第31話 伏撃

ヤバい… ヤバい…



戸を開け、テラスへと飛び出したエレナ



冴子「あらら 逃げちゃう逃げちゃう ユキオちゃん 早く追って 殺害なさい」



ユキオ「シュコー シュー 降心した シュー」



ガスマスク野郎が背中に装備された大鎌を手に取った。



黒装束にデスサイズ(死に神の持つ大鎌)



正に死神そのままのコスチュームに身を包み、ガスマスクを装着した男、ユキオがエレナ殺害の指示を受け、追走しはじめた。



冴子「さぁ あなた達もそこで何のんびりしちゃってるの 早くあの女を追いなさい 取り逃がしたらぁ~ 罰として人形送りだからね めっちゃ気合い入れて仕留めて来なさいねぇ」



「は…はい おい 行くぞ」



他3人の黒フードも各自武器を手に取り、豪邸から飛び出して行った。



また同時に和室から手負いの男、あの万頭が姿を現した。



冴子「あら 万様 行方知れずと思いきや 一体今まで何処にいらしたの?」



万頭「熊は何処行った?」



冴子「逃げてったわよ あら…ご存知なの?まさか怖くて隠れてたのかしら?」



万頭「……それよりもさっきメスの鼠が入り込んでいた」



冴子「えぇ…知ってるわよ レジスタンスの新入りメスネズミでしょ 今さっきそっから逃げてったわ ユキオ達がそれを追ってる… あら それもご存知ですの? あなたは今まで何をしていたのよ?寝てたのかしら…」



万頭「うるさいぞ アバズレ 頭吹き飛ばされたいのか」



冴子「ヒヒヒ あ~ 怖」



万頭「…あの死神気取りなノールスの青瓢箪(あおびょうたん) 俺の獲物を勝手に横取りするな」



そしてボウイナイフを握り締め、エレナを追う万頭に山吹がある言葉をかけた。



山吹「万頭 爆殺はするなよ 殺るならそのナイフで切り刻み、血祭りにあげろ 私のもとにあの女の生首を持ってくるんだ 分かったな?」



万頭「…」



万頭は無言で軽く頷きエレナを追いかけた。



ユキオ、万頭がエレナ殺害指令を受け、襲いかかる…



ーーーーーーーーーーーーーーーー



エレナ「フッ はっ は」



ヘリポートのアスファルトを靴音をたて激走するエレナが後ろを振り返るや、邸宅から出てきた数名の人影を目にした。



流石に見逃してはくれなそうね…



追っ手の数は不明だが…



1人2人でない事は砂利を踏む足音から推測できた



ライトの光も見え



複数の追っ手がやって来る…



エレナは来た道を戻り、森の中へと消えて行った。



このまま車まで逃げ切れるかな…?



もし追いつかれれば、車に残る3人が危ない目にあってしまう…



逃げ切れるか…?



逃げる…?



