第88話 熊達

御見内「大丈夫か?」



メサイア「大丈夫な訳ねぇーだろ いいから早い所こいつを外してくれよ」



トラバサミのトラップの解除にあたる御見内



メサイアがぶっ倒れたバスタードを見ながら口にした。



メサイア「っかし とんでもねぇー化け物を作りだしたもんだ まるっきし例のユニソルそのものじゃねえかよ…」



御見内「あぁ 今回の件でハッキリしたよ 少なからずあの人形を使って何かよからぬ事を企てているって事がな…」



メサイア「あの1体相手にどれだけ人が殺されたか… いていて もうちっと優しく外せよ… ってあんなのが10体も20体も現れたらと思うとゾッとするな」



御見内「あぁ 大量に世に出回ったら大変な事になる」



ガシャ



ようやく トラバサミが解除され、外された。



メサイア「いてて…」



御見内「結構傷深いなぁ」



メサイア「ここまで本格的な人間兵器の製造してるとか これじゃあ地方に巣くう単なる怪しい集団じゃないって事になる」



御見内「あぁ パニックのどさくさに紛れてしょーもない悪事を働こうとしてる悪の組織だ… 奴等の企てがどんなものかは知らないが それが全面に出る前に食い止めたい」



メサイア「食い止めるって 何する気だよ?」



御見内「まずはあの病院や拷問室にいる人達の救出と並行してあのラボを叩く」



メサイア「謎の研究室か… しかしホントにおっ始める気かよ? まじもんの戦争になるぞ」



御見内「戦争なんてとっくに始まってんだろ」



メサイア「そりゃあ規模が違う…今はまだ小競り合い程度だけど 本格的な争いなれば噂のロシアが出てくるかもしれないんだぞ…」



御見内「ロシア… カザック… それがどうした そんなのにビビってたらこの乱世は生きていけない」



メサイア「普通ビビるだろ ゾンビと軍隊、テロリストじゃ訳が違う 対人間では話しも比較も別もんだ」



御見内「なぁに それも問題ない こっちには力強いZACTがいるから 怖くなんてないさ」



メサイア「ザクトねぇ……」



御見内「それより 歩けるのか?」



メサイアが立ち上がり、歩行を試みるが



メサイア「いで…てて あかん こりゃ駄目だ 無理無理」



御見内「オーケーオーケー 分かった分かった 無理に動くな……肩を貸す」



メサイアに肩を貸し、移動を始めた2人



半田の元へと急いだ。 



御見内「しかし よわったなぁ 2人も同時に運べないし だいぶ目的地からも離れちまったし…」



メサイア「なら気合いで2人同時に運べや」



御見内「無理だ」



メサイア「やれよ 誰のせいでこのザマになったと思ってんだ」



御見内「そんなの自己責任だろ 自分の不注意を俺のせいにすんな」



メサイア「いいや おまえの身勝手さに振り回された結果がこれだ」



御見内「そうかよ そりゃ悪かったな」



メサイア「認めるんだな じゃあおぶってけ」



御見内「それだけは無理だ」 



メサイア「テメェー…」



御見内「ほれ 下ろすぞ」



横たわる半田の元に着いた2人



メサイア「そっとやれよ いでで そっと下ろせって言ってんだろバカヤロ」



御見内「うっせー男だなおまえは ギャンギャン吠えるなよ」



メサイア「おまえ怪我人の扱いとか知らねぇーのか もっとふんわり優しく下ろせや」



半田の隣りにメサイアが座らされた。



御見内「はいはい しょうがない奴だな こうなったらヘルプ呼ぶか」



そして御見内が無線を使用しはじめた。



御見内「こちら 御見内 すいませんが至急ヘルプをお願いしたいです」



すると



「ジィ こちら本木 どう…御見内くん こちら川畑だ まだか? 無線傍受で探ってるんだが奴等の検問が一層厳しくなってきてる このままじゃ逃走ルートが一つもなくなってしまう ジジ」



