第5話 逐電
確かにこのままじゃマズい…
敵の数が多く 弾数が足りな過ぎる…
御見内が窓を指差した。
御見内「エレナ 外にいる奴を無力化出来るか? こっから出よう」
エレナ「え?こっから…?」
そして うずくまる町民、起き上がろとする町民、階段を上がって来ようとする町民を前に御見内がまたも突っ込んだ
正面にいる町民に前蹴りを浴びせた。
そいつは階段を登って来る町民に接触、巻き込みながら勢い良く転げ落ちる。
次いで隣りに位置する起き上がった町民がフォークで突いてきた。
御見内は速いフットワークでそれを回避、かわしつつ左の裏拳を顔面にブチ込み、膝裏を刈り込んだ
町民はバランスを崩し、体躯が屈折
それから肩を掴み取り、クルッと身体を反転させると同時に背中に蹴りが打ち込まれた
町民は階段から飛び込み転げ落ちて行った。
またその隣で悶絶しながら膝を付ける町民が顔を上げた瞬間
御見内の繰り出したつま先蹴りが顎を跳ね上げ
町民はそのままでんぐり返し
手から離れたグラインダーと共に階段をゴロゴロと転げ落ちて行った。
御見内が体術で1人1人階段から突き落として行く中
そんな時間稼ぎをする中、エレナが窓からハンドガンを構え見下ろした
するとこっちを見上げる町民と眼が合い
町民が何やら投げつけようとしていた。
それはブーメランの様なV字の鉄物で
それをオーバースローで投げつけて来た。
ブンブンブン
ガチ 咄嗟に頭を引き、それは窓の縁に当たって落下
他にもエレナに向け構えられていた。
それはY字の桿に張られたゴム
スリングショット(通称パチンコ)
他にも短い槍の様な尖物のケツに紐が結ばれた投擲物…
投げ槍の打根と呼ばれる武器が構えられエレナに向け投擲してきた。
どちらも当たり所が悪ければ致命を負う飛び道具だ
エレナはそれを見るなり早織と共に身を屈めた
バリーン ガシャー
パチンコ球が窓ガラスを割り、投槍は的外れに壁に当たって落ちていく
エレナはすぐに立ち上がり、反撃、窓からハンドガンを構えながら身を乗り出し打根野郎とパチンコ野郎に向けて発砲をおこなった。
パァン パン
排莢口から空薬莢を吐き出すと同時に肩を撃ち抜かれたパチ野郎と打根野郎はうずくまる
エレナは一旦身を引き、すぐにまた乗り出すや他のターゲットに向けて発砲をおこなった。
パァン パン パン パン
真上から発砲された弾丸がブーメラン野郎を含め残り4人の肩を見事に捕らえ、うずくまる町民達
瞬く間に裏口の町民達を制圧
一時的に無力化した。
エレナ「道 やったよ でも…」
左の肘打ちを顔面に当て、右の掌底でおでこを押し当て、町民を階段から突き落す御見内
御見内は素早く後退させ、窓から外の様子をうかがった。
御見内「オッケー よし こっから出るぞ」
エレナ「無理だよ 私達だけならともかく早織ちゃんとクリスだっているんだよ」
御見内「やるしかない 俺が先に下りて早織ちゃんとクリスをキャッチする その間はおまえが時間を稼げ」
自らのハンドガンをエレナに手渡し、2階から飛び降りた御見内
エレナ「も~」
着地した御見内を見下ろし、すぐに時間稼ぎの迎撃に転じるエレナ
また着地した御見内はうずくまる町民等に留めのパンチを喰らわせていく
御見内「早織ちゃん まずは君からだ ちゃんと兄ちゃんが受け止めるからそっからジャンプするんだ」
窓から覗かせる早織に御見内が叫んだ
だが
2階の高さ
流石に早織は怖じ気づく
パァン パン
迎撃しながらエレナも口にした。
エレナ「早織ちゃん 怖いのはよく分かるけど 下のお兄さんを信用して 目瞑って飛び降りるのよ」
早織「こ…怖い…」
御見内「早織ちゃん 大丈夫 ちゃんとお兄ちゃんが受け止めるから ジャンプだ」
早織「ぅぅ…う…」
やはり怖くて躊躇する早織に
パアン パァン
エレナ「早織ちゃん この変なオジサン達に捕まったらもっと怖い目にあうんだよ 目瞑って 勇気を出して さぁ飛んで」
御見内「そうだ 絶対受け止めるから 来い!早織ちゃん」
御見内が周りを警戒しながら両手を広げた。
早織はビクビクしながら縁に足を掛け飛び降り態勢になるも、中々踏み出せない
御見内「来い!」
両手を広げ、受け止め態勢の御見内を見下ろす早織が両目を瞑った時だ
ドン
いきなり勢いよく背中が押され、早織がダイヴ
