第67話 群集

そぉーとドアを開けた途端、3人の目に飛び込んできたのは…



なんだこれ……



そこら中 祭りのごとく奴隷達で埋め尽くされている光景



100 いや200人以上はいる…



メサイアがたまらずに扉を閉めた。



メサイア「はぁはぁ 無理だ これは流石にノーだろ」



御見内「今更 引き返せない」



メサイア「いや これを突破するのはやっぱ無理だって」



御見内「行くしかない」



メサイア「死にたいのかよ?チラッと見えたがパーキングまで50メートル近くあったぞ」



すると…



ドンドン  ガン バンバン



再び扉を叩く音が聞こえてきた。



ギョっとさせたメサイアとバイヴスが振り向く



御見内「見ろ あの扉もじきに破られる…」



メサイア「だが…飛び出した途端に フルボッコの血祭りにあげられるぞ」



御見内「…」



メサイア「違うルートを探そう」



ドン バンバン バコン



御見内「いや そんな時間無い もう行くしかない……そうだ フードを深く被れ」



メサイア「あぁ?」



御見内「素顔を隠して奴等の群れに紛れ込む」



メサイア「馬鹿言うなって そんなのバレるに決まってんだろ」



御見内「奴等(奴隷)はこれさえ着てれば手を出してこない筈だ…敵だとバレてなければな…」



メサイア「バレてるに決まってんだろ 今さっき襲われたばかりだぞ」



御見内「だからフードを深く被って素顔を隠すんだ もう一か八かやるしかない やるぞ」



メサイア「なら解体人とこのおぶってる人はどうすんだ?」



すると



御見内が黒フードを脱ぎ、バイヴスへ



御見内「なら俺が半田さんをおぶる」



バイヴス「はあ はぁ え?」



ドンドンドンドン バンバン



御見内「渡せ」



バイヴス「はぁ はあはあ あ! はい」



半田が受け渡され、御見内が半田をおぶった。



そして その上から半田を隠すようにフードを着衣した。



メサイア「ハァ はあ 信じらんねぇ~ やっぱおまえはぶっ飛んでやがるよ」



御見内「距離をとって 仲間だと思われぬよう 別々に行動するんだ  解体人 しくじるなよ 場所は駐車場にあるSUVだ 分かったな?」



バイヴス「はぁ はっ はい 分かりました」



御見内「俺が先に行く 間を置いて距離を取りながらついてこい」



バレれば一環の終わり…



奴等の群集に紛れて移動する作戦を提案した御見内が扉を開いた。



御見内「じゃあ俺が先に行くぞ 10秒したら次に来い」



そして半田をおぶったまま御見内が一番手で外へと飛び出した。



自然な素振りで奴等の人混みの中へと紛れ込んでいく御見内



大丈夫だ… 自信を持て…



外さえ出れば…こいつら廃人に認識など出来る筈がない…



俺達が敵かどうかなんて…そんな区別…こいつらに出来る訳がない…



素顔さえ見られなければ…



敵陣の真っ只中に潜り込んだ御見内に緊迫が走るも



深々と被りしフードに身を隠し



焦らず 慌てず 御見内はゆっくりと奴等を掻き分け前進して行った。



通る度 奴等は覗き込んでくるが…



襲いかかっこない…



よし やはりバレてない…



そして5~6メートル程進めた時



御見内がチラリと後ろへ視線を向けるや



メサイアも扉から飛び出し、群集に消えて行く瞬間を目にした。



大丈夫だ… これなら必ず成功する…



そしてその10秒後に



バイヴスも外へと飛び出した。



3人はバラけ 群集の中へと消えて行った。



平然を装い



ガリガリに痩せ細るジャンキーのような若者達の中へ入り込んで行ったバイヴス



バイヴスが通る度 奴隷等の注目を一心に浴び、イカレた視線が突き刺さる



だが… 確かに奴等は見るだけでそれ以上何もしてこなかった…



御見内の言った通り奴等が襲いかかって来る事はなかった



ナタ、ハンマー、薙刀、鎌、鉄パイプなどなど



多種なる凶器を携えた、全裸姿の狂人達の波の中



今の所 溺れる事も無く 順調に歩を進めて行くバイヴス



一方 バイヴスの数メートル先を歩むメサイア



もう2人がどこにいるのか確認は出来ない



孤独と恐怖に襲われながらもメサイアも悠然を装い、堂々と進んで行った。



あいつの予想通りだ…



マジでこいつら襲いかかって来ない…



奇跡だぜ マジバレてない…



これならイケる…



脱出成功の兆しが見え 希望が見えてきたメサイアもまた自信を持ち



歩を進めていた その直後…



キィィィ



2台の大型バンが止まり、中からそれぞれ10名以上もの奴隷達が降りてきた。



そして また2台の乗用車が駐車場に到着、それぞれ5人の黒フード達が降りてきた。



次いで大型のトラックが3台到着



荷台に乗る大勢の奴隷達が降り立つ



それからも数台の車があとに続き



次々と奴等がやって来た



こいつらは皆サンクチュアリー(廃病院)から裏切り者探しにやってきた奴等だ



集結した奴等で辺りは一気に倍近くまで膨れあがり



なんだかよからぬ空気が流れはじめる



建物からも数人の黒フードが現れ、駐車場へと向かう姿を目にした御見内



その中にはロシア製PPー90サブマシンガンを携えた黒フードの姿も見られた。



あの入口で警備してた奴等だ



サブマシンガンの他



黒フード達には各自マカロフが握られ



奴等はいい具合に駐車場前で合流



御見内等の行く手を阻むかのように陣取られた…



それを目にした御見内が足を止めた



すると ある1人の黒フードが一歩前へ出てメガホンで喋りはじめた。



「ピーー おい チンカス共 ちゅーもーく 今から言う事を耳をかっぽじって聞けや」



メガホンから拡声された声が響き渡り、奴隷達が皆それに注目した。



メサイア、バイヴスも群集の中で足を止める



「さっきサンクチュアリーで仲間が殺された…それはある裏切り者によってだ…また 今さっき拷問部屋でも多数の仲間の死体が見つかった…ついにはあのマルオ様とマルモ様までも殺されていた」



うつむき、立ち止まる御見内の横でフルチンの奴隷が突如 小便を垂らし、前の奴隷にひっかける光景を横目で追った。



聞いているのかいないの…? そいつはぼぉーと死んだ目で小便をしながら黒フードに注視している



「…その裏切り者は2人だ どっちも黒の纏いをしてる つまり俺達と同じ格好で化けてやがる…」



まずいな…



フードの下で険しい表情に変わった御見内



「…今からその反逆者を探せ!あの建物にいるか…既に外に逃げたか…もしくはこの中にまだ潜んでいるか……テメェー達クソ野郎で徹底的に探し出せ そして見つけ次第…八つ裂きにしろ」

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