御見内「すいません 急いでるんですが 色々とアクシデントがありまして…今負傷者が2名いるんです 誰か運ぶのを手伝いに来て欲しいです」



川畑「ザァ 2名? ザザ」



御見内「えぇ もう1人は潜入の際に知り合った人物です そこから左へ2キロくらいの所に今います 2人共負傷してます すぐに応援を頼みます」



川畑「ザ 分かった これからすぐに斉藤と根城を向かわせる ザザ」



御見内「頼みます オーバー」



通信を終え、しばしホッとさせた表情で御見内も木に腰掛けようとした



その時だ



カサカサ



ある物音が聞こえてきた。



気配を感じる…



ジィーと1点を見詰める御見内



メサイア「おい どうした?」



先を見詰め、固まる御見内へ



メサイア「おい 聞いてん…」



するとメサイアの口が急に手で塞がれ、御見内が小声で口にした。



御見内「黙れ 何か来る…」



声のトーンを最小限にまで落としたメサイアが問うた



メサイア「え?来るって奴等か?それともゾンビか?」



御見内「分からない…でも多分違う… そうじゃない違う何かだ…」



メサイア「はぁ? 奴ら以外だとしたら他に何がいるってんだよ」



こうゆう状況は今まで数多とあった



だが… 今回は今までと何かが違う…



メサイア「まじかよ 次はなんだよ」



2人が耳を澄ますや



ガサ ガサ ガサ ガサガサガサ



じかに聞こえて来た足音



2人の耳にはっきりとその足音が聞こえてきた。



メサイア「おい…この足音…」



しかも… それは複数…



近くではないが遠くでもない足音が3つ…



ガサ ガサ パキッ ガザ ガサガサ



そんな音だけが不気味に響き渡り、2人は全神経を耳と目に集中させた。



御見内は気配を殺すかのように固まり、近づく音のぬしを警戒した。



2~30メートル先の高枝が激しく揺れ



バキッ  ベキッ



何かが通る度に枝がへし折られる音も聞こえる



そして…



グフゥ~



今度は鼻息が聞こえてきた。



グフゥ グゥフ~



それも足音と同じく3つ



御見内は人らしからぬ鼻息を耳にし、メサイアへ振り向き、目を合わせた。



2人は目を合わせ同様に思った



この声の主は



人でもゾンビでもない…



動物のものだと



バキッ ガサ ガサ グゥゥ



そして声の主がついに2人の前に正体を現した。



数十メートル先の大木が揺れ、ありえないサイズの熊が横切ったのだ



高い枝が巨体に引っかかり、それが進む度にへし折られていく



グゥゥウ~



それから後続でもう一頭が悠然と現れ横切って行く



更にもう一頭も



最後の後続の1頭を目にした時 一気に2人の心拍数はあがり、硬直させた2人



御見内は気づかれぬようとっさに息を止め、ジッと待った。



目を疑う程のドデカい猛獣達が通り過ぎるのをただ…



ガサ ガサ バキッ グゥゥウ



そして3頭の熊達は御見内等の視界から消え、通り過ぎていった。



メサイア「ぷはぁー なんだよあれ…あんなデカい熊今まで見た事ねぇーぞ しかも最後に通ったやつのデカさ見たか?もう一回りデカかった…」



御見内「あぁ あれは流石にヤバいな」



メサイア「ぷ~ 小便チビるかと思ったぜ」



もうこの世にゾンビ以上に怖いものなど無いと思ってた…



もう日常のように慣れ過ぎて



今ではそのゾンビにでさえ、全く恐怖を感じない…



あのバスタードとの邂逅、交戦の時でさえおののく事はなく



つまりこの世に怖いものなどもう無いと思っていた…



だが…今の遭遇で何もかもがひっくり返された…



猛獣…さっきの熊の存在だ



しかも とびきりデカいときた…



あれを目にした時 久し振りに心の底から恐怖し、危険のブザーが鳴らされた。



さっきの熊達はヤバいと…



御見内が初めて熊等を目撃し、恐怖した瞬間だった



それから数分後…



救出に駆けつけた斉藤、根城等の手を借り、共に森を脱出



その後 包囲されつつある検問の網をくぐり抜け、無事ホームへの帰還を果たした。



半田の救出成功



また様々な情報を手にし



御見内の潜入が終わった。

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