いや… ちょっと待てよ…どっちみちもうバレてるなら… 逃げる必要なんかないか…



もう構わないか…



殺っちゃっても…



トミーガンを見ながらふとそう気づいたエレナが足を止めた。



ここは豊かな森の中…



奴等もきっとこの一本の悪路を通って、やって来るに違いない…



なら… もう遠慮はいらない…



このエレナ様を狩ろうなどとは不可説不可説転早い話しよ…



いっそこの森の中で奴等を減らす…



奴等をここで迎え撃つ…



エレナはトンプソンの銃口を上に向け、こっちよと知らせんばかりに、1発の弾丸を発射させた。



タァーーーーーン



エレナが闇夜の森に紛れ、ゲリラ作戦を決起した。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



3つのマグライトの光が地面を照らし



3人の黒フード達の足音が鳴り響いてきた。



「何処行った あの女は?」



その数秒後に…



タァァーーーーーン



夜を籠む森林に1発の銃声が轟いてきた。



「銃声?… こっちだ」



「もう ユキオさん交戦してるのか…?早ぇーな 俺等も行くぞ」



1人は西洋の鉾槍ハルバードを手にし、1人は棍棒に棘鉄球が鎖で繋がれたフレイル型の武器、モーニングスターを所持、もう1人はマチェットナイフを携帯している。



一寸先も闇に包まれた森の中を3人は小走りで突き進んで行った。



「はぁ はっ は なぁ……さっきの代表のあれって…本当に本物なのか? はっ はっ 全く身体が動かせなくなったんだけど…」



「フッ はっ はっ あぁ~ さっきの金縛りだろ はっ はっ 俺も初体験だよ 本物かどうかは知らないがあれは相当ヤバいやつだな」



「はぁ はっ おまえ達声でかいぞ…静かにしろ…逃げられたらどうすんだ…しくれば俺達人形にされちまうんだからな はっ は」



「はっ は 嫌だ あれだけは勘弁でしょ… あれならまだ普通に死んだ方がましだ」



「はっ は はっ 俺も…ああなるぐらいなら 死んでゾンビになった方がましだよ」



「はっ は ならくっちゃべってないで逃亡者の首を穫る事だけに集中しろ… はっ 手土産に首持ってって代表に認めて貰うぞ 俺がこいつで…」



走りながらマチェットナイフを2人に見せ



「…女の首を切りとるからおまえ等2人はサポートし…」



その瞬間



パァーン



ノズルから火花が散り、銃声と共に



一筋の螺旋した高速弾丸が男の眉間を捉えた。



大袈裟にもスリップした黒フードの体躯が乱れ、倒れ込んだ。



マチェットナイフが手からこぼれ



眉間から血を流す黒フードが目を開けたまま射殺され、即死していた。



「はっ はぁ? なんだ? 何が起きた?おい 今の銃声…」



「はっ おい…サンチェが撃たれた… おい…死んでるぞ…」



すると また



パァーン



マグライトが転がり



こめかみに被弾、崩れ落ちた2人目も死体へと変わった。



モーニングスターを手にした男はすぐにマグライトを消し、木の陰へと身を隠した。



「フフ」



ようこそエレナ様の狩り場へ… 



中腰で落とした膝射態勢、エレナがアンブッシュ(待ち伏せ)で黒フード達を待ち受けていた。



2人仕留めた手応えを感じたエレナ



まずは2人…



そしてすぐにその場から移動をはじめ、闇夜に溶け込んで行く



あのアマ…



不用意に突っ込めば…また銃撃の餌食に…



電灯の明かりなど点ければ恰好の標的にされちまう…



木の陰に隠れる黒フードがマグライトを捨て、モーニングスターを両手で握り締めた。



足音をたてず、気配を殺し、直進して行く



この鉄球で頭を潰してやる…



まだ慣れぬ目で月夜も差し込まない、1メートル先も視界不可な暗闇の中を殺気を放ち、忍び寄る黒フード



音、銃口の発火からして近い…



そして黒フードは足を止め、耳を澄ました。



そのさなかに…



ピチャ



4~5メートル先だろう…すぐそこで微かな水溜まりを踏む音が聞こえて来た。



いる… 間違いなく女はすぐそこに…いる



目を光らせた黒フードがいつでも繰り出し可能な構えでモーニングスターを握り、気づかれぬ様に近づいて行った。



同士のかたき… 手柄…



俺が女の潰れた頭を手土産に持ち帰る…



そして慣れてきた黒フードの夜目にぼんやりと人型のシルエットが映し出されてきた。



いた…



はっはぁー 馬鹿じゃん… それでテメェー隠れてるつもりか…



潰れちまえよ…



ためらいなく棘鉄球がそのシルエットに振り下ろされた。



ボキッ  バシャー



しかし



水溜まりの滴が勢いよく跳ねただけ、手応え無く鉄球がスカされた。



はっ……?



折れた枝、それに掛けられた衣服が水溜まりの上に落ち



黒フードが水溜まりからその濡れた衣服を拾い上げた。



あのアマ…



子供騙しのギミックのつもりか… ナメたバイシャが…



黒フードがその掴んだ衣服を握り潰した。



次の瞬間



後頭部に銃口が押しつけられ



囁かれた。



エレナ「ざーんねん こんな幼稚な罠にひっかかるあんたが悪いのよ …ではっ お疲れしたぁー」



パアーーーー



バシャーン



3人目…

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