第40話 陥穽 

ガザ パキッ パキ



小枝や枯れ葉を踏みしめる音



森の中を一歩一歩慎重に移動する御見内に朝日が差し込み、光で目を細めた。



夜が明けてしまった…



活動が始まる…



ゾンビも…



奴等(黒装束共)も…



御見内は周囲への警戒を怠らず、かつ慎重な足取りで、小走りに進めて行った。



奥に進めて行く事1キロ付近



御見内の耳に取り付けられた小型無線機に受信が入ってきた。



ポン吉「御見内さん 聞こえますか? 今何処らへんまで来ましたか?どうぞ」



ノイズも混じらぬポン吉の清涼な声音だ



御見内はすぐに立ち止まり、耳を軽く押さえながらその無線に応えた。



御見内「えぇ 聞こえます 今 1キロ来てるかどうかの所です」



ポン吉「良かった 早々にトラップにひっかかってたりしてるんじゃないかってついつい心配になってしまって…」



御見内「えぇ 今のところはまだ…」



前進を再開させ、御見内が一歩進めた時



その足がすぐに止められた。



御見内の視界に…



2~3メートル先で何かが光ったのが見えたのだ



なんだ…?



また微かに光った。



朝日に反射し、微かな光が空中にピカッと見えてきたのだ



御見内はその場でゆっくりとしゃがみ込み、目を凝らした。



ポン吉「御見内さん 言い忘れましたが 今後は音漏れを防ぐ為 基本こちらからの送信は控えますので 交信する際はくれぐれも周りに注意して下さい 安全確認してからお願いしますね」



一見見落としてしまいそうな程極細なワイヤーが張られているのが見えた。



しかもその先にも…



その先にも…



微かな反射光が映り



よく見るとそれが至る箇所に張り巡らせてあるのが分かった。



これが例の…トラップ…



早くもトラップ地帯に辿り着いた御見内が交信を図りながらゆっくりと立ち上がった。



御見内「えぇ 了解です とりあえず潜入に成功したらこちらから一報入れますんで しばし全神経を集中させます」



ポン吉「はい お願いします」



そしてゆっくり御見内が腰辺りに張られたワイヤーへと近づき、1本の小枝を拾い上げた。



どういったギミックだ…



それから御見内は大木の陰へと身を忍ばせ



そのワイヤーに小枝を投げ入れた



そして小枝が触れ、ワイヤーが振動した瞬間



シュシュ シュ シュ グサッ グサグサ



どこからともなく吐き出された物が周辺に突き刺された。



大木に3本



後方の木にも1本



鋭利な吹き矢らしき刃物が突き刺さっていた。



なるほど…



気づかねば自分が喰らっていただろうトラップの洗礼



確かにこいつは面倒臭そうだ…



御見内は歩を進め、今度は肩程の高さに張られたワイヤーに目を凝らした。



そして先程の要領で再び木の陰へと隠れ、小枝を放り込むや



枯れ葉が敷き詰められた地から突然尖った竹槍や刃物が突き出して来た。



もし足を踏み入れ、引っかかればこれまた回避不能な串刺し状態に陥っていた事だろう…



思わずゾッとする細工が仕掛けられていた。



御見内は細心の注意で辺りへ目を配りながら周り込み、その罠を回避、先へと進んで行く



よーく見ると落ち葉でカモフラージュされたトラバサミがそこら中に配置され、潜んでいるのが見えた。



何が飛び出してくるのか…?



どんな罠が仕掛けられているのか…?



カラクリも分からぬ



その先の恐怖や不安で



一歩一歩足を踏み入れるのも心理的にダメージを与え、躊躇を促す、これこそがトラップ効果だと言えよう…………



…………………………………………



ある片隅の記憶



…………「…ブービートラップのブービーってどうゆう意味だか分かります?」



軍事関連の教科書を読書し罠の項目ページをめくる純や



ハサウェイ「ブービー?さぁ ゴルフのブービー賞とかのあのブービーか?」



純や「そうっすかね…?多分… 間抜けって意味らしいですよ ベトナム戦争時にジャングルに仕掛けられた罠が特に有名みたいです 米兵が相当苦しめられたって書いてあります へぇー ふむふむ」



ページがめくられ



純や「お笑いのコントみたいにタライの代わりに丸太…しかも釘つきのとか… あと振り子のように丸太 ちなみにこれも釘やら刃物付きとか… ワイヤーに足が引っかかったらそんなのがいきなり飛んで来るんですって ヤバいくないですか? この写真見て下さいよ こんなの受けたらたまんないっすわ」



ハサウェイ「へ~ 確実に直撃したら死ぬなこれ あとどんなのあるの?」



純や「おっ 食いつきましたね 他には落とし穴系でカラパイヤって言う落とし穴があったり、ワイヤー式の手榴弾トラップがあったり、あとは…ネズミ捕りとかトラバサミ、ダミー式のダブルトラップなんてのもありますね… よく考えつく事 トラップも沢山あるんですね 結構詳しく解説されてます」



ハサウェイ「ちっと貸せ」



純やから取り上げ、教科書に目が通された。



純や「あ! ちょっと~ まだ読んでる途中なんすけど…」



ハサウェイ「ふむふむ… へぇ~~」………



………………………………



前進するや



木々の合間に張られたある1本のワイヤーに目を止めた。



御見内が上を見上げると不自然に吊された丸太が見られる。



誰もがトラップだと思えるようなトラップ



こうも分かり易い見え見えなトラップを発見した。



誰しもワイヤーに触れぬよう跨ぐか、この場を周り込み回避しようとする事だろう…



だが… 御見内は再度小枝を拾い、木の陰へと身を隠した。



分かり易過ぎる…



恐らくこのワイヤーと丸太はブラフのダミー…



確かめる…



すぐに違和感を感じた御見内は確かめるべくその小枝を放り投げた。



案の定 小枝がワイヤーに触れても丸太は落ちてこなかった。



やっぱり…



これはダブルトラップ…



ワイヤーを跨ごうと踏み入れた途端に…



落とし穴が待ち受けているのだろう…



ならサイドは…



御見内が、今度はある倒れ木の腐った塊を拾い上げた。



そこそこ重量のある腐り木の塊



何か仕掛けが施してある筈…



確かめるべく御見内はその塊をおもむろにブン投げた。



すると



ある地面に落下した途端



ジャキーーン



枯れ葉から飛び出してきたのは



そこらにあるトラバサミとは全くサイズが違うデカいやつ



まるでホオジロザメの口の様に巨大なトラバサミが飛び出してきた…



挟まれれば致命傷もの…



御見内の勘がまさった



しかし…あれからまだ50メートルしか進んでいない



廃病院までの距離3キロ



手に汗握るトラップ地獄が御見内を待ち伏せる

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