エレナが早織を突き飛ばしていた。
そして落下する早織をしっかりと受け止めた御見内
御見内「よし エレナ 次はクリスだ」
パン パン
片手で銃を向けたまま無事着地した早織を確認、エレナは次にクリスを抱え上げた。
エレナ「行くよ いい?」
御見内「カモン いいぞ」
エレナ「絶対キャッチしてよ」
御見内「大丈夫だ 信じろ」
エレナが愛犬クリスを窓から放った。
御見内はこれまた見事にキャッチ
御見内、早織、クリスがエレナを見上げた。
御見内「よし ラストはおまえだ 早く飛べ」
エレナ「分かった」
そう言ってエレナも縁に足を乗せ、飛び降りようとした時だ
隙を見せた瞬間
階段を駆け上がり、猛突進してくる気配を感じたエレナが振り返るや斧を振りあげる狂った表相の男を目にした。
エレナはそのまま飛び降りた。
ブン
空振る斧がエレナの頭上スレスレで空を裂き、間一髪逃れたエレナが落下する
そして勢い余った男も前回りで窓から身を投じた。
エレナは着地後すかさず回避
ドスン
直後に町民が背中から落ちてきた。
打ち所が悪かったのか?ピクリともせず後頭部から血を流す
御見内は男の手首に巻かれた紐をほどき、自らの腕に結んだ
打根なる武器を奪い取る
またエレナは倒れた男の側に転がるゴルフのアイアンクラブを拾い、それを早織に手渡した。
エレナ「早織ちゃん 念の為にこれ持ってて もし悪い大人の男の人が近寄ってきたらチンチンをこれでバチコンと当てるのよ」
クラブの球当て部を指差し早織に説明する
早織「うん…」
御見内「2人共 ちょっとここで待ってろ」
すると御見内はエレナ等をその場に待機させ裏口から表の様子をうかがった。
そろりと物陰からチラ見するや、自分等のバンの周りを取り囲む10数名の人集りを目にした。
今… 奪還するのは厳しいか…
貴重な物資や食料を積んだ大事な車を前に…
今は諦めざるをえない状況…
キィィィー
そんな様子見する御見内の前に新たにやってきたライトバン、それから乗用車などが数台やって来て、御見内の車の周りに停車される
そして中から14~5名程の新手が続々と降りて来た。
チッ 増援かよ…
その中に紛れる黒いフード姿の男もう1人現れた。
黒装束を纏う怪しい奴…
御見内「…」
総勢 ざっと30人以上は膨らみ
2人の黒フードに着目した御見内
あの黒フードがこの人達を従え、命令を下している…
ろくでもない奴等って事だけはハッキリしてるが…
やはりこいつら… 気になるな…
御見内が険しい目つきでその様子を伺っているや
「☆※ε√_⊗ε!!_」
1人の町民が大声を張り上げ、ある方向を指さした。
その先に
民家の個人畑の土を踏みしめるスローリーな足取り
「うぅぅうううう」
また木々の生い茂る先から次々に現れた動く骸の集団だ
また別の町民が大声で叫ぶや
道路の先から猛ダッシュで迫って来る人の姿
ランナーだ
4つ巴エントリーNo2
ゾンビ様御一行の登場
ゾンビ襲来で騒然となる
「中にいる電動農工具達を呼び戻せテメェー等ゾンビ共を返り討ちにしろ 行けぇ」
チッ… やはりおでましになったか…
賑わいにいざなわれ、うようよ姿を見せたゾンビ共、混戦必至な状況に御見内は舌打ちした時だ
2階の窓際で発狂した叫び声があがり
2階の窓口からこちらを見下ろし、指差す町民を目にした。
ヤバい…
御見内はすぐに戻り
御見内「奴等までやってきた 逃げるぞ」
エレナ「やっぱゾンビも来ちゃったか」
御見内「あぁ とにかくここは危険だ 退散する」
御見内がボロボロになる簡易な針金フェンスを跨いだ。
エレナ「え? でも車は?」
御見内「後で取りに戻ろう ひとまず追っ手が来る前に離れる もうここには居れない」
エレナ「まじっすか…」
エレナもフェンスを跨ぎ、クリスを持ち上げ
御見内もフェンス越しで早織を持ち上げた。
御見内「このままこの林を抜ける」
エレナ「ちょっと待ってこの先ってもう森だし崖とかじゃないよね?」
御見内「分からん…」
早織「私分かるよ… いい隠れ場所あるからお姉さん達着いて来て」
エレナ「ほんと?」
御見内「そりゃあ ありがたい」
そして3人と1匹は林の中へと逐電した。
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