第70話 火砲

土手道のような両側緩やかな傾斜となる坂



ちょっとしたこの丘の道を…



このスピードで斜面を下り運転を誤れば



車は横転する…



そしてひっくり返れば藪の中へと飲まれる…



意を決したメサイアがハンドルの握りを強めた



御見内、バイヴスが窓際上部に取り付くアシストグリップを握り、衝撃と揺れに備える



前方から数人の奴隷共が鈍器を振りかざし、走って向かって来るのが見え



メサイア「行くぞ しっかり掴まってろ」



そして 向かって来るそいつらギリギリでメサイアがハンドルを左へときり、進路を変えた。



ザザザザザ



斜めから進入したSUVが道を外れ、小坂を斜めに下って行く



ガタガタガタガタ



上下左右に車体が揺れ、右側のタイヤが少し浮遊した



このままじゃ横転する…



バイヴス「ヤバいっす このままじゃコケます」



メサイアはスピードを落とさずにハンドル捌きのみで車の進行を真っ直ぐ立て直しにはかる



後輪がスピンで土をえぐり、土面を滑らせた。



ザザザザザ



ドリフトのように遠心で土面を滑らせつつ、ハンドルで調整、進路を調整するメサイア



御見内「うまい イケるぞ」



そして空で遊ぶタイヤが着地



横転を免れた車体が安定された



よし… ゴ~



そしてそのまま坂を上がり



C字を描いたSUVが見事に本線へと戻った。



御見内「でかした やるなぁ」



メサイア「へっ まぁ俺の手にかかれば これしき朝グソ前だぜ」



1台のバンがSUVを追いかけ、坂を下ってきたが途中斜面でバランスを崩し、横転



2~3回転しながら藪の中へと突っ込んで行った。



その様子をミラー越しで目にしたメサイア



メサイア「ざまあ~ 下手くそめ」



御見内が後ろを振り返るや



バリケードで停車するトラックが急いで動き出し



そして追いかけてきた。



メサイア「はは やったな 振り切ったぞ」



御見内「いや 駄目だ まだ追って来る」



メサイア「何?まじかよ…」



メサイアは更にアクセルを強く踏み、加速させた。



現在135キロ



ハイスピードで車が進むにつれ道が土手道から路側帯、ガードレール有りのしっかりと舗装された道に変わった。



歩道を歩くハエのたかった腐乱ゾンビ



そいつが通り過ぎるSUVに両手を伸ばした。



またその数百メートル先では、襲われたであろう町民 その死肉を無心で食する感染者達が見られ、排気音に反応した奴等が一斉にこっちへ振り向く姿が見られた。



ランナー、ウォーカーが点々と徘徊する田舎町



それに加えてこの辺境の地では今…



怪しげな集団に命を狙われ、ネズミ捕りが行われている



御見内達を殺そうと待ち受ける奴等がそこら中にいる



それから血眼で追って来る奴等も後ろにいる…



SUVの後方から迫る車両は平ボディーの中型トラックを加えた5台



荷台にイかれた廃人共を満載に乗せ追って来てる。



御見内「廃病院まであとどれくらいだ?」



御見内が後部席から助手席へと移った。



メサイア「そうだな… このスピードならあと5~6分かな」



追っ手を少し突き放した距離



御見内「このまま逃げ切れればいいんだが…」



メサイア「なぁ ところでなんでサンクチュアリなんかに行くんだよ?目的地が違うだろ 敵の城にわざわざ何の用だ?」



御見内「その近くで仲間と待ち合わせてる その先に合流地点があるんだ」



メサイア「仲間?」



御見内「あぁ レジスタンスの人達だ トラップの森まで送ってくれて ずっとそこで待機してくれてる 俺を待っててくれてるんだよ」



メサイア「ちょっと待て おまえまさかあの森を抜けて病院に潜入したのか?」



御見内「あぁ そうだ」



メサイア「信じられん…おまえは信じられん事ばかりだな…よく無傷であの死のシャーウッドの森を通り抜けられたな」



御見内「数々のトラップに命からがらだったけど何とかな」



メサイア「違ぇ~よ まぁ…それも凄いけど よくあの明神さんのスコープの眼をかい潜れたなって言ってんだ 普通なら即見つかって狙撃されて はい サヨナラだぜ」



御見内「運が良かったのかもしれない とりあえずまたあの森に戻って合流地点に行かないといけないんだ」



メサイア「おい まさかのまさかだが… それ俺達も同行しろって言わないよな?」



御見内「当然同行だろ」



メサイア「嫌だね 罠だらけの森なんか入りたくねぇーし 狙撃されんのも御免だ」



御見内「なんだ…またわがままがはじまったのか ホントにいい加減にしろ」



メサイア「はぁ? それはこっちの… はぁ~ もういいわ このやり取り疲れた…それより今回こそはパスだ」



御見内「なんでだよ 俺の宣言通り地獄のコーキュートスからは無事に抜けれただろ おまえは死んでない なら次もちょちょいと頼むぜ」



メサイア「嫌だね もう懲り懲りだ 俺の中ではもう何回殺されてる事か おまえに付き合ってたら命がいくつあっても足りん」



御見内「だが 現におまえはちゃんと生きてる 俺はおまえを死なせないって言っただろ 無事に脱出も成功させたんだ だから次も…」



メサイア「おい これのどこが無事なんだバカヤロー なら後ろの追っ手は何だ? まだ振り切れてもいないのに無事とかぬかすな」



再びはじまった口論に眉をあげるバイヴスが何気なく後ろを確認した時だ



バイヴスの目が急激に見開かれた。



メサイア「つ~か 言わせておけばコノヤロー 俺のおかげ的な事言ってっけど むしろ俺のナイスなサポートとベストなフォローがあったからこそ あそこから無事に脱出出来たんだよ むしろ俺がいたからこそ無事に成功出来たんだぞ それをあたかも自分のお陰的に言うんじゃねえ」



横道から新たな平ボディーのトラックが現れ、右折してきた。



バイヴス「ちょ お2人さん…」



御見内「おぉ 調子出てきたな いいぞ それだよ 次もその調子で頼むぜ相棒」



メサイア「だから相棒とか言うんじゃねえ いつからおまえの相棒になったんだよ俺は? そんなつもりねぇーし この先おまえみたいな疫病神のバディーになる気もねぇ~」



前席で言い合いに夢中になる2人



バイヴス「あ…あ…」



バイヴスの目に



荷台に乗る奴隷の1人がある物を手にするのが見えた。



それは…



映画でゲリラ兵やら悪党やらがよく使用している…



あの…お馴染みの



バズーカ…



ロシア製の携帯式対戦車ロケット弾



それの最新型



RPGー7V3だ

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