうとか言ってるただのイかれた邪教徒の組織じゃ無い可能性があるんです」



一同を見渡した後



御見内「実はこの外道共のバックにはロシアがいます… 厳密言うとロシア軍…もっと厳密に言うと特殊部隊…」



すると いきなりある男が立ち上がり、口にした。



三ツ森「スペツナズ…そんな名ではなかったですか?」



御見内より先に口にされたワード



御見内「えぇ その通りです…なぜそれを?」



マツ、美菜萌、エレナは突然立ち上がり、口にした三ツ森に視線を向けた。



三ツ森「ロシア連邦軍 特殊任務機関 スペツナズ…ヴァチェラフ・メンデレーフ大佐… この男は このバイオハザードが起こる以前から私達情報部がずっとマークしていた男です」


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