第41話 突発 

御見内「よっ」



落とし穴があるであろう予測された地面を軽快なジャンプで飛び越えて行った御見内



トラップもなんのその…



もはや臆する事もなく…



全神経が研ぎ澄まされた御見内の勘は冴え渡っていた



ことごとく仕掛けられたトラップを見破り



吊され、揺れる丸太や針の板、木に突き刺さる鋭利な刃物



御見内通過後に残されたそれらは



不様にも暴かれ、丸裸にされていた。



あれからおよそ1キロ程進入した所か…



現在 御見内は落とし穴の密集エリアへと足を踏み入れていた。



数多の秘密工作を駆け抜けて行くそのさなか



穴の中から…



「あ!はい 僕 もうそろそろアグレッシブな感じでおいとましますんでぇ ぇえ はい すいません」



ある喋り声が聞こえてきた



それはカラパイヤに引っかかった感染者の喋り声だ



「…はい はい… いや~~予定パッツパツなもんで~ いや~ 今週は懇親会やらオフ会もあるんでタイトなんですよね~」



穴に落ち、竹槍が全身に突き刺さりながらそいつはあがき、独り言を口走っている。



そして…



御見内が先へ進むにつれ



一体… また一体と…



「うぅぅぅぅう うぅぅうぅぅう」



深い穴に落ち、這い上がろうとあがいているゾンビの姿や



足に縄がかかり、逆さまで宙吊りになる感染者の姿



他にもネットに捕縛され、空中であがく数体の奴等が見え、首吊りにされる感染者なども見られた。



奥に進むにつれ、一体 また一体とトラップにひっかかるゾンビや感染者の姿が増えてきた。



「ちょっと聞いてくださいよ~ネックな話しですよ 同僚の藪川ぁ あのアナーキー野郎はネックにしましょ~ こここここだけの話しあいつ外回りの最中 サボタージュして風俗通ってるの知ってますかぁ? ほんまネックやわ~ 取引先との大事な商談もそれで遅刻してるですすすよ~ あんな奴もうネック(クビ)レスにしてしまいましょ~」



「最っ低~ Ne pout pas croire queje sois decu amoureux je fais un tel enchantement d’un homme  あ~ 私のアレクシス~ 見捨てないでぇ~~」



このトラップ群…



対人間というよりも…どちらかといえば…



こいつらの侵入を防ぐ目的の方がメインなのかもしれない…



そう考えながら罠に引っかかる間抜けなゾンビ等を横目に先へと進む御見内の足が急に止められた。



なんだ…? 何か聞こえた…



微か音…



それとよからぬ気配を感じとった御見内



フードを剥ぎ、周囲へと目を配った。



何かがやって来る… 奴等か…?



腕のバンドを外し、打根(紐付き小槍)が垂らさるや



その瞬間



ガサガサ ザザ ガサガサ



四方八方から枯れ葉を踏みしめる音が鳴った。



こっちへ向かって猛ダッシュする人らしき影が映った同時に



前後左右あっちこっちから囲むように敵の接近が確認されたのだ



「最近テレビの影響で週末DIYに凝っちゃってましてね~ 最近犬小屋をちょちょいのちょいで建造しました 次の1UPキノコ狙って 次はドバイの世界一高いなんちゃらタワー…」 



木々に身体をぶつけながらも突進するズタボロな容姿



「……ばりの高層ビル作るのに挑戦しようかと考えてます まぁ1ヶ月くらいかけて自分オンリーワンの僕自らの力と独学とノリや笑いやセンスと愛嬌のみで兼摂して建設してケンセツしてみようかと思ってます は~~いこれより建設的な意見をお待ちしております まぁ多分簡単に建てられますよ 犬小屋作る要領で一週間もあれば十分十分」



眼球をみだらに動かし、舌を垂れ出したおぞましき容姿



「おまえ等みんなこの真実を知ってる?昨日飲み屋の変なおっさんから聞いたんだけど なんでも今極秘プロジェクトで既に火星への移住計画が進められてて既に大気処理装置みたいなのも設置されてんだってさ 既に何百人、既に何千もの科学者やら兵隊さんやら農民やらが移住してるらしぃーんだけど…」



新鮮な肉の匂いに誘われ、群がろうとする感染者達



「…そこには土着の変なエイリアンが既にいるらしぃーくて その怪獣みたいなキメラみたいな奴にそいつに何百人も食い殺され、命を落としてるらしぃーです、結構な惨劇みたいですよ もう数年に渡り火星では密かに人対エイリアンの戦争が行われてる最中なんだってさぁ これマジもんのハリウッドですよ  ロマン飛行感じるっしょー 情報料で3万カツアゲされましたが安いくらいの情報内容です あ!ちなみにこれ零細企業の小さな会社に勤める胡散臭そうなリーマンブラサーズのおっさんが言ってた話しですが拙者は信じます まさにこれノンフィクな スターシップトゥルーパーズ劇場って感じすよ これを信じるか信じないか これを誠かはったりかでっちあげのホラ貝か気になる方は是非是非マーズにお越し頂くか胡散臭いサラリーマン金太郎でも探してじかに聞いてみて下さい」




活のいいランナー様御一行が御見内の前に現れた。



10体… いや…ざっと20体以上はいる…



集団だ…



「サイクリング サイクリング ヤッホー ヤッホー ひゃははははは」



御見内は小槍を掴み、溜め息混じりにゆっくりと息を吐いた。



「山田さんのニヒルな感じがたまらないのぉ~ 美味しく食べちゃいたい~ 」



ホッントいつもいつもこっちの都合なんてお構いなしに現れる迷惑な奴等…



もうゾンビ狩りは飽き飽きしてる…



まぁ 潜入前の準備運動がてら…



面倒臭ぇーからこの場でまとめて討ち滅ぼしてやるから…



来い…死人共…



多勢相手に臨戦態勢へと入った御見内



トラップ地獄のド真ん中で突発的に感染者とのバトルが始まる

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