第71話 武装

バイヴス「お2人共 大変です 後ろにバズーカが…」



シートを殴打しバイヴスが声を張り上げた。



メサイア「あぁ?」



バックミラーを目にしたメサイア



後ろを振り返った御見内の目にはロケット砲を肩に担ぎ、こちらへ向ける奴隷の姿が映った。



正式名称ロシア語でルチノーイ・プラチヴァターンカヴィイ・グラナタショート



その頭文字で連なったアクロニム 通称RPG



世界中で使用される世界一有名なグレネードランチャーだ



御見内「アールピージー(RPG)だ 回避しろ」



メサイア「回避しろったって…」



すると トリガーが引かれ



ランチャーの筒から後方爆風で煙りを吐いたロケット弾が発射された。



御見内「きれ」



ブシュュュュュ



煙りの尾をつけたロケット弾が一直線に飛翔



真っ直ぐこっちに向かって来る。



キィイィ



メサイアは急ハンドルを切り、それを回避した。



ドカァァァ



アスファルトに直撃したロケット弾が爆発



轟音と共に黒煙が割れた窓から入り込み、バイヴスは耳を押さえた。



メサイア「何だよあれ?あんなのまであるなんて聞いてねぇーぞ」



御見内「あれもロシア製だ きっとこいつやサブマシンガン同様流出されてんだよ」



マカロフを見せながら口にする御見内



メサイア「例のロシア軍か… まじかよ…本格的武装化を図る気か…」



御見内「やべぇ 2発目を装填してるぞ…もっと飛ばせ」



現在スピードメーターは145を表示



メサイア「無茶言うな ベタ踏みだぜ これ以上は…」



イかれた町民が2発目の装填を終え、再び肩にバズーカを担いだ



そいつは点滅するチップのような物を弾頭に接着



またランチャーにも何やら張りつけるや



2発目を発射させた。



御見内「また来る あの車の陰に隠れろ」



メサイア「ファック」



ブシュュュュュ



ランチャーからブーストされ飛び出したロケット弾が噴煙をあげる



SUVが走行しながら前方に放置された乗用車の陰へと隠れるや、真っ直ぐ伸びてきたロケット弾が通過



辛くも回避したと思いきや



奴隷がランチャーに取り付けたボタンを押した。



すると弾頭に取り付くチップが電気信号を受け



突然空中で爆発を起こした。



ドカァァァ



VT信管による遠隔操作の誘発で着弾せずとも空中で爆発を起こしたロケット弾



放置車両が爆風の影響を受け、一回転しながらガードレールを越え、森林へと消えて行った。



道路は煙幕に包まれ



トラックがその煙りの中を突っ切り飛び出した。



その視界が開けた途端



町民の目に飛び込んできたのは前方を走るSUV



爆発を免れ、速度を落としながら待ち伏せるSUVが前方にいた。



また車両の助手席からは上半身を乗りだし、ハンドガンを構える御見内の姿も…見られた



視線を合わせた奴隷が慌てて次弾の装填をしようとした時



既に照準を定める御見内から引き金が引かれた。



パァン



肩に命中 町民は倒れ



御見内はたて続けに発砲した。



パァン パァン パァン



プシュュュュー



タイヤは破裂、急速に空気が漏れ



また同時に運転手の肩を撃ち抜いた。



被弾した運転手は120キロで走行するトラックのハンドルを誤り



バランスを乱した車体が横転された。



荷台に乗った奴隷達は一挙に投げ出される



メサイア「よし 1台撃破だ」



地面を引きずらせ、滑るトラック



身を乗り出したままそれを目にする御見内



すると



道を塞ぐように横向きで倒れたトラックのケツがいきなり後ろから衝突、後続のトラックが強引に道をこじ開け現れた。



御見内「チッ まだ来るか…」



それを目にする御見内が車内に戻った時



Y字の2叉



その右路前方から今度は3台の車両が現れ、向かって来た



御見内「左に行け」



すれ違いな分岐でSUVは左に逸れ



キィィィ



急ブレーキが踏まれた3台の車両はそのまま方向転換、御見内等を追ってきた。



荷台に銃座が設置された3台のテクニカル(別名バトルワゴン 民間のピックアップトラックに武装を施した、軍用以外の武装化車両)だ



メサイア「道が違ぇ~ 今の右だぞ」



御見内「今はしょうがない…途中どこか右に入れたら入れ」



メサイア「ねぇーよそんな道 当分先まで道は繋がってない」



3台のテクニカルを先頭に加え、8台にまで増えた車両群が追いかけてくる。



御見内「まずいな…頭の3台……銃座にAKがつけられてる」



メサイア「あぁ…しかもウジ虫みてぇにわいてきやがる…また増えやがったな」



御見内「解体人 奴等に牽制しろ」



バイヴス「はい」



パン  パン  パァーン



メサイア「分が悪い 振り切るのはもうちょっと難しい このまま病院行ったら捕まるのがオチだぞ」



御見内「分かってるよ」



ヒートアップする逃走劇



先頭を走行する3台のテクニカル



次いで2台のトラック、バン、ステーションワゴン、ミニバンと続く



ガシャ ガシャ ガシャン



テクニカルの固定台に設置されたAK突撃銃を発砲可能にした奴隷達がSUV目掛け、乱射した。



タタタタタタタタタ タタタタタタタタタ タタタタタタタタタ



パリーン ピシュ カンカンカン



メサイア「やべ」



バイヴス「わぁ」



ピキュン カンカンカンカンカンカン



テールランプは割れ、ボディーに銃弾がめり込む音 



ボディーが蜂の巣にされていく



メサイアは頭を屈めながら左右に車体を振り、回避を図るのだが…



タタタタタタタタタ



タタタタタタタタタタタタタタタタタタ タタタタタタタタタ



メサイア「おい!集中攻撃だぞこれ このままじゃ車がもたない このマズい状況早く何とかしろ」



御見内「分かってる 運転に集中してろ」



メサイア「出来るか…」



ピキュン ピン カンカンカンカンカンカン



御見内は3台のテクニカルへ視線を向けた。



あの前3台の武装車両は厄介だな…



このままじゃ 逃げ切れなくなる…



何とか撃破しなければ…



荒っぽいが…



やるしかない…



バイヴス「うう」



シートにうずくまり、銃撃の嵐を耐え忍ぶバイヴスに



御見内「解体人 半田さんを助手席に移す 敵の弾倉交換時に銃撃が一旦止む その隙に前に移すぞ」



タタタタタタタタタ



カンカンカン カンカンカン



バイヴス「う…うぅ は…はい」



メサイア「やべぇ どっからか煙りが上がってるぞ」



車体から煙りが上がりはじめた。



集中砲火の銃弾を浴び続ける事数秒後



弾切れを起こした奴等が弾倉を交換しはじめ、その隙をついた御見内が口にした。



御見内「いまだ」



それから御見内が後部席へと移り



バイヴスと共に怪我人を助手席へ移した。



メサイア「何する気だおまえ?」



御見内「解体人 右側の銃座にいるあのアサルトライフルを持ってる奴は分かるな? 他の奴はいい 右側のあいつだけをずっと撃て そのかわり奴には一切発砲させるな いいか? 出来るな?」



バイヴス「は…はい 分かりました…やってみます」



ガシャ ガシャン ガシャン



新しいマガジンが嵌め込まれ



固定台からボロボロになるSUVへ再び向けられるや



御見内「いまだ 撃て」



御見内、バイヴスがそのかけ声で一斉に身を乗り出し、発砲した。

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