第27話 隠家
デンジャラスゾーンからの脱出に成功したエレナ達一行は目的無き走行でひたすら車を走らせていた。
しばしの沈黙が車内に続き
ハンドルを握る七海、助手席へ座る早織、後部席に座るエレナと美菜萌
楽しい思い出の筈がいきなりの襲撃を受け
命の危険に晒された誰しもが言葉を噤み、今は黙り込んでいる。
郊外を抜け、自然溢れる山々な帰路を進むライトバンが山道へと入った。
エレナは車内から夜景を眺める訳でも無くただ茫然と窓に映る自分を見詰め、ただ真っ暗闇の生え揃う木々を見詰めていた。
あの黒フードが口走った言葉が気にかかりながら…
あんな凶暴で巨体の実験体が廃棄処理されるランクD…の欠陥品…
しかも人形はランクづけされている…
あれがDならば…
その上のCもBも…Aも存在するという事
それに あと何体あるのか…?
何人が犠牲に…何人を材料にしたというのか…?
しかもあの口ぶりからして…
これは私の推測になっちゃうけど…
恐らく奴等に明白な主義主張などない…
これは単なる支配と遊興の為…
そんなくだらない事で罪なき尊い命が…消されている
早く何とかしないと…
いてもたってもいられぬ衝動を必死に堪え、エレナは唇を強く噛み締めた。
来た道を戻るバンが右へ左へと迂曲、つづら折れの蛇行やヘアピンコーナーを抜け、ハンドルを握る七海がある物を目にし、車内の沈黙を破った。
七海「ねえねえ 2人共 見てあれ」
前方 道の真ん中にはバーストしたあのバンが放置されていた。
行きにカーチェイスで襲ってきた奴等の車の残骸だ
そういえば…
エレナ「七海さん あの車が最初に止まってた場所あったじゃないですか そこに車を止めてくれませんか」
七海「え? 峠よね う…うん 分かった」
美菜萌「どうしたんですか?」
エレナ「あいつらが…あそこで一体何をしてたのか調べたい」
美菜萌「なるほど…あの峠に何か手がかりがあるかもしれませんね」
七海「ねえ 止まるのはいいけど もうさっきみたいな化け物とか出てこないよね?」
エレナ「えぇ 断言は出来ませんけど」
七海「う~ 思い出して鳥肌たってきた あんなの初めてみたよ…う~なんだか夢に出てきそう」
美菜萌「あの男の証言が事実なら…あの巨体と怪力で欠陥品なんですよね…ならBやCなんてどうなっちゃうんでしょうかね?」
エレナ「想像したくもないけど…かなりの厄介事になりそう…」
美菜萌「はい… かなり」
七海「あ 例の場所に着いたよ 車止めるね」
峠に着いたライトバンが側道へと停車された。
エレナ「あれ おとなしいね 早織ちゃんは?」
七海「しぃ~ クリスと既に夢の中だよ」
美菜萌「どおりで静かな訳ですね」
クリスを膝に抱えスヤスヤ眠る早織を目にし
エレナ「早織ちゃんを1人置いて行く訳には行かないし、私1人で見てきますんで 2人はここで待機してて下さい」
美菜萌「私も行きます」
エレナ「万が一 また襲われた時2人を守る人がいないと駄目じゃない それに何も無ければすぐに戻ってくるし それにそんなキャミ一枚でこんな寒空に出ちゃ風邪ひいちゃうから… ホントただ軽く辺りを見てくるだけだから美菜萌さんは2人といて」
美菜萌「あ… はい 分かりました じゃあこれバンにあったんで使って下さい」
車内にあった懐中電灯をエレナに手渡した。
ガチャ
そして車を降りたエレナが早速辺りをライトで照らし、捜索にあたった
そのライトに照らされた先には7~8段程の階段が映り、どうやらその先は小さな展望地スペースになってるようだ
エレナは階段を上がり、そこに歩を進めていった。
エレナ「うわぁ~ 何これ…キレイ」
思わず声をあげたエレナ
公衆トイレ、雨除けの屋根にはベンチがいくつも完備され、ネオンの少ない山岳の夜空には都市では見られない満点の星が夜空に散りばめられ、流れ星がいくつも見られた。
恐らくここは昼間に来れば絶景スポット
夜間に来れば絶好の夜景スポットになってるのだろう…
一瞬うっとりと夜空に見とれてしまったエレナはすぐに辺りを捜索しはじめた。
ここで何をしていたの…?
まさか男だけでロマンチックな天体観測とか気持ち悪い事してた訳じゃないわよね…
ここには何かある筈…
隈無く捜索しているや
ん?あれは…
先に続く下り坂がライト光に照らされ、エレナの目に映った。
道がある…
エレナは迷う事無く先へと進んだ
多少は手摺の柵で舗装された急勾配な坂道を下って行くエレナ
どこに続いているの…?
坂道が平坦へとかわりこれより先 関係者以外の立ち入り禁止の立て看板
またこの先熊が頻繁に現れます これより先は大変危険な為一般の進入を禁止します
などと書かれた看板が置かれていた。
道はこの先山奥まで続いている。
エレナはためらう事無く進んだ
こっから先は一切舗装されぬ草が生えた悪路 照らされたライトに真新しい足跡が映された。
何年も使われてないような道に人の通った痕跡…
やはりこの先には何かがあるとエレナはふんだ
冷え込んで来た不気味に静寂する真っ暗な山奥へと進んで行くエレナはいつでも発射出来るようトミーガンを身構え
ライトの光を頼りに一歩一歩奥へと進んで行った。
こんな山奥に一体何があるのだろうか…
ガサガサと枯れた草木を掻き分け、直進
100メートル程進むと
ホーホーホー ホーホーホー
野生のフクロウの鳴き声が聞こえてきた。
更に山奥へと進んで行き
300メートル程進んだ時だ
森林が嘘のように山奥にポッカリと開拓された土地が現れ、エレナはひらけた空間に飛び出した。
何ここ…?
恐る恐る歩を進め、辺りを観察するエレナ
個人的な敷地のように思われるこの土地
コンクリで舗装されたヘリポートのスペースが見られ
また数台は可能な駐車場も見られた。
こんな山奥にどこぞの金持ちの別荘を思わせる広大な土地
その駐車スペースには2~3台の高級外車が止められていた。
そして その先には…
何これ…
エレナの目に…
こんな場所に…こんな大きな建物…
山奥に佇む一軒の豪邸がエレナの目に飛び込んで来た。
豪邸には明かりが灯っている。
つまり人がいる…
エレナがその豪邸へと近付こうとするや
夜空から1つのプロペラ音が聞こえて来た。
エレナは懐中電灯を消し、咄嗟に木の陰に隠れる。
そして木陰からジッとその様子を観察するや
バタバタバタバタバタ
プロペラ音がどんどん近づき
樹木の葉や枝を激しく揺らし
上空から1機のヘリコプターが現れた。
サーチライトが地上を照らし、そのままヘリポートへと降下
着陸するやスライドドアが開かれ
そこから赤いフード服を纏った男
次いで白衣姿の女
その後3~4人の黒の衣を纏った男達がヘリから現れ、豪邸へと入っていった。
エレナが目にしたあの赤いフード服姿の男…
さっきの赤いフード男…
もしや… あれがサイコな集団のかしらか…?
っとなれば…ここは 奴の隠れ家…?
再び飛び去って行くヘリ
エレナが木陰から飛び出し、豪邸を見上げた。
願ってもない 敵の頭…
見つけたわ